自閉症かな?と思ったとき

  • ページ数 : 135頁
  • 書籍発行日 : 2014年4月
  • 電子版発売日 : 2025年3月26日
¥3,080(税込)
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商品情報

内容

自閉症の診断は子どもが2歳以上にならないと明らかにできないのが常であるが,テイテルバウムらの約20年にわたる研究によって,自閉症やアスペルガー症候群の可能性は,赤ちゃんのうちからその兆候が見つけられることがわかった.
専門医に限らず母親やその保護者が見分けられる方法を多数のイラストによって具体的に提示,適切な診断・療育を初期段階から始めることがいかに効果的であるかを説く道標の書.

序文

序文
Preface

のちに自閉症と診断される赤ちゃんの運動パターンの観察は,友人であるRalph Maurer博士の講義にPhilipが参加したことから始まりました.自閉症研究の先駆者であるMaurer博士は講義の中で3~11歳の自閉症児のビデオを見せ,彼らの非定型的な足取り(歩行パターン)をParkinson病患者のものと比較しました.すると,自閉症児と高齢のParkinson病患者との間に顕著な類似性がみられました.

このことにPhilipは興味をもち,もし自閉症児が3歳時にすでに非定型的な運動を示しているならば,これまで自閉症の診断が可能とされていた年齢よりももっと前,つまり赤ちゃんのときから異常な運動パターンを示すのではないかと推察しました.この考えが正しいかどうかを突きとめるため,われわれは後に自閉症と診断される子どもの赤ちゃんの頃のビデオを観る必要がありました.誰がこのようなビデオをもっていたかというと,子どもたちの親です.

われわれは自閉症児の親を支援するために作られた地方団体の広報誌に住所を掲載してもらいました.するとまもなく,ビデオテープが送られてきました.Osnatはそれらを観て,運動を記録し始めました.運動の記録にはEshkol-Wachman運動表記(Eshkol-Wachman Movement Notation:EWMN)*1という特別な分析システムを用いました.これは,Noa EshkolとAvraham Wachmanが1958年にはじめて発表したもので,運動言語の一つです.EWMNを使うことで運動パターンを観察し,記録し,読むことができます.そして,混沌として無意味に思われる運動パターンに法則を見出すことができるのです.EWMNによってはじめて,自閉症の赤ちゃんと自閉症でない赤ちゃんの運動の比較が意味づけされるのです.一般的に,英語のような音声言語は運動について述べることを意図して作成されていません.たとえば,もし誰かが頭の上に手をあげるように言うと,さまざまな解釈ができます.前方から弧を描くように手をあげることもあれば,横から弧を描くように手をあげることもあります.しかしEWMNによって,運動は曖昧さのない方法で記録できることになります.

一連の運動の流れの中からターゲットとなる運動のみを取り出さなければならないので,運動を観察し記録するという作業には非常に時間がかかっていました.ビデオは通常,誕生日や休日,長期休暇といった特別な出来事があるときにのみ撮影されていました.そのため,ビデオテープのなかから中断されていない一連の動きが観察できる箇所を見つけ,さらに,そのなかから四肢の軌道のみを抽出して別々に記録するのは非常に時間がかかりました.しかしその結果,記号を用いて連続的な「画像」を作ることができました.この作業中Osnatは,画像をとめたり,重要な動きを速度を変えてみたりはせず,何度も繰り返して映像をみました.音声を消して映像をみることで運動に焦点をあて,社会的文脈を排除しました.このような研究方法で子どもたちの運動に関する最初の研究を終えるのに5年かかりました.

寝返りをうったり,座ったり,立ったり,歩いたりする子どもの様子をOsnatが観察していると,ある非定型的な運動パターンが繰り返し現れ始めました.生後数か月の児でさえ(自閉症と診断されている子どもに言語や社会的な問題行動が認められるよりもずっと以前に),どこかおかしいと思われる徴候がみられました.のちに自閉症と診断される子どもの多くは,寝返りやお座りといった生後1年間で習得する運動スキルに問題があるか,またはこれらのスキルをまったく習得できないかのいずれかでした.

Osnatは異常な運動パターンに気づくたびにPhilipと議論し,Philipは運動をもっとよく理解するため神経学的な背景を探究しました.この作業もまた簡単ではありませんでした.自閉症児に何がおきているのかをもっとよく理解するため,床に座ったり横になったりして,観察した運動の再現を試みました.

1998年にアメリカ科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences:PNAS)に掲載されたわれわれの原著論文“Movement Analysis in Infancy May Be Useful for Early Diagnosis of Autism”は,17人の子どもの観察に基づいています.論文が掲載されてほどなく,ニューヨークタイムズ紙にわれわれの発見に関する記事が掲載されたことにより,自閉症とAsperger障害の子どもの親からたくさんのビデオテープが送られてきました.そこでわれわれは初めの頃と同じように,この送られてきたビデオテープをみて異常な運動を何度も繰り返し観察しました.そして現在,ゆうに100本を超すビデオテープから異常な運動を見つけました.

送っていただいたビデオテープには,子どもの親からの手紙が添えられていました.多くの親は早期から自分の赤ちゃんがどこかおかしいとわかっていたのですが,医師にそれを理解してもらえなかったという事実に衝撃を受けました.p. xivに掲載している手紙は,われわれが受け取った手紙のなかの一つです.

全国の自閉症の子どもをもつお母さんやお父さんからビデオテープと手紙を受け取ることに加えて,われわれは学会会場でもしばしば声をかけられました.それは,のちに自閉症やAsperger障害と診断された子どもが赤ちゃんだった頃の行動について発表したあとのことだったので,親からは「まさに私たちの子どものことについて話してくれた」と言われたものでした.そしてまもなく,多くの親が支援を必要としていることがはっきりしました.赤ちゃんに自閉症やAsperger障害の危険性があるかどうかを見極めるため,親はどのような行動が自閉症やAsperger障害にみられるかを知る必要がありました.また,なかには成長しても運動スキルの問題を持ち続ける子どもがいること,そして特定の非定型的な運動が長期間みられる場合は,自閉症と関連した神経学的障害を示す可能性があるということを理解している保育の専門家を必要としていました.

自閉症に対する考え方は自閉症団体ごとにそれぞれ矛盾があり,また,それらはしばしば相反する内容です.一方,自閉症の専門家の意見が一致するであろうと思われる重要な点として,早くから自閉症を診断し介入を始めれば,子どもの支援される機会が多くなるということがあげられます.本書が自閉症の診断アプローチの新たな扉を開くことを願っています.そうすれば,親と専門家が早期から等しく子どもを支援できるでしょう.そして,そのときにこの支援は非常に価値あるものとなるでしょう.

*1

【訳者注】EWMN表記では,時間軸におけるある時点での身体の位置を三次元上の点として表し,それを時間に沿って連続的につなげることで運動の軌道を明確にする.四肢体幹の運動の状態を線画によって表現する.


目次

序論

Chapter 1 自閉症とは

Chapter 2 対称性

Chapter 3 反 射

Chapter 4 運動発達の階段

Chapter 5 寝返り

Chapter 6 ハイハイ

Chapter 7 お座り

Chapter 8 歩 行

Chapter 9 支援を求める

結論

用語集

資料

推薦図書

参考文献

観察日誌

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索引

原著者紹介

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書籍情報

  • ISBN:9784787882158
  • ページ数:135頁
  • 書籍発行日:2014年4月
  • 電子版発売日:2025年3月26日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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