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- 免疫難病の克服をめざして
商品情報
内容
著者 岸本忠三先生の大阪大学での講義をもとに作られており、著者のライフワークである創薬にまで結びついたIL-6の研究が語られます。
まさに研究の醍醐味ともいえる次々に語られる免疫学の発見と当事者ならではのエピソードは、免疫学に興味のある読者のみならず、研究の楽しさを知りたい読者にもお勧めの一冊。
序文
はじめに
1991年,私は大阪大学の細胞工学センターの免疫学の教授から20年ぶりに内科の教授に戻ってきました.私は最初の臨床講義に関節リウマチを取り上げました.私の著書『なぜかと問いかける内科学』(中山書店)に書かれているように,私は講義の最初に次のように述べました.
「この20年,免疫学は急速な進展をみせた.Tリンパ球,Bリンパ球の役割はコンピュータグラフィックスを見るように明らかになった.しかし20年ぶりに内科の教室に戻ってみると,関節リウマチにはいまだ金のゾルを用いるというような治療が行われている.しかし免疫のミステリーを解き明かした免疫学は近い将来,その原理原則にのっとった新しい治療法を開発するであろう」.
そしてそれからまた20年,今や関節リウマチをはじめとして炎症性自己免疫疾患の治療にパラダイムシフトが招来されています.IL-6やTNF-αの作用をブロックすることにより骨の破壊は防がれ,関節リウマチは今や治る病気になりました.数年前,私がスウェーデン王立科学アカデミーよりクラフォード賞を受賞したとき,「10年後にリウマチにより車イス生活を余議なくされる人がいなくなることに貢献した」と言われました.
100年の免疫学の進歩は発見のうえに発見が重なり,感染症の予防や治療,そしていま免疫難病の発症機構の解明と治療法の開発につながりはじめています.この著書では最初に免疫学100年の流れを概説し,その進歩のうえに立って続けてきた私のライフワークIL-6の40年にわたる研究を紹介します.
この著書は私が大阪大学生命機能研究科で大学院学生に行った大学院の講義と大阪大学医学部免疫アレルギー内科で行った臨床講義の録音を起こして作られたものです.本書は中山書店廣江久子氏の発案と彼女の尽力によって作られたものですが,残念なことに彼女はこの本の完成を待たず若くして逝去されました.彼女の早世を心よりお悔やみ申し上げるとともに,この本を彼女に捧げたいと思います.
2012年晩夏
岸本忠三
目次
1.免疫学の100年:ワクチンの開発から抗体の解明まで
はじめに
小児麻痺を撲滅したワクチン療法
ワクチンの発見---近代医学のスタート
免疫のしくみはどうなっているのか?
抗体の構造とはたらきの解明
アナフィラキシーの発見
生体は抗原の多様性にいかに対応するか?
2.免疫機構をつかさどる細胞と分子
免疫機構をつかさどるリンパ球の発見
Tリンパ球は抗体産生のヘルプと細胞性免疫の機能を担う
拒絶反応のカギをにぎる移植抗原
Toll様受容体の発見
TLRはさまざまな抗原認識に関与する
免疫系がDNAを認識するしくみとその利用
TLRによる抗原認識機構の解明とその制御がもたらすもの
3.IL-6と抗体医薬
自己免疫疾患---免疫系が自分自身を攻撃する病気
IL-6の増加と急性期タンパクの関係
IL-6が招く"抗体産生細胞のがん""
IL-6受容体の発見
IL-6が遺伝子に信号を伝えるしくみ
ウイルス増殖・発がん調節にかかわるNF-IL6
IL-6を調節するフィードバック機構
IL-6に対する抗体医薬のはじまり----ヒト化抗体の誕生
キャッスルマン病の原因---ヘルペスウイルスの関与
関節リウマチに対するIL-6受容体抗体の骨破壊の予防効果
IL-6受容体抗体がもたらすリウマチ合併症の改善
全身性特発性関節症に対するIL-6受容体抗体の臨床試験
他の自己免疫疾患へのIL-6受容体抗体の治療効果
IL-6異常産生メカニズムの解明
次世代医薬品の鍵---マクロファージを介した炎症抑制
Il-6の異常産生を制御する機構の発見
おわりに
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書籍情報
- ISBN:9784521735412
- ページ数:116頁
- 書籍発行日:2012年11月
- 電子版発売日:2015年12月4日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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