序文（第2版）

医療の進展とともに，われわれ医療者が日々直面する課題も多様化し，検査・診断法の進歩も目覚ましいものがあります．しかし，そうした中でも呼吸ケアや呼吸リハビリテーションに関するフィジカルアセスメントの重要性はこれまで以上に増していると考えます．本書「フィジカルアセスメント徹底ガイド 呼吸」は初版から数多くの医療者に利用され，呼吸ケアや呼吸リハビリテーションの現場において一助となったことは私ども筆者にとって非常に嬉しい限りです．

今回，第2版を発行する運びとなりましたが，本書は初版の基本的な構成を踏襲しつつも，現代の呼吸のフィジカルアセスメントの最新の状況やニーズに応えるべく，一部を改訂・追加しました．初版では，医師，看護師，療法士といった異なる職種の医療者が，呼吸ケアや呼吸リハビリテーションの現場でのフィジカルアセスメントにおいて共通の理解を深め，スキルを向上させることを目指して構成しました．第2版では，初版でのフィードバックに基づき，さらに分かりやすさと実用性に重点を置いています．例えば，呼吸困難に関する問診に加えて，代表的な疾患に焦点を当てた問診のポイントなども追加し，より実践的なアプローチを提供しています．

本書は，呼吸ケアや呼吸リハビリテーションに携わる医療者が日常業務において直面する課題に対処し，患者への最適なケアを提供するための手段となることを目指しています．それを実現するために，フィジカルアセスメントの基本的な理論から具体的な技術までを包括的に網羅するようにしました．視診・触診・打診・聴診などの基本的な技術に加えて，最新の検査法や診断法を取り入れ，病態の総合的な理解を深めることができます．

現場での実践において，思いがけない状況に遭遇することは避けられません．しかし，本書を通じて身につけた知識とスキルを活かし，的確な判断と適切なアクションを起こすことで，患者へのケアの質を向上させることができると考えます．医師，看護師，療法士など，異なる職種の医療者が連携し合い，より効果的なチームケアが実現できることを期待しています．また，本書は教育現場での活用においても有益であると自負しております．

第2版の完成にあたり，初版同様，多大な協力をいただいた中山書店の佐藤武子氏に深く感謝いたします．読者の皆様にとって，本書が日常の臨床実践において有益な情報源となり，呼吸ケアや呼吸リハビリテーションの向上に寄与できることを心より願っております．

2023年12月

高橋仁美
佐藤一洋