呼吸器疾患 診断治療アプローチ3 肺癌

  • ページ数 : 375頁
  • 書籍発行日 : 2018年1月
  • 電子版発売日 : 2018年12月12日
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商品情報

内容

呼吸器診療のスタンダードとアドバンスをきわめる 呼吸器疾患診断治療アプローチシリーズ【肺癌】編

近年の肺癌の診断・治療については,driver mutationの発見とそれをターゲットとした薬物の開発による個別化医療が注目され,めざましい進歩を遂げている.本書では薬物治療・内視鏡治療・放射線療法・手術療法・支持療法・先進医療のみならず緩和ケアや予防について,さらには治療の費用対効果についても言及.肺癌診療における最新情報を各分野の専門家がわかりやすく解説している.

■呼吸器疾患 診断治療アプローチ
① 気管支喘息 / ② 呼吸器感染症

序文

肺癌における近年の診断と治療の進歩は目を見張るものがある.診断についてはドライバー変異が次々と見つかり遺伝子診断の重要性が強調されている.遺伝子診断は,薬と紐づけされているコンパニオン診断薬,有効性を示唆する補助診断薬(コンプリメンタリー診断薬)から最近では次世代シークエンサー(NGS)を用いた網羅的遺伝子解析,いわゆるクリニカルシークエンスの時代に突入しようとしている.さらに血液診断(liquid biopsy)が臨床導入されその検査侵襲の少なさから急速に広まっている.

肺癌の治療もここ数年で飛躍的な進歩を遂げている.外科治療で特筆すべきことはCT画像所見に基づき小型肺腺癌の術式が選択されつつある点である.すなわち腫瘍内のsolid結節のサイズがより予後を反映することが明らかになり,第8版のTNM分類ではsolid結節を基準としたT因子に変更になった.また,N2症例はsingle station からbulky N2まできわめてヘテロな集団であり,N2症例に対する最適な集学的治療については意見が分かれる.

放射線治療においては呼吸同調を併用した高精度放射線治療の技術の進歩が顕著であり,小型肺癌に対する外科治療との比較試験も行われている.

進行・再発非小細胞肺癌の薬物治療に関してはここ10年の原因遺伝子の同定と阻害薬の臨床導入などにより,いわゆる個別化治療,precision medicineが多くの施設で導入されており,半年に一度,薬物治療のガイドラインが改訂されるなど進歩が早い.EGFRあるいはALK陽性の肺癌に関しては,各々EGFR-TKI,ALK-TKIが複数承認され上市されている.また,最近,腺癌の1%に陽性であるROS1 rearrangementに対してもクリゾチニブが使用可能になった.さらには,BRAFの遺伝子異常も同定され,阻害薬が使用可能になっている.これら分子標的治療薬の登場により,Ⅳ期非小細胞肺癌の予後は飛躍的に改善した.一方,これら分子標的治療薬は1年前後で耐性になることが知られ,その耐性克服は臨床的に急務である.2年前にEGFR-TKIの約半数の耐性に関与するT790M遺伝子変異に対する特異的阻害薬である第3世代のEGFR-TKIであるオシメルチニブが登場し高い臨床的有用性を発揮している.しかし同薬も1年程度で耐性となりその後の治療については一定の見解がない.

2年ほど前から進行非小細胞肺癌に免疫チェックポイント阻害薬が承認され,2次治療(ニボルマブ,ペンブロリズマブ)で高い効果を示している.さらにはPD-L1強陽性例に対して1次治療でペンブロリズマブが使用可能となった.免疫チェックポイント阻害薬は2次治療での奏効率は20%前後だが長期生存例も多くみられ5 年生存率が16%と報告されている.今後は,PD-L1以外の効果予測因子の同定が待たれるとともに,従来の殺細胞性抗癌薬や分子標的治療薬ではみられなかった「免疫関連有害事象」の対応に対して,代謝内分泌科,消化器内科,皮膚科などの多科連携の重要性も強調されるようになってきた.

新しい血管新生阻害薬であるラムシルマブもドセタキセルとの併用2 次治療で使用可能となった.しかしながら,このような非小細胞肺癌に対する目覚ましい治療の進歩が見られるのに対して,小細胞肺癌に関する治療の進歩はいまだ乏しいのが現実である.

また,緩和ケアのより早期からの導入が患者予後とQOLの向上に寄与していることも強調したい.

最後に,昨今の抗悪性腫瘍薬はいずれも高額であり医療費の高騰が問題となってなり,その対応が議論されている.

今回『肺癌』を上梓するにあたり,上記のようなテーマに沿って詳細な解説を試みた.日本を代表するオピニオンリーダーの先生方に最新の肺癌診断,治療についてご執筆いただいた.本書がこれから呼吸器科医を目指す若手のみならず専門医にとっても有用であることを期待している.


2018年1月

髙橋 和久
順天堂大学大学院医学研究科呼吸器内科学

目次

1章 肺癌の全体像と現況

肺癌の疫学

原発性肺癌の病理組織分類

原発性肺癌における遺伝子異常

原発性肺癌の病因

2章 原発性肺癌の診断

画像診断

胸部単純X線撮影

胸部CT飛野和則

アイソトープ診断

MRI

病理診断

細胞診断

組織診断

遺伝子診断

[Column] clinical sequencing

血液診断 ─ liquid biopsy

[Mini Lecture] second biopsy

診断方法

気管支鏡 浅野文祐

[Mini Lecture] 気管支鏡の最新のナビゲーションシステムについて

胸腔鏡 石井芳樹

CT ガイド下生検

超音波ガイド下生検

腫瘍マーカー

バイオマーカー

病期診断

TNM分類

3章 原発性肺癌の治療方針

治療のアルゴリズム ─ 日本肺癌学会

治療のアルゴリズム ─ NCCN

肺癌の個別化治療

[Debate] コンパニオン診断薬

肺癌の集学的治療

高齢者肺癌

併存症合併肺癌─ 間質性肺炎を中心に

oncologic emergency に対する対応

4章 原発性肺癌治療の実際

手術療法

[Column] da Vinci 手術

放射線療法

薬物療法

分子標的治療薬

殺細胞性抗癌薬

血管新生阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬

その他の免疫療法

非小細胞肺癌の1次治療

[Mini Lecture] oligometastasis

非小細胞肺癌の2 次治療以降の治療

[Mini Lecture] beyond PD

小細胞肺癌の1次治療

小細胞肺癌の2次治療以降の治療

内視鏡治療

PDT

ステント

その他の内視鏡治療

支持療法

先進医療

5章 緩和ケアとインフォームドコンセント

緩和ケアの考え方

疼痛緩和

精神的ケア

インフォームドコンセント

6章 肺癌の予防対策

肺癌検診

禁煙指導

化学予防

7章 肺癌治療の費用対効果

肺癌治療の費用対効果


付録 肺癌治療薬一覧表

付録 肺癌診療に役立つガイドラインと関連webサイト

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書籍情報

  • ISBN:9784521745275
  • ページ数:375頁
  • 書籍発行日:2018年1月
  • 電子版発売日:2018年12月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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