スーパー総合医 総合診療医の果たす役割

  • ページ数 : 276頁
  • 書籍発行日 : 2019年3月
  • 電子版発売日 : 2019年9月18日
10,450
(税込)
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商品情報

内容

2014年,本シリーズがスタートする際に「スーパー総合医」とは「外来から在宅医療まで,十分な経験を持ち,科にとらわれず大局的な見地で行動できるすぐれた医師」であると定義した.
シリーズ完結となる10冊目の本書では,51名の「スーパー総合医」が,自らの豊富な経験を元にさまざまな視点から,総合診療医として診療・教育・研究において果たすべき役割や今後の展望について詳述している.

序文

序にかえて

2019年春,新しい専門医制度が,混乱の中スタートした.その19番目の基本領域として,総合診療医の専門研修も開始された.本シリーズの「スーパー総合医」という命名も,この総合診療医の延長にある,最も質の高い総合診療医という意味合いだろう.しかしながら,総合診療医とは本来スーパーなものではない.あえていえば,スーパーではないところ,そここそが「スーパー」なのだ.

光が当たらない,認められない,目立たない,そういう領域で,ほめられもせず,苦にもされず,でくのぼうと呼ばれ,それにもかかわらず,長期にわたって,医療に向き合い続ける,そのことこそが「スーパー」なのである.

そんな自虐的な状態と紙一重の「スーパー」さを兼ね備えた総合診療医は,かつてたくさんいた.いたに違いない.いたに違いないというのは,そういう人には光が当たっていないので,いたことを証明することすら難しいのである.いまだに絵が一枚も売れていないゴッホのようなスーパーな画家がいる.いたに違いないといえばわかりやすい例になるだろうか.そんな画家は,ある面ゴッホより「スーパー」である.そんな状況が,総合診療医のこれまでである.

しかし,これからの総合診療医は,そうではない.光が当たってしまうのである.つまり,もはやこれからの総合診療医は,「スーパー」ではありえない.

そんな逆説の中で,「総合診療医の果たす役割」について1冊にまとめることになった.本書に登場する執筆者は,私を含め,光が当たった人たちである.光が当たった人たちが,光が当たらないところこそが「スーパー」である総合診療医について,一体何を書くことができるのか.そこではむしろ書かれないことのほうが重要なのではないか.ただ書かれないことを浮き彫りにできるのは,書くことによってだけである.

わけがわからないかもしれない.が,そのとおりだというしかない.光と影,称賛と自虐,そのはざまに身を置くことが,「総合診療医の果たす役割」を考える本書のスタートである.そして,唐突ではあるが,そのはざまを少しは表現できたのではないかという替え歌がある.なんだ,替え歌を紹介したいだけじゃないか,そう思われた人が多いかもしれない.


~(以下略)~


2019年3月

専門編集

名郷直樹

武蔵国分寺公園クリニック院長

目次

1章 われわれはどんな医者なのか?

総合診療医とは何か

実地医家とはどんな医者か

家庭医とはどんな医者か

診療所から-学術的考察を中心に

family physician(家庭医)としてのチャレンジング

診療所,介護老人保健施設での診療を通じて地域包括ケアシステム構築に貢献

私が家庭医としてこだわっていること-健康格差と健康の社会的決定要因

診療所医師としてのこれまでとこれから

地域で活躍する家庭医の研究と教育は大学から

家庭医の果たす役割と育成のための大学の役割

大学で活躍する総合診療医

アカデミック家庭医の役割

病院総合医とはどんな医者か

病院総合医の立ち位置をめぐって

日本型ホスピタリストとは-病院総合系医師の能力と役割

病院を基盤とする総合診療医

大学病院の総合外来を中心とした病院総合医-千葉大学総合診療科

病院総合医に求められるものとは

在宅専門医とはどんな医者か

在宅医療における医師の役割

在宅医療の現状と求められること

家庭医療専門医とはどんな医者か

都市型病院家庭医としての歩みと現状

地域全体の調和を目指して

中山間へき地で働く医者の場合

すべての問題に対応することで地域を支える

自治医大卒業生から-私はどんな医者か[診療所から]

めざすものは「普通の家庭医」

神島が専門の医者屋

地域に「寄りそ医」25年,地域こそがわがアイデンティティ

自治医大卒業生から-私はどんな医者か[病院から]

診察室の外で「私の8年の法則」

地域で医療を行う医者として

へき地勤務で得た教訓について

自治医大卒業生から─私はどんな医者か[大学から]

私が目指す総合診療

自治医科大学そして地域医療とともに歩んだ医師人生を振り返って

3学会合併の経緯

日本プライマリ・ケア学会とともに歩んで

地域総合医というあり方-3学会合同の議論からみえてきたこと

日本家庭医療学会と総合診療医の将来

家庭医制度が頓挫するまで

専門医としての総合診療医にいたる道のり

2章 われわれの診療

大学附属病院での診療

病院での診療-柔軟かつ多様な視点とは

診療所での診療-地域にあって取り組むべきこと

在宅での診療-患者のテリトリーに入れていただく

総合診療におけるEBMの活用

患者中心の医療の方法-「病い」はどのようにつくられたのか

家族志向型アプローチ-5段階モデルと3つの場面を意識した対応

3章 われわれの教育

大学の総合診療医と学生教育

診療所で医学生を教育する-診療参加型実習プログラムの進め方

初期臨床研修医教育における地域医療研修

日本型総合診療専門医の育成のあり方

4章 われわれの研究

臨床研究-どう実践するか

総合診療,プライマリ・ケアにおける臨床研究指導

臨床研究-質的研究の意義と実施方法

臨床研究-どのように実践しているか


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書籍情報

  • ISBN:9784521739090
  • ページ数:276頁
  • 書籍発行日:2019年3月
  • 電子版発売日:2019年9月18日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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