ねころんで読める緩和ケア

  • ページ数 : 272頁
  • 書籍発行日 : 2024年10月
  • 電子版発売日 : 2024年10月29日
3,960
(税込)
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商品情報

内容

【経験を元にした緩和アプローチのヒント】
緩和ケアに自信がもてない医師のため、身体的な症状緩和(痛み、呼吸困難、せん妄、嘔気)、患者のQOLを良好に保つための症状マネジメント(便秘、食欲不振、不眠)、精神症状(気持ちのつらさ・不安)、鎮静について、すぐに役立つポイントを中心に解説した。
患者のニーズに合わせた緩和ケアが提供できる知識や説明のコツがわかる書籍。

※以下の写真は許諾の関係により掲載しておりません
 P223 表2 PHQ-9 (Patient Health Questionnaire-9)日本語版(2018)

序文

新しい時代の緩和ケア~すべての人に届くケアへ~


幸せとは、そのまま変わらないで続いてほしいような、そんな状態である。

ベルナール・フォントネル(Bernard le Bovier de Fontenelle 1657-1757フランスの著述家)


この30年ほどで、日本の緩和ケアは大きく変わりました。1990年代にホスピス・緩和ケア病棟を中心にがん終末期のケアとして日本に広まっていった緩和ケアは、2000年代後半からはがん診断時から治療と並行して切れ目なく提供されるケアとして、緩和ケアチームや外来において整備が進みました。さらに近年では、がん以外の心不全や慢性呼吸器疾患、神経難病や腎不全などの慢性疾患や、救命を目的とした救急・集中治療領域、そしてフレイルや認知症など、すべての「重い病(serious illness)」を生きる人や家族に、緩和ケアのニーズがあることが明らかになっています。

しかし、緩和ケアの「担い手は誰か」ということになると、多くの現場の理解は非常にあいまいです。緩和ケアチームや緩和ケア病棟とのつながりがない、紹介する専門家が少ない、一般の診療科の医師や看護師が具体的にどこから手をつけてよいのかわからない、という声もよく聞かれます。本書は、そのような「現場の医師や看護師、医療介護従事者」にお届けしたい思いで執筆しました。

これからの緩和ケアは、専門家が行うケアから、皆さんが日々診療を続ける一般病棟、外来、地域、施設など、すべての医療介護従事者がそれぞれの専門性を生かしながら、大切な人が「最期までよりよく生きるためのケア」として提供されるものに変わっていきます。つまり、進行がんのような比較的予後の見通しが立てやすい疾患だけでなく、慢性疾患の急性増悪に対する治療の必要な段階や、老衰や認知症、精神疾患を抱えた人など、どこからが終末期かわからない対象へと、より広く包摂的な緩和ケアの提供が必要なのです。

「フェーズフリー」とは防災の概念で、いつ起こるかわからない災害に対して、「いつも=日常」と「もしも=非常時」の2つのフェーズ(局面)をフリー(自由)にして、平時から身の回りで使っているモノやサービスを災害時にも役立てよう!という考え方です。私はこれを緩和ケアにも当てはめたいと思います。つまり、「ここからが緩和ケア」という考えではなく、日常の診療、ケアから始めて、患者さんの苦痛や病状の変化を鋭敏に周囲と共有し、(防災の自助・共助・公助のように)それぞれの現場で「自助・共助的な緩和ケア」が求められている時代なのではないでしょうか。もちろん、専門緩和ケアはそれをサポートします。

緩和ケアの基本は、困っている人、苦しいと感じている人に、その場で向き合い、できるだけの対応をすることです。そのためには、専門家に託したり自分にはできないと切り捨てるのではなく、まずは「あなたの苦痛を和らげる準備がありますよ」という技術的な裏づけをもった保証を与えられるチームを皆さんご自身が作っていくことが、患者さんへの何よりの福音になると思っています。

本書を手にとってくださった皆さんが、目の前の患者さんの「痛みや吐き気を感じず楽に過ごせる」「安心して夜を迎え、朝までぐっすり休める」「家事や犬の散歩をしていた日常を取りもどす」「『よい人生だった』と最後に振り返る」支援の担い手となられることを願っています。

最後に、医師である私たちも、いつかは重い病をかかえる同じ人間です。ほかの医療職、そして患者さん・ご家族と対等に話し合い、仲間となって励まし合いながら、「明日は良くなる」という希望をもって、緩和ケアを学び、実践しましょう。


2024年7月 山形市内の自宅にて

一般社団法人MY wells地域ケア工房 代表
神谷浩平

目次

・新しい時代の緩和ケア~すべての人に届くケアへ~

・本企画について/Dr.'s Prime Academiaとは?/ご購入いただいた方へ

【1章】

緩和ケアとは

【2章】

全人的苦痛とチーム医療

【3章】

身体的な痛みの緩和ケア

【4章】

痛み以外の身体症状

①呼吸器症状~息する限り、希望をもつ~

②消化器症状~尊厳を保ち、回復するために~

③せん妄~穏やかな日常を脅かす「最大の危機」~

【5章】

日常生活から支える緩和ケア~「揺れない船」の作りかた~

①便秘(排便)の緩和ケア

②食欲不振~「食べられない」「栄養が足りない」への緩和ケア~

③「不眠」への対処と緩和ケア~よりよい朝を迎えるために~

【6章】

精神的なつらさへの緩和ケア

【7章】

苦痛緩和のための鎮静~終わりではなく、よりよい明日のために~

【8章】

おわりに:誰もが緩和ケアの担い手となるために

・資料ダウンロード方法

(資料1 症状緩和を目的とした皮下点滴可能な薬剤一覧、

資料2 SPIKES:悪い知らせを伝えるプロトコール、

資料3 SHARE:悪い知らせを伝えるプロトコール、

資料4 NURSE:感情に対するスキル)

・著者紹介

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書籍情報

  • ISBN:9784840485333
  • ページ数:272頁
  • 書籍発行日:2024年10月
  • 電子版発売日:2024年10月29日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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