理系なら知っておきたいラボノートの書き方 改訂版

  • ページ数 : 148頁
  • 書籍発行日 : 2011年12月
  • 電子版発売日 : 2014年8月22日
3,300
(税込)
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商品情報

内容

山中伸弥博士も推薦!
「良い研究は、良いラボノートがあってこそできる」
ラボノートはなぜ必要? どこまで詳細に書けばいい? ノートに貼れない実験データはどうする? 家に持ち帰ってもOK?
などなど、なぜ書く?どう書く?がこの一冊で丸わかり。あらゆる研究者に役立つ情報が満載です。

序文

改訂版の序

初版以来4年の歳月を経て,改訂版を出す運びとなったことは著者一同の大きな喜びである.初版出版当時は,国をあげての産学官連携推進や,大学知的財産本部整備事業などの機運がますます高まりはじめた頃であった.本書は,特にアカデミアの研究者が「知的財産というものを意識して,日々の研究活動を行うためにはどのようなラボノートを書いていけばよいのか」という問いに答えようとしたものであった.主として医学・生物学系の実験ノートの例で解説したにも関わらず,物理・化学系の研究者あるいは文系の方からも参考になったという声を多くいただいた.2010 年に行ったアンケート結果をみると,ラボノートの書き方に注意を払っている人は6割を超えている(本文参照).捏造防止等の観点からも,ラボノートに関する関心度は確実に高まっていることが感じとられる.

国際的な特許制度調和への要求の高まりを受けて,本改訂版を出す直前の2011 年9月16 日にオバマ大統領が米国特許法の改正案に署名し,米国もこれまで守り続けてきた先発明主義から先願主義に移行することが決まった.この点では,初版の序で述べた,「米国の先発明主義的な体制に対する防御」という意味合いはやや薄れるかと思われがちだが,実際に施行されるのは2013 年春からの予定であり,それまではラボノートの記載による先発明の立証の必要性は厳然として存在するものと考えられる.

今回の改訂版は,2011 年度に行われた日本の特許法等改正の内容を盛り込み,それに合わせて改訂を加えている.2009 年には特許法も成立後50 年を迎え,今回の特許法等改正は近年でも比較的大きな改正になっている.詳細は本文を参照していただくとよいが,この改正の中に「共同研究等の成果に関する発明者の適切な保護」というものがある.共同研究・共同開発の成果の中で発明者を保護するものとして重要な条項と考えられ,ここでも発明者の特定にラボノートが非常に大きな役割を担っていると考えられる.この点でも,本書の重要性はますます高まるものと期待する.また,本改訂版では,これまでに著者らに寄せられた意見の中で特に多かった,「大学におけるラボノートの管理」の部分を強化し,民間企業との対比の中で解説していただいた.

初版の序でも述べたが,本書はラボノートの運用に関して,必ずしもこうでなければならない,あるいはこうあるべきであるというものを提示するものではない.良い研究は良いラボノートがあってこそできるという環境づくりに少しでも貢献できることを,著者一同切に祈っている.

最後になったが,本改訂にあたり粘り強く著者たちを叱咤激励し,よりよくするための議論にのってくれた,羊土社の望月恭彰氏,吉川竜文氏に感謝の意を表する.


2011年11月

編者を代表して
岡﨑 康司


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初版の序

"ラボノートの書き方" という本を書くに至った大きな理由は2つある.

1つは,研究成果を知的財産として扱う際のリスク管理のためであり,もう1 つは,メディアでも取りあげられる機会が残念ながら増えてしまった「データ捏造問題等」の悲劇を未然に防ぐ体制を作るためである.

本文を参照していただくのがよいが,研究成果に対する知的財産としての重要性が,わが国でも特に近年急速に高まりつつある.それに伴い,関連するトラブルも今後増えてくるであろうと予想され,それに対する防御は,特許などを基盤とする企業などで大変重大な経営課題となってきている.また,データ捏造問題に関しては研究者と研究主任との間に適切なコミュニケーションツールが存在していれば防げたかもしれない事例が散見される.このような流れのなかで日本国内でもラボノートの重要性が認識されるようになってきた.

多くの企業で導入しているラボノートの書き方とその管理方法は非常に厳格であり,自由な雰囲気を大事にしてきた大学等にそのまま導入しようとすると困難な面が多いと考えられる.しかしながら,医学・薬学・生物学等の学生の場合,その多くは製薬企業をはじめとする化学系企業の研究機関に就職することが多いのが現実であり,そのような学生諸君にとって,企業での方法や管理体制を学び,その方向に少しでも近づけた形でラボノートを書く習慣をつけることは就職活動をするうえでも大変有利になると考えられる.

本書を活用していただく際に留意していただきたい点は,ラボノートの運用に関して柔軟に取り組んでいただきたいということである.本書は必ずしも「こうでなければならない」,あるいは「こうあるべきである」と一定の書き方を強要するものではない.先発明の証拠として使うことを念頭におくようであれば,できるだけ厳格に読み取って運用していただければよいし,学生や大学院生の教育的研究活動を重視するのであれば,多少の流動性はやむを得ないと考えている.「良い研究は良いラボノートがあってこそできるものである」という環境づくりに少しでも本書が役に立っていただければ,著者一同の喜びである.

