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なぜEBMは神格化されたのか 誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史
大脇 幸志郎 (著) / ライフサイエンス出版
商品情報
内容
医学の外でもきっと同じことが起きている。
エビデンスという言葉に戸惑いを感じている、すべての人に読んでほしい。
東浩紀
国内外の膨大な文献を根拠にEBM誕生の歴史的背景やEBMを考案した人物たちの意図を紐解く超大作
「この本は、一度でも『エビデンス』という言葉を使ったことのあるすべての人のためのものだ」
「医学についての言説は時代に敏感でなければならないし、つねに過去の正義が実は正義ではなかったと訂正を繰り返さなければならない」(本文より)
エビデンスに基づく医学(EBM)という言葉が、あたかも医学が事実の裏付けのない空理空論からすでに脱却したかのような含みで語り交わされている。しかし、実際には医学における重要な判断にエビデンスが必須どころか努力目標としてすら求められていないという事実がある。
本書は、公衆衛生の発達、臨床医学の飽和、薬害事件による臨床試験の制度化などを背景として医学が統計技術を取り込んだ歴史や、EBMという言葉を考案した人物たちの来歴を紹介する。さらに、エビデンスについての誤解や拡大解釈から発展していくイメージとの相互作用に注目することで、医学が生産的に実証性を維持するための課題を探る。巻末に索引、用語解説、年表、主な登場人物一覧、医学雑誌歴代編集長一覧などを付する。
序文
まえがき
この本は、一度でも「エビデンス」という言葉を使ったことのあるすべての人のためのものだ。医療従事者であっても、患者の立場にある人でも、医学とは別の文脈でエビデンスという言葉を使う機会があった人でも、この本に書かれた事実を知れば失望するか、腹が立つか、拍子抜けすることだろう。その体験をつうじて、いま世の中でエビデンスと呼ばれているもののほとんどすべてがその名に値しないことを理解してほしい。
エビデンスのないものは信じられないとか、エビデンス偏重に弊害があるといった議論はすべて底が抜けている。エビデンスを理由に現代の医学を(あるいはほかの何かを)おおむね支持するかしないかは五十歩百歩で、実際は誰も十分なエビデンスなど持っていない。
筆者は臨床医でもあるが、この本の前に三冊の単著を書き、三冊の本を英語から日本語に翻訳した。そのすべてが本書の内容に関係している。特にペトル・シュクラバーネクの『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』は関係が深い。それらに共通する点は、医学に対する過信を問題にしていることだ。
筆者は医師としても書き手としても学術的な実績はいっさい持っていない。歴史研究についての訓練もない。だから本書はいかなる意味でも学術的にはなりえなかった。取り上げた事実の範囲と配列は体系的ではないし、資料はほぼすべて公刊されたものだし、言及した人物が存命中であってもインタビューはしていない。もし本書がエビデンスに基づく医学に対する有効な批判になっていないと言われれば、そんなことはもとより目指していないと答えるしかない。
同じように、本書はけっして医学の本ではない。最新のエビデンスに基づく知識を得たいとか、エビデンスの使いかたに習熟したいといった目的には応えられない。歴史の本として不完全であるのと同じかそれ以上に、医学の本として読まれれば、やっと医師免許を持っているだけの素人の知ったかぶりにしか見えないだろう。そのような内容を読者が自分の健康に当てはめようとしたときの潜在的な害については責任の取りようがないので、ただやめてほしいとお願いするしかない。
それでもこの本は、あるタイプの読者にとっては、おもしろい読み物になっているはずだ。エビデンスという言葉のいっけん自明な意味がそのようになった背景とか、身近なニュースに新しい解釈を加えることとか、魅力的な人物が登場する物語に興味を覚える読者を喜ばせるよう、筆者ができるだけのことをした。
この本の原稿を準備しているいま、筆者の四〇歳の誕生日と、第二子の誕生が近づいてきている。はじめての単著が結婚式を控えている時期だったことを思い出す。それから数年のうちに、書き手として次の世代に渡せるものを残したいという気持ちがさらに強くなった。我が子たちが大きくなるころには、この本を読まずにすむように、現実のほうが少しでも変わっているか、ほかの書き手がもっとよい本を書き継いでくれていることを願っている。
凡例
・ 巻頭に略語一覧を付した。特に使用回数が多いのが医学誌の題名で、略記のうえ、ランセットなど、雑誌名を示す二重鉤括弧を断りなく省いた箇所がある。Annals of InternalMedicine はアナルズとした。訳語は定訳をできるだけ採用したが、不自然と思われたものなどは適宣独自の訳を当てた。特にEBMは「根拠に基づく医療」などさまざまな訳があるが、引用を除いて「エビデンスに基づく医学」に統一した。
・ 薬剤名は日本での販売名を優先して表記したが、複数の販売名がある場合や日本で発売されなかった場合など、文脈によって一般名を断りなく使用している。併記する場合には「販売名(一般名)」とした。
・引用文に補足する場合は角括弧[]を使った。
・ 巻末に索引、用語解説、年表、主な登場人物一覧、医学雑誌歴代編集長一覧、図表一覧、参照文献を付した。
目次
略語一覧
まえがき
序 エビデンスに基づく医学はどのように定義されるか
第一部 臨床医学における実証的アプローチの発展と行き詰まり
第一章 前史:ダニエル書からリンドまで
第二章 一九世紀の公衆衛生改革:センメルヴェイス、ナイチンゲール、スノー
第三章 RCTの確立:圧覚、血清療法、結核
第四章 制度化される実証:スルファニルアミドとサリドマイド
第五章 オースティン・ブラッドフォード・ヒルと観察研究
第六章 RCTの大規模志向とメタアナリシス
第七章 ピラミッドからGRADEへ
第八章 病名文学の時代
第九章 夢の終わり:臨床試験レジストリ、PROSPERO、COVID-19
第二部 臨床の科学を夢見た人々
第一章 ファインスタインとサケットの臨床疫学
第二章 アーチー・コクランとイアン・チャーマーズ
第三章 EBMの誕生:ゴードン・ガイアット(1991)
第四章 コクラン共同計画の発展と情報化
第五章 サケットの応答と再定義
第六章 後継者たち
第七章 医学誌の問題:カッシーラー、スミス、ランドバーグ
第八章 産業とEBM
第九章 ゲッチェ事件
第三部 噂に基づくEBM
第一章 ジェンナー、ナチス、タスキーギ
第二章 スーザン・ソンタグの矛盾
第三章 レトリックとしての反証可能性
第四章 ナイチンゲールからイリイチへ
第五章 ナラティブ(ベイスト)メディスン
第六章 エビデンスに基づく政策立案
第七章 エイズ、ワクチン、陰謀論
結語 私たちには何が必要なのか
謝辞
付録
参照文献
図表一覧
医学雑誌歴代編集長一覧
主な登場人物一覧
年表
用語解説
文献索引
人名索引
事項索引
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書籍情報
- ISBN:9784897754840
- ページ数:620頁
- 書籍発行日:2099年10月
- 電子版発売日:2024年8月31日
- 判:四六判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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