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- 小児看護と看護倫理
商品情報
内容
日常的な臨床場面での倫理的看護実践に焦点を当て、ケアの場面で疑問や葛藤を感じたときや、何気なく行っているケアを振り返る際に、思考を整理し、考え、行動することにつながる“気づき”の機会となるようにテーマと事例を精選。小児看護に携わる看護師はもちろん、普段は子どもにかかわることの少ない看護師が子どもや家族のケアに疑問を感じたとき、また、教員や看護学生にも十分活用できます。
序文
序文
平成の時代が終わり,令和という新しい時代が幕を開けました。平成の30年の間には,相次ぐ未曾有の自然災害の発生や,障がいのある子ども・家族にとってだけではなく,日本中に衝撃を与える事件も発生しました。このような大変な出来事が生じるたび,医療を必要とする子ども・家族だけでなく,すべての子ども・家族にとって,「安全とは何か」「子どもたちにとって何がよいことか」という問題が,私たちに突きつけられているように感じます。
小児看護は,子どもが,身体的・精神的・社会的な存在として,それぞれの健康レベルに応じて,健やかな成長・発達をとげること,また,健康な身体をつくり,豊かな心を養い個人(自分)として,また,家族や社会のなかで「自分らしく」健やかに生きていけること,そして,家族も,子どもとの相互作用をとおして,親として,きょうだいとしていられること,家族自身も自分らしくいられることをめざしています1)。しかし,近年,入院している子どもの重症化や,気管切開,人工呼吸管理など医療的ケアをもちながら自宅で生活する子どもの増加など,小児看護を取り巻く環境は大きく変化しています。病院や施設では,限られた看護師数のなか,子どもの安全を守ることが優先され,課された業務を安全にこなすことに集中するあまり,ふと気づくと自分たちが本来めざしていたものとはかけ離れた看護をしているような気持ちになったり,「看護をしているのか」「もやもやする」など,悩んだり,迷ったりすることも少なくありません。また,子ども・家族の安全を守るために考えられた看護ケアやマニュアル,院内の決まりごとが,本当に子ども・家族のためになっているのかどうか,忙しい日々の業務のなかでは,立ち止まり,検討する機会をもつことさえ難しくなっているかもしれません。
本書では,一度立ち止まり,小児看護について考え,私たち看護師自身が「これでいいんだ」「だから,もやっとしていたんだ」と感じることができるように,小児看護について看護倫理の視点から考えることをめざし,編集しました。「倫理」ということばから,子どもへの病気の説明や生命維持に関する治療選択の場面を思い浮かべるかもしれません。しかし,日常的な臨床場面のなかで,「どうしたいのか」「どういうことを子ども自身がよいと思っているのか」など,子どもの考え・気持ちを捉えながらケアを提供することは,成長・発達する子どもの自律を考える重要な視点であり,そのようなケアの積み重ねが,ひいては,生命に関する選択が求められる場面で,何を大切にするかという倫理的判断につながるのではないかと考えます。だからこそ,本書は,日常的な臨床場面での倫理的看護実践に焦点を当て,日常のケア場面で疑問や葛藤を感じたとき,あるいは何気なく行っているケアについて振り返り,私たちの思考を整理し,考え,行動することにつながる“気づき”の機会となるように内容を吟味しました。
看護は,それを提供する側が,「答え」をもたない学問です。特に小児看護では,対象となる子どもの健康状態が改善することだけがゴールではなく,健康問題や障がいがありながらも,ひとりの人として成長し,自分の人生を送っていくことを見すえることが求められます。本書が,日常のケア場面で問題に直面したときの糸口となり,また,日々難しさを感じ,葛藤するなかでも,ひとりのかけがえのない子ども・家族の人生に触れることのできる小児看護の魅力を改めて感じる機会となれば幸いです。
2020年3月吉日
編集者代表 塩川 芳昭
文献
1) 奈良間美保:小児看護の目指すところ.小児看護学概論・小児臨床看護総論(小児看護学1)系統看護学講座 専門分野Ⅱ,第14版.医学書院,東京,2020,pp4-8.
目次
Ⅰ章 総論
① 小児看護と看護倫理
② 看護倫理に関する基礎知識
③ 小児医療の臨床倫理アプローチ
④ 倫理的課題を調整するうえでの看護師の役割
⑤ 倫理的感受性を高める看護師教育
⑥ 子どもを取り巻く研究に関する倫理
⑦ 医療のなかでの子どもの権利保障
Ⅱ章 日常の看護場面での倫理的課題
テーマ① 十分なケア提供ができていないこと
付き添いのない個室管理中の子どもが泣き続けているのは仕方がないことなの?
重症の子どものケアが優先され,手術前の子どもに十分かかわれないんだけれど
いつも同じ番組が流れているけれど,それでいいの?
テーマ② 子どもの権利と尊厳
安全確保のために子どもを抑えて処置をするしかないの?
環境の変化に脆弱なのに短期入所を利用することは子どもにとって苦痛ではないの?
テーマ③ インフォームドコンセント,インフォームドアセント
幼児に病気や治療の説明を行わないまま薬をすすめていいの?
大人になり,自分で意思決定をしていく準備ができているの?
テーマ④ 子ども・家族の自己決定
子どもに知らされないまま無理やり処置をすることになったんだけれど
子どもの治療は誰が決めるべきなの?
テーマ⑤ 安全確保と抑制
これから発達していく子どもに抑制は必要なの?
上肢抑制は本当に24時間必要なの?
子どもの状態と母親の状況から鎮静薬投与の提案をしてみたけれど
テーマ⑥ 家族支援
生命の危機的状況にある子どもの親をどう支えればいいの?
母親だから仕事をやめて,子どものケアをするのはあたり前のことなの?
子どもの状態の安定を図り,家族の時間を保つために最適な環境を考えたいけれど
テーマ⑦ 終末期医療を取り巻くこと
「もう移植はしたくない,やりたいことがある」という子どもの意向が尊重されなくていいの?
意思表示ができない子どもの生命維持装置をどう考えればいいの?
テーマ⑧ 守秘義務
「お母さんには言わないでね」と子どもに秘密を打ち明けられたけれど
親の成育歴を医療チーム内で情報共有してもいいの?
テーマ⑨ 看護師の態度・発言・方針
時間外受診の電話対応が看護師間で異なるけれど,それでいいの?
テーマ⑩医師の治療方針
救急外来だからって子どもに説明せずに処置を行ってもいいの?
医師は鎮静の指示を出しているけれど,説明すればMRI検査をできるのに
テーマ⑪他職種との関係
職種によって子どもへのかかわり方が違ってもいいの?
テーマ⑫施設の組織管理
子どもと家族のニーズに応えて付き添いを認めてはいけないの?
テーマ⑬先進医療を取り巻くこと
遺伝学的検査を行う適切なタイミングはいつなの?
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書籍情報
- ISBN:9784867190005
- ページ数:216頁
- 書籍発行日:2020年4月
- 電子版発売日:2025年3月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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