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- 実験医学増刊 Vol.42 No.15 “情報”から“マテリアル”へ ノンコーディングRNA研究
商品情報
内容
RNAを丸ごと読むシークエンス技術から,がん,生殖などの生命現象や創薬に関連するノンコーディングRNAを解説.ノンコーディングRNAを「見つける」「知る」「使う」の基礎から応用までを網羅した1冊.
序文
序
一昔前まで,「ノンコーディングRNAの研究」といえば,RNAサイレンシングを担う「小さなRNA」と,タンパク質をコードしない長鎖ノンコーディングRNAの研究のことであった.そして,実験医学増刊号『ノンコーディングRNAテキストブック』が発行された2015年頃までに,これら「ノンコーディングRNA」の基本的な役割についてはおおかた明らかとなり,ポストゲノム時代を迎えて勃興したノンコーディングRNA研究の爆発的な進展も一段落ついた感もあった.
それから約10年が経ち,ノンコーディングRNA研究は,大きな転換期を迎えている.この間,RNA研究のみならず生命科学全般に影響を与えたパラダイムシフトの1つが,特定の立体構造をもたない分子が多価の弱い相互作用を介して形成する「分子コンデンセート」の重要性への,新たな認識である.この概念は,特定の立体構造が仲介する特異性の高い相互作用こそ重要,という従来の分子生物学のドグマを超え,生体高分子の働き方についてのわれわれの理解を,大きく拡張することとなった.特にRNAはその柔軟性から多くの分子コンデンセート形成において中心的な役割を果たしており,実際,長鎖ノンコーディングRNAの主要な機能の1つである核内構造体の形成機構の解明は,分子コンデンセート形成の分子メカニズムの理解に大きな貢献をしている.一方,ノンコーディングRNAではないmRNAも,Pボディやストレスボディなどの分子コンデンセートの構成要素として機能しており,分子コンデンセート形成能は長鎖ノンコーディングRNAの専売特許ではないことも明らかとなりつつある.つまり,RNAという分子(マテリアル)の物理化学的な性質そのものが現象の理解に重要なのであり,その観点からいえば,いわゆるノンコーディングRNAと,それ以外のRNAに,本質的な違いがあるわけではない.さらに,ここ数年で医療のあり方を大きく変えたmRNAワクチンの開発にしても,情報としてのRNAではなく物質としてのRNAの研究があってこそ初めて可能になったものであり,従来より開発されていた核酸医薬やアプタマー研究と相まって,RNAという分子は使える分子である,という認識を大きく広めることとなった.かくして,機能性のRNAを発見し理解する,というモチベーションから始まったノンコーディングRNA研究は,RNA,ひいては核酸をマテリアルとして理解し利用するという大きな流れに合流し,新たなフェーズに入りつつあるように思われる.
本書では,このようなノンコーディングRNA研究の新時代の幕開けを意識しつつ,ノンコーディングRNAを「見つける」,「知る」,「使う」の各ステップにおいて,これまでにない革新をもたらした最新の知見および関連研究を紹介する.本書を通じ,従来のノンコーディングRNA研究の枠組みを超え,マテリアルとしてのRNAの新たなポテンシャルを探る新たな研究の胎動を感じていただければ幸いである.
2024年8月
編者を代表して
中川真一
目次
序【中川真一】
概論 RNA研究の新たな地平:ノンコーディングRNA研究からマテリアルとしてのRNA研究へ【中川真一】
第1章 ncRNAを “見つける” -新たな解析手法と見出された分子
1.ロングリード解析による網羅的なRNA解読【鈴木絢子,鈴木 穣】
2.新生RNA解析技術からわかるncRNAの転写反応【中山千尋,野島孝之】
3.deep sequencingを用いた機能性低分子RNAの探索【牛田千里,清澤秀孔,河合剛太】
4.ナノポアシークエンシングによるRNA修飾解析【野口 亮,鈴木 勉】
5.難抽出性RNAに焦点を当てたncRNA研究への新規アプローチ【藤原奈央子,廣瀬哲郎】
6.lncRNAから翻訳されるポリペプチドの生物学的意義【白石大智,松本有樹修】
第2章 ncRNAを “知る” -見出される新たな機能・意義
1.microRNA研究 アップデート-miRNAの生合成・分解,作用機序と機能【浅野吉政,吉田豊珍,東 将太,程 久美子】
2.piRNAを介したトランスポゾンの転写抑制機構【大西 遼,岩崎由香】
3.レトロトランスポゾン由来の短い非コーディングRNA-進化,機能,および生理的重要性【芳本 玲】
4.非膜オルガネラの骨格として働くarcRNA【山崎智弘,廣瀬哲郎】
5.リピートncRNAによる遺伝子発現制御【二宮賢介,廣瀬哲郎】
6.クロマチン高次構造とRNA-ELEANORを例に【Maierdan Palihati,斉藤典子】
7.非コードRNA転写によるゲノム高次構造の制御【梅村悠介,深谷雄志】
8.Xist RNAによるエピゲノム制御【佐渡 敬】
9.がんと非コード領域【谷上賢瑞】
10.細胞質局在長鎖ノンコーディングRNAの機能-circRNA,Cyrano,そしてNORAD【中川真一】
11.リボソームRNA遺伝子座から転写されるncRNA群と核小体の機能【井手 聖】
12.馴染みの少ない生物種で見出されたlncRNA【川田健文,嵯峨幸夏】
第3章 RNAを “使う” -RNAを使い細胞を操作する
1.翻訳を操作するアンチセンスlncRNA「SINEUP」【髙橋葉月,Piero Carninci】
2.サイボーグRNAアプタマー創薬を天然型DNAアプタマーでrebootする【吉本敬太郎,坂田飛鳥,稲見有希】
3.ブリッジRNA依存性IS110リコンビナーゼの発見,機能,構造,応用【西増弘志】
4.RNA合成生物学による細胞制御の新潮流【秦 悠己,齊藤博英】
5.RNAを標的とする低分子化合物【堂野主税,中谷和彦】
6.アンチセンス核酸医薬-最近の核酸医薬の進歩・課題と福山型先天性筋ジストロフィーに対するアンチセンス核酸医薬品の開発【長坂美和子,池田(谷口)真理子】
7.修飾mRNAを用いた遺伝子発現技術【河﨑泰林,高羽未来,阿部 洋】
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書籍情報
- ISBN:9784758104210
- ページ数:208頁
- 書籍発行日:2024年9月
- 電子版発売日:2024年9月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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