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  • 高齢者の慢性疾患における緩和ケア;QOL向上を目指す包括的ケアーホスピスケアから緩和ケアへ、そして、その先へー

高齢者の慢性疾患における緩和ケア;QOL向上を目指す包括的ケアーホスピスケアから緩和ケアへ、そして、その先へー

  • ページ数 : 156頁
  • 書籍発行日 : 2024年9月
  • 電子版発売日 : 2024年9月10日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

緩和ケア新時代!
慢性疾患における緩和ケアの目的は、苦痛から解放されて、QOLとwell-beingの向上を目指すことです。本書は、緩和ケアを臨床倫理的視点から読み解くための総論と、さまざまな疾患における事例から緩和ケアを考える各論から構成されています。患者本人の尊厳に配慮するとはどういうことなのか、人生の最期の時期を満たされた思いで過ごすことの意義を学びましょう!

序文

はじめに

2019 年10 月に「高齢者の慢性疾患における緩和ケア」のワーキンググループ(WG)に関する構想が始まった。多くの会員の皆様が、自身の臨床経験から熱い思いを込めたレポートを書きWG のメンバーに応募をしていただき、「高齢者の慢性疾患における緩和ケア」が臨床現場において、大きな関心を集め、深い熟慮が必要な課題であると改めて認識した次第である。緩和ケアは、倫理的に適切な意思決定プロセスを支援することも含み、高齢者ケアに関わるすべての医療ケア関係者が、緩和ケアの方向性まで見通して対応できる仕組みの構築と、早期に相談できるサポート体制の拡充について議論することは、日本臨床倫理学会が果たすべき重要な役割であると思われた。

2020 年11 月5 日、第1 回WG 会議が開催され、以後2 か月ごと、2024 年6 月まで開催された。途中コロナ禍もあり、会議の開催はWeb が中心となり、3 年の予定がさらに1 年ほど延びることになった。

緩和ケアのニーズと実践の広がり

人口統計上高齢者が急増し、罹病期間が長く、他の合併疾患も多い循環器疾患などの慢性疾患が増えている。したがって終末期だけでなく、すべての疾患に対して、すべての病期(ステージ)においても緩和ケアは基本的ケアとして必要である。

『終末期の緩和ケアの世界地図2014 Global Atlas of Palliative Care at the End of Life』は、緩和ケアの世界的ニーズと供給に関して、よく引用される文献であるが、「緩和ケアを必要とする人の10 人に1 人しか緩和ケアが提供されていないこと」「緩和ケアを必要とする3 人に1 人は末期がんであるが、3 人に1 人は循環器疾患・呼吸器疾患などの非がん疾患であること」を示している。

歴史的には、当初すべての病者を対象とした

歴史的には、すべての疾患の人が、人間らしく最期の日々を過ごすという安息を提供する場としてのホスピス(542 年、フランス、リヨン、オテル・デュー〔Hôtel Dieu;神の宿〕)を源流として、その後、1443 年Nicolas Rolin 夫妻のオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)、1534 年オピタル・ド・ラ・シャリテ Hôpital de la charité(救貧院)、1802 年市民ホスピスDes Hospices Civilis がつくられた。

18 世紀末、近代ホスピスの母マザー・メアリ・エイケンヘッドMary Aikenhead(1787 〜1858)は、アイルランドに、貧しい人々、病める人々を対象として、「最後の時に人間らしい、温かなベッドと優しいケアを」と願い、「ホーム」とよばれる安息の場を提供した。

その後、がんの苦痛からの解放をめざす全人的ケアとして緩和ケアは発展し、世界各国の医療供給体制に組み込まれてきた。1990 年以降、高齢化の進行や慢性疾患の増加があり、欧米で、緩和ケアの対象をがんだけに限定することに疑問が呈されるようになってきた。その後、非がん患者に対しても、緩和ケアが有用だとするエビデンスが蓄積され、以後、すべての生命を脅かす疾患に罹患した人々のQOL の改善のために、緩和ケアは医療に不可欠な要素の一つとして認識されるようになった。

「臨床倫理」をキーワードに緩和ケアを考える

慢性疾患における緩和ケアの目的は、苦痛から解放されて、QOL 生活の質の向上(生活支援)とwell-being の向上を目指すことである。したがって、その内に、本人や家族に対する「倫理的に適切な意思決定支援」をも含んでいる。

