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- 病態がみえる 検査値の本当の読み方
商品情報
内容
血液・尿検査の結果,使いこなせていますか?検査値の変動は何を意味するか,症例の経過を全身状態や細菌感染など7つの視点から順番にみていくことで,病態を見落としなくとらえ,診断・治療に活かす方法を教えます
序文
監修の序
血算・生化学検査を正確に読みたいと思っている皆さまへ
世界中で最も頻繁に行われている臨床検査は血算・生化学検査です.そして,それらは臨床で最も活用されていない検査でもあります.血算・生化学検査には,知れば知るほど多くの患者情報が詰め込まれていますが,ほんの一部しか利用されていません.結果として,臨床検査部は大量の無駄な検査を行っていることになります.検査部の願いは,自分たちが行った精度管理の行き届いた検査値を極限まで活用してもらいたいことに尽きます.信州大学では,血算,生化学,凝固・線溶,尿・糞便検査に加えて動脈血ガス分析の5つの検査をルーチン検査と呼んでいます.複数のルーチン検査項目を組み合わせ,時系列で読むことにより患者情報を最大限に引き出せると考え,信州大学方式の検査値の読み方を考案しました.信州大学方式では,13 の病態を複数の検査項目で1 病態ずつ探っていきます.いつも同じ順序で読んでいきますので,陰性データも重要な所見で見落としもなくなります.13 病態が明らかになると,おのずと患者の全体像が明らかになります.バイタルサインを確認してから頭の先から四肢の先まで決まった順序で行う診察に似ています.そこで,信州大学では「患者を診察するようにルーチン検査を読もう」と教育しています.軽度の肝細胞傷害や尿蛋白などはいくら診察してもわからないので,ルーチン検査の病態を判断する精度,利用価値は診察を超えていると思っています.
診察とルーチン検査を十分に使いこなせるようになると,病態解明の正確性は2 倍どころか何倍にもなります.特に,診察とルーチン検査の見立てが一致したときは,自信をもって判断できます.総合診療のトレーニングは病歴と診察のみで行われることが多いですが,ルーチン検査でわかる病態を加味して検討すればよいのにと思うことがよくあります.総合診療において臨床検査が重視されないのは,臨床検査を診断のためにのみ利用すると思われているからです.臨床検査には,診断する検査と病態を探る検査(=ルーチン検査)の2 種類の検査があると理解できれば,総合診療においてもルーチン検査の必要性が明らかになると思います.
編集を担当した信州大学の松本剛先生は,学生の頃から信州大学方式のルーチン検査の読み方にどっぷりと浸かり,臨床検査専門医,救急専門医のライセンスを取得した先生です.本書は,信州大学方式を少し簡潔にした形で13 病態を7 つの項目にまとめ検査値を解説しています.検査値を読む楽しみ,奥深さを経験していただければと思います.
2024年2月
長野県立病院機構理事長,信州大学名誉教授
本田孝行
編集の序
本書は検査値,特にルーチン検査の見方を変えるための本です.臨床検査は診療において日常的に行われていますが,その検査結果を十分に活用できている医療者は少ないと思います.ルーチン検査を日常診療に活かせるようになるためには,いくつかのステップが必要です.まずはじめに,ルーチン検査は病態を把握するための検査であるという認識をもつことです.次に基本的なルーチン検査の項目の変動の要因を理解し,そのうえで実際の患者データを読み,病態を考えることをくり返すことが必要となります.私自身,日常診療でルーチン検査を意識していることで,患者の病態の把握がより深く正確になったと自覚しています.検査だけで診療はできませんが,より適切な診療を行うには,検査値の適切な解釈が必要なのです.1 人でも多くの医療従事者に本当の意味でのルーチン検査の読み方を知ってもらい,診療に役立ててもらえればと思い,本書を企画しました.
本書は全4 章で構成されています.まず,第0 章で先ほどから何度か出てきているルーチン検査とはどういう検査なのか,それを解釈するとはどういうことなのかを述べます.次に,第1 章でルーチン検査から病態を把握するための検査値の読み方を解説します.どういう視点で検査値を見るのかとその評価を行うために注目すべき検査値について説明をしています.第2 章では,具体的な疾患ごとにルーチン検査がどのように変動するのかという点と,治療による検査値の変動について解説をします.患者の治療効果判定には,自覚症状や診察所見,バイタルサインなどが重要であることはもちろんですが,臨床検査も判断材料になります.ルーチン検査の結果の変動から改善または増悪を判断することができれば診療に役立ちます.最後の第3 章では,診断と治療の経過においてルーチン検査をどのように解釈するのかという点を含め,症例をあげ解説しています.臨床現場で実際にどのように臨床検査を用いるのか,また診断だけでなく病態をどうとらえるかがみえてくると思います.
