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- 子どもの心の診療医になるために
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内容
序文
私たち三人は「子どもの心の診療医」になることを目指し,若い頃,それぞれの思いを実現するために海外に留学した.そしてその時,期せずして三人がロンドンで偶然出会うことになったのである.お互い初めて出会ったのに,自分たちの熱い思いをいつまでも語り合ったのだった.自分と同じ志を持って海外に渡った日本人,しかも小児科医が他にも二人もいたことを知りお互いが勇気づけられ,同時にまた,心細く辛い思いをしながら海外での研修に努力しているのが一人ではないことに心強さを感じたものだった.言葉の壁や生活習慣の違いの中で研修を続けることには大きな困難があったが,私たちはお互いを支えに海外での研修をなんとか成し遂げることができた.そのことは,私たちにとって子どもの心の診療を実践する上で専門的な知識や技術の大きな基盤となっているのはもちろんのこと,私たち自身の今の診療の中で出会う困難を抱える親子を包む眼が豊かになったことにもつながっていると感じている.その数年後,井上は九州,奥山は東京,氏家は北海道に戻ったが,三人の出身地は遠くかけ離れているにもかかわらず現在に至るまでずっと親交を深め合ってきた.そしてそれぞれの思いを込めながら日々「子どもの心の診療」を実践している.
平成17年度から厚生労働省は「子どもの心の診療に関する専門的研修を受け,専ら子どもの心の診療に携わる医師」を養成する準備を始めた.この「子どもの心の診療に専門的に携わる医師」は小児科医の中からも精神科医の中らもアプローチが可能で,どちらかの診療科を数年間研修した後,「子どもの心の診療を専門的に実施している医療機関」において数年の研修を受けるシステムが想定されている.三人は基本的にこの考え方に賛成の立場である.なぜなら私たち自身が歩んできた道,そして私たちが若手を教える時の考えと同じだからである.
また,私たちはこの分野の専門医あるいは認定医制度を作ることに賛成である.なぜなら,そのような制度があれば専門的な知識と技術(と気持ち)を若手に確実に公平に伝えることができるからである.そのためには公的な専門機関を設置し,卒後専門研修を最低でも数年間有料で(有給ではなく!)厳しく教えるシステムを作る必要がある.もちろん指導者も若手の教育に十分な時間を割けるような保障が必要である.しかし,実際にこのような制度がいつどのような形でできあがるのかまったく見当がつかない.もしかすると関連学会が綱引きをしている間に雲散霧消してしまうか,形骸化したものになってしまうのではないかと心配している.
このような状況の中で一昨年の暮れに,自分たちが海外で得た貴重な経験を本という形にして,その思いを若手に伝えたいと話し合う機会を持った.実は,三人にはいくつか共通点がある.生まれ育った時代が同じなのは言うまでもないが,小児科の開業医の子どもとして育ち,小児科医・開業医とはどういうものかをよく知っていること,そして自身も小児科医になったこと,その中でも子どもの心を専門に診る分野を選んだこと,海外に留学したこと,情熱のある若手を育てたいと思っていることなどである.
この本のはじめにはまず,私たちの専門医としての道程を記述するに留まらず,その事実の背後にある私たちに共通する「子どもの心の診療医」としての構えを述べた.次いで,子どもの心の診療医を目指すために必要な基礎理論を紹介した.そして最後に,実際に私たちが日々行っている臨床経験を,実証的な理論に基づいて具体的に記載した.必ずしも誰もが海外で研修を受けられるわけではない現実を認識し,これから子どもの心の診療医を目指そうとする熱意ある若い医師にとって,この本が進むべき道を照らす明るい一筋の光となることを願うものである.
宮沢賢治は,最後まで花巻という辺地にいながら,幅広い科学知識と素晴らしい世界観を持って独自の文学世界を切り開き,日本文学界の中心となりえた.それは彼の勤勉さによってもたらされた想像力のなせる業である.詩人の高村光太郎は,このような宮沢賢治を「内にコスモスを持つ者は,世界のどこの辺遠にいても常に一地方の存在から脱する.内にコスモスを持たない者は,どんな文化の中心にいても常に一地方の存在として存在する」(高村光太郎『コスモスの所持者 宮沢賢治』)と評した.どの地にいても同じことを正しく学び,素晴らしいコスモスを持てるより多くの「子どもの心の診療医」が生まれ育つことに,少しでもこの本が役立つことを願ってやまない.
2009年 4月
たけし,まきこ,なりお
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書籍情報
- ISBN:9784525282219
- ページ数:280頁
- 電子版発売日:2011年5月31日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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