苦痛から解き放たれることは、人としての基本的権利であり、患者の価値観や人生観、残された期間を考慮した、本人が望むQOL や治療のゴール「本人が何を大切に思っているのか」「どうすれば人生が意味をもつのか」「良い人生とはどのようなものだと考えているのか」について、明らかにする話し合いをもち、それらを理解し、共感し、今後の治療方針を考えていくことが重要である。

医療ケア関係者だけでなく、患者や家族にも慢性疾患における緩和ケアの重要性を伝える

WG の成果である本書は、緩和ケアを倫理的視点から読み解くための総論と、さまざまな疾患における事例から緩和ケアを考えるための各論から構成されている。

また、よく知られているWHO の緩和ケアの定義以外にも、一般の人向けの緩和ケアの定義「重い病気に罹った場合でも、最期までできるだけ自分自身の価値観にそった、苦痛の少ない快適な生活を送り、人生が満ち足りたものになるために、患者さん本人はもちろんのこと、家族に対しても、医療ケア専門家がお手伝いするものです。また、緩和ケアには、今後の治療方針や日常生活の過ごし方を

決めるための助言や支援をも含みます」をも提案している。これまで主流だった緩和ケア専門チームによるアプローチSpecialist Palliative Care と、慢性疾患診療科の医療ケアチームによる基本的緩和ケア的アプローチGeneralist Palliative Care の連携の重要性についても熟慮している。特に、今後は、基本的緩和ケア的アプローチGeneralist Palliative Careの発展に力を注ぐ必要がある。

4 年間にわたるWG の議論を通じて、メンバー皆、患者本人の尊厳に配慮するとはどういうことなのか、人生の最期の時期を満たされた思いで過ごすことの意義を学ぶことができた。これらを日本臨床倫理学会の会員の皆様をはじめ、多くの医療ケアに関わる人々と共有したいと願っている。

謝辞

4年もの間、熱心に議論に参加していただき、本書の執筆にご協力いただいたワーキンググループのメンバーの皆様に感謝申し上げるとともに、アドバイザーとして、「脳血管疾患と緩和ケア」を執筆いただいた大野綾先生と藤島一郎先生、「循環器疾患と緩和ケア」を執筆いただいた柏木秀行先生、「神経難病と緩和ケア」を執筆いただいた神谷浩平先生に、改めて御礼を申し上げる。


(箕岡 真子)

目次

総論

1「臨床倫理」をキーワードに緩和ケアを考える

2患者の権利からみた臨床倫理ー非がん患者の緩和ケアを受ける権利

3緩和ケアで考慮するべき高齢者の特性

4基本的な緩和ケア的アプローチGeneralist Palliative Careの重要性

5緩和ケアにおける基本的な倫理的枠組み

6患者の意向の尊重と家族等の役割

7意思決定支援の法的側面ーガイドラインの比較を踏まえて

8対人コンフリクト(interpersonal conflict)の解決

9本人支援と家族支援ー看護師の視点からみた「家族ケア」

10緩和ケアにおける医療者支援

各論

1 在宅における摂食・嚥下障害と緩和ケア

家族の代理判断により人工的水分栄養補給を中止した事例


2 認知症と緩和ケア

がん治療中に認知機能障害が併発した際の療養先の選定をめぐる検討


3 脳血管疾患と緩和ケア

重度障害をきたし死亡直前までリハビリテーションを行った超高齢脳梗塞のケース


4 循環器疾患と緩和ケア

慢性心不全患者の心不全医療ケアチームによる基本的緩和ケア


5 慢性呼吸器疾患と緩和ケア

呼吸困難を「トータルディス二ア」としてとらえる全人的アプローチ


6 腎・透析疾患と緩和ケア

在宅医療との連携による「維持透析見合わせ」の意思決定支援


7 排尿支援と緩和ケア

排泄機能不全における排尿支援と緩和ケア


8 神経難病と緩和ケア

気管切開、人工呼吸器装着、胃ろう造設を拒否したALSのケース


9 救急領域と緩和ケア

呼吸管理に関して家族で意見の相違があった脳梗塞のケース


10 介護施設と緩和ケア

意思疎通のできない入所者を花見に参加させるべきか ー生活における「思いやり」の態度は緩和ケアに通じるー


11 看護と緩和ケア

看護師がチーム医療のリエゾンとして意思決定支援した喉頭がん患者のケース


12 訪問看護と緩和ケア

「わしは、だるまさんになっちまったよ」ー両下腿切断した糖尿病患者のケース

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書籍情報

  • ISBN:9784867190975
  • ページ数:156頁
  • 書籍発行日:2024年9月
  • 電子版発売日:2024年9月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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