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- 摂食障害という生き方
商品情報
内容
摂食障害に正面から毅然と取り組む卓越した心療内科医である著者が、長年実践している『行動制限を用いた認知行動療法』の全貌が初めて明らかに!摂食障害に出会い、苦悩・苦闘し、その過程でこの治療法を完成するまでの研鑽や試行錯誤を含めて克明に描かれています。本書全体を通して、摂食障害という病、そしてその治療の実際を、真摯に取り組むひとりの治療者の姿を通して学ぶことができるでしょう。
序文
序文にかえて(表紙について)
摂食障害の患者さんについて筆者が抱くイメージに、グリム童話の「いばら姫」があります。いばら姫は、生まれて間もなく受けた魔女の呪いによって、ちょうど15歳になった日に糸巻き車のつむ(糸巻き)の針に刺されて、100年の眠りにつきました。お城も家来たちも同じように眠りにつき、お城の周囲ではいばらが伸びて茂みとなり、やがてお城全体を覆い隠してしまいました。美しいいばら姫のうわさを聞いて、茂みを突破してお城にたどり着こうとした王子たちがいました。しかし、彼らはいばらの中で宙づりとなり身動きが取れなくなって、悲惨な最期を遂げたということです。
摂食障害の患者さんは現実の世界を回避し、自分だけの世界にこもります。変化をおそれて日々同じことを繰り返し、精神的な成長もなく、患者さんの中で時間は止まってしまったかのようです。いばらの深い茂みは、自分を守ろうとして患者さんが周囲との間に築いた厚く固い壁のようです。それを乗り越えて、彼女のこころにたどり着き、眠りを覚まさせることは容易ではありません。
しかし、100年の歳月が流れ、いばら姫が目を覚ますべき時がやってきました。また一人の王子が現れ、これまでの王子たちがみんな悲惨な最期を遂げたことを聞かされましたが、姫に会いたいという思いを抑えることはできませんでした。王子がいばらの茂みに近づくと、そこには美しい花ばかりがあって、それらは自然に道をあけて王子を傷つけずに通してくれました。そして、王子のキスによりいばら姫はめざめました。お城も召使たちも。
摂食障害は単に病気として記述されるよりも、このような物語に例えられる方がしっくりくるところがあります。長い年月にわたる人知を超えたようなストーリーの中で、治療者は何を知り、何をすることができるのでしょうか。この物語の王子たちのように、命を落とすということまではないかもしれませんが、摂食障害の治療は治療をする自分自身が問われ、自分自身に返って来るようなところがあります。誰にとっても容易ではない、しかし望みがないわけではなく、真摯な試みがいつか実を結ぶこともある。そういうところが、筆者にとって摂食障害治療の魅力の大きな部分を占めているのではないかとも思われるのです。
2014年5月
瀧井正人
目次
序章
摂食障害という謎への手掛かりとしてのいくつかの考え方・キーワード
摂食障害という謎
摂食障害の多面性・多様性
摂食障害の診断基準
ワンポイントメモ1●神経性無食欲症の病名をめぐって
診断基準だけではわからない患者さんのあり方
20数年前の摂食障害のイメージ─ANが中心─
現在の摂食障害の病像─病像の多様化、すそ野の拡がり─
治療者による理解や態度の違い─カニは自分の甲羅に似せて穴を掘る─
摂食障害に関する基本的な考え方の不一致─「百家争鳴」、「群○、象をなでる」─
摂食障害の交通整理的な3つの類型
3つの類型の概観と主に訪れる診療科
3つの類型の問題点
3つの類型と治療
快感原則と現実原則
ワンポイントメモ2●快感原則と現実原則
『境界性パーソナリティ障害的摂食障害』における「快感原則」「現実原則」
『中核的摂食障害』における「快感原則」「現実原則」
『軽症摂食障害』における「快感原則」「現実原則」
2章
最初の5年間
九州大学病院心療内科での研修
最初に受け持った摂食障害の患者さん─他の精神疾患との関連が大きいと思われたAN男性例─
ワンポイントメモ3●オペラントとは?