本書が,研究室において学生や大学院生を指導する立場にある教員や学生諸君にとって1つの指針となることを願っている.

1章では,政府が知財立国に向けて政策を進めてきた初期から知的財産関連の政策提言や研究・教育活動に取り組んでこられた隅藏康一氏にラボノートの意義について政策的な観点を含めて,大所高所的な話を非常にわかりやすく解説していただいた.

2章では,大学の知的財産管理体制を構築する業務を支援されている知的財産統括アドバイザーの小野寺徳郎氏にラボノートの現状につき,特に日欧米の比較の観点からわかりやすく解説していただいた.

3章では,筆者らがラボノートの書き方について,実際のラボノートを用いてどうやって書いていくかについてわかりやすく示したつもりである.

4章では,石川 浩氏より製薬会社で実際にラボノートをどのように管理しているかを,企業の立場からわかりやすく解説していただいた.このような貴重な情報を提供していただいたことに対しこの場を借りてお礼を申し述べたい.

最後に,米国特許法に耐えうるラボノートの書き方と,日本の大学等で現実的に運用されているラボノートの記載方法がかけ離れている現状があり,このギャップを埋めるような質問が多数あったため,5章として菅原哲雄氏にQ&A方式でご回答いただいた.本書を手に取られた際に,この章をざっと読んで問題点に対する認識をもったうえで,対応する章に移って読んでいただければ,理解が進むように配慮したつもりである.

今回この本を出版するにあたり,羊土社編集部の吉川竜文氏には企画からはじまり最後の校正まで大変お世話になった.ともすれば遅れがちな脱稿予定に関し根気強く励まし,さらには本書をよりビジュアル的にわかりやすくする点で多大な貢献をいただいた.これらの努力なくしては本書の完成はなかったものと思っており,この場を借りて深く感謝する.


2007年11月

編者を代表して
岡﨑 康司

目次

1章 ラボノートとは

1.ラボノートとは

2.なぜラボノートを使用するべきか

ラボノートの必要性:研究のプライオリティの証明

ラボノートの必要性:研究の公正性の証明

ラボノートの必要性:研究室におけるナレッジ・マネジメント

研究環境の変化によるラボノートの重要性の高まり

3.特許制度の概要

概論

先願主義と先発明主義

新規性喪失の例外

出願人と発明者

職務発明

誰が特許権をもつか

2章 ラボノートの現状

1.欧米におけるラボノート

2.日本におけるラボノート

ラボノートの採用動向

採用されている分野の傾向

アンケートからみたラボノートの現状

証人署名と証拠能力の高さ

3.電子ラボノートについて

欧米での状況

日本での状況

3章 ラボノートの書き方

1.ラボノートを書く前に ~道具選びのポイント~

ノートの選び方

筆記具の選び方

2.ラボノートの書き方 ~何をどう書くのか~

表紙・背表紙に書くこと

巻頭ページに書くこと

研究のページに書くこと

記載する際のその他の注意点

3.記録後に注意すべき点

上司,指導教官のチェック

使い終わったノートとノートの保管

証拠能力を高める方法

4章 ラボノートの管理方法

1.ラボノート管理が必要なわけ

管理規定が証拠能力を高める

相互引用による補完的証明

ノートは誰のものか

ラボノート使用者の範囲はどうするか

電子ラボノート(コンピュータデータ)との共存

2.ラボノート管理規定

ラボノート管理規定とは(規定の目的)

ラボノート管理規定で定めておくべきこと

誰がラボノート管理規定を策定し運用するか

3.ラボノート管理部門の役割

ラボノートの選定

ラボノート管理台帳の作成

ラボノート本体の管理

ラボノート使用者の登録:署名の登録

ラボノート使用状況の管理と定期検査

ラボノート記載内容の目録化

ラボノート関連教育

4.証人の役割

証人としての要件

証人が証明すべきこと

5.研究室の管理者(上司)の役割

好ましい研究室管理規範

ノート記載の検査・指導

研究室管理者がチェックすること

6.大学におけるラボノートの管理

大学と民間企業との違い

現行の規定を見直す

研究室における管理の実際

個人で管理する場合

知的財産教育

研究室訪問

おわりに

5章 ラボノートQ&A

ラボノート導入に関する疑問

特許が関係しないのに必要なのか

個人で使用してても意味はあるのか

大学ノートはなぜ駄目?

ノートにプライバシーはあるのか など

ラボノート使用に関する疑問

持ち出しはどこまでOK ?

証人の署名をもらうのは困難ですが...

複数テーマを抱えている場合ノートは分けるべき?

メモはOK ?

データはすべて貼るべき? など

トラブルに関する疑問

破ってしまった

誤記載はどう訂正する?

データを紛失してしまった など

COLUMN

署名は誰がすればいいか

ラボノートとプライバシー

iPS 細胞の特許をめぐって

職務発明に対する相当の対価

サインは大事

発明者とは

日米の特許法改正がもたらすもの

ルーズリーフ形式は不適切か

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書籍情報

  • ISBN:9784758120289
  • ページ数:148頁
  • 書籍発行日:2011年12月
  • 電子版発売日:2014年8月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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