本書の執筆は,実際に病院の第一線で活躍をしている臨床検査専門医の先生方にお願いをしています.臨床検査専門医というとなじみがなく,何をしているのか知らない人が多いでしょう.実際には,臨床検査全般の知識があるだけでなく,さらにサブスペシャリティーとして骨髄検査(血液内科)や細菌検査(感染症内科)といった専門性をもつ医師です.臨床検査専門医についてはコラムでも紹介していますのでご一読ください.
最後になりましたが,ご多忙のなか,執筆にご協力いただいた先生方,本書の企画から完成までご尽力いただいた羊土社の藤澤 優さん,森 悠美さんをはじめ,関係者の方々に
心から感謝を申し上げます.
2024年2月
信州大学医学部附属病院 臨床検査部
松本 剛
目次
第0章 ルーチン検査とは【松本 剛】
第1章 ルーチン検査の読み方
1 栄養状態を含めた全身状態の経過【松本 剛】
2 細菌感染症の有無とその重症度【松本 剛】
3 腎臓の病態【松本 剛】
4 肝・胆道系の病態【松本 剛】
5 細胞傷害【松本 剛】
6 凝固・線溶【松本 剛】
7 電解質と血液ガス分析【松本 剛】
第2章 治療による検査値の変動
1 細菌感染症の治療と検査値の変動【松本 剛】
2 腎障害の治療と検査値の変動【岩津好隆】
3 肝障害の治療と検査値の変動【後藤和人】
4 肝炎ウイルスマーカーの選択と治療後の変動【後藤和人】
5 輸血療法と検査値の変動【西川真子】
6 手術後に予想される検査値の変動【千葉泰彦】
7 心不全の治療と検査値の変動【赤坂和美】
8 低ナトリウム血症の治療と検査値の変動【岩津好隆】
9 糖尿病性昏睡の治療と検査値の変動【常川勝彦】
10 心停止患者の検査値の変動【松本 剛】
第3章 ケーススタディ
case1 70代女性,胸痛のため救急搬送された【赤坂和美】
case2 70代男性,吐血を主訴に救急搬送された【松本 剛】
case3 60代男性,腹痛で救急搬送された【上蓑義典】
case4 60代女性,長く続く発熱で紹介受診となった【上蓑義典】
case5 70代男性,外来で咳嗽と喀痰が続いている【上蓑義典】
case6 50代女性,子宮頸がんの手術直前に腹痛のため緊急入院となった【岩津好隆】
case7 70代男性,抗がん薬使用後に低ナトリウム血症をきたした【岩津好隆】
case8 40代女性,嘔気・腹痛のため救急搬送された【後藤和人】
case9 50代男性,高所から転落し救急搬送された【松本 剛】
case10 30代男性,全身熱傷のため救急搬送された【松本 剛】
case11 30代女性,紫斑と歯肉出血のため紹介受診となった【滝口 純,西川真子】
case12 60代女性,手術後に呼吸苦が出現した【滝口 純,西川真子】
case13 50代男性,腰背部痛のため受診【朝比奈 彩】
case14 60代女性,血小板減少のため紹介受診となった【朝比奈 彩】
case15 60代男性,呼吸困難のため救急搬送された【常川勝彦】
case16 20代女性,意識障害のため救急搬送された【常川勝彦】
臨床検査豆知識
なぜ採血管は何種類も必要なの?【千葉泰彦】
採血管には血液を入れる順番があるの?【千葉泰彦】
内服薬が血液検査に影響を与える?【滝口 純,西川真子】
血液培養の注意点【上蓑義典】
「がん遺伝子パネル検査」って最近聞くけど?【朝比奈 彩】
Column
臨床検査専門医とは【千葉泰彦】
臨床検査医までの道のり,そして現在【千葉泰彦】
なぜ臨床検査医を目指したのか〜診断のおもしろさとやりがいを感じて〜【西川真子】
臨床検査専門医の日常〜検査技師と臨床医のパイプ役として〜【朝比奈 彩】
臨床検査専門医の日常〜教育から診療・研究まで〜【後藤和人】
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書籍情報
- ISBN:9784758124164
- ページ数:280頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年4月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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