治療への抵抗が大きく、中途退院となったAN女性例
優しいBNの患者さんに森田療法(?)を試みる
大学病院での研修を終え、関連病院へ出張
出張病院で出会った重症AN患者さん─『中核的摂食障害』の原型を与えてくれた女性─
鹿児島大学への国内留学
カルチャーショック
その人の人生について問いかける行動療法
筆者の初期の軌跡のまとめ
3章
九州大学心療内科に戻って出会った治療困難な患者さん達
10年にわたり10回の入院を繰り返したANの一遷延例
入院までの外来治療経過
個々の患者さんに見合った目標体重や治療枠を設定する必要性
治療の中でしなくてもいい失敗をさせることのマイナス
どのようにして実現可能で有効な治療目標や治療枠を設定するか─テーラーメイド医療─
ワンポイントメモ4●プロクルステスの寝台
『強度の強迫傾向を持つ神経症水準のAN遷延例』の病態と成因について─『強迫的防衛』と『回避』─
変化することへの不安・抵抗の大きい摂食障害患者さんに、自発的な入院を促す方法
家族への対応、家族が果たした役割について
入院治療
第I期:治療導入期
ワンポイントメモ5●再び摂食障害の在院日数について
ワンポイントメモ6●『ダメなものはダメ』『ならぬものはならぬ』という対応
第II期:変化への抵抗期
第III期:認知・態度の変容期
ワンポイントメモ7●こころから反省することの難しさ─ペナルティが有効となるための条件について─
退院後の経過
4章
摂食障害治療者のあり方について
なぜ筆者は、摂食障害の患者さんと関わり続けてきたのか?
それまでの考え方や治療との葛藤
筆者を大いに悩ませたある治療
摂食障害の治療は何によって成り立つか─言葉は、行動や身体によって裏付けられていなければならない─
再び、筆者を大いに悩ませたある治療について─『裸の王様』に教えてもらったこと─
THE LORD OF THE RINGS
フロド的態度とサム的態度の両立
5章
『中核的摂食障害』の成因
1.『強迫的防衛』と『回避』
2.『全般的、徹底的回避』
3.やせることですべてが得られるという錯覚:その形成と防衛
4.大人になることへの準備不足:固いままの花芽=『現実原則』の形成不全
5.『依存』『嗜癖』
ワンポイントメモ8●1型糖尿病への摂食障害の併発
6.自分をコントロールできない強い不安
6章
『行動制限を用いた認知行動療法』
『行動制限を用いた認知行動療法』とは
治療の原型
『行動制限を用いた認知行動療法』の生い立ちをさかのぼって
原型から『行動制限を用いた認知行動療法』へ
総論
入院治療の実際の手順と患者さんへの対応の仕方
ワンポイントメモ9●食事への介入が、摂食障害の根本的な精神病理や生き方の改善につながる
入院治療中に生じる難題や患者さんの要求に対する対応
ワンポイントメモ10●患者さんの不満への対処の意義─治療についての認識を深めさせ、現実(人生)を受け入れていく過程を支援する─
認知・行動の変容のための働きかけ
治療結果・予後について
ワンポイントメモ11●『行動制限を用いた認知行動療法』の治療結果・予後に関する研究
終章
『行動制限を用いた認知行動療法』の本質と筆者の治療者としての軌跡についての考察
『行動制限を用いた認知行動療法』は認知行動療法と言えるのか?─行動的アプローチの重視─
『行動制限を用いた認知行動療法』や治療者との関わりによる、こころの成長
封印とその解除─筆者の中での変化─
意味を考えること
まとめ
・あとがき
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書籍情報
- ISBN:9784498129689
- ページ数:250頁
- 書籍発行日:2014年6月
- 電子版発売日:2015年3月27日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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