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- 内科当直医のためのERのTips―ジェネラルケースのディープアプローチとエビデンス
商品情報
内容
好評本『 ERのTips』では取り上げなかった、ER特有の思考戦略についてまとめるシリーズ本の第1弾!豊富なエビデンスと臨床経験が導く、基礎からディープなレベルまでを身につけたい研修医・内科担当医へ。
序文
学生や研修が始まったばかりの研修医があまり知らない疾患群に,"分類不能症例"というのがあります.これはどのようなものかについて,少し説明が必要です.
誤嚥性肺炎は呼吸器内科に入院しません.呼吸器内科には肺がんやCOPD や喘息発作など,呼吸器に特化した患者さんが入院していて手一杯なのです.尿路感染症は腎臓内科や泌尿器科には入院しません.腎臓内科は腎臓を診る科であって尿路を診る科ではありませんし,泌尿器科は外科ですので内科的入院は得意としていませんし,明日の手術や外来で手一杯なのです.蜂窩織炎は皮膚科で入院することもありますが,皮膚科の外来患者数は非常に多いため忙しく,内科入院は得意としていません.インフルエンザは耳鼻科なのか呼吸器内科なのか判然としませんし,通常は入院する病気とは思われていません.不明熱に至ってはどの科も手を挙げません.患者さんは決まって「たらい回しにされた」とおっしゃいます.アルコール関連疾患は消化器内科が診るかと思いきや,痙攣したり不穏で暴れたりすることと,患者さんが入院しても自主退院したり,言うことを聞かない人も多く,肝不全がない限り消化器内科が喜んで入院させることはありません.これらの多くは若い人よりも高齢者が抱えることが多い疾患で,高齢者の生活背景を考慮して問題解決をすることになる疾患群です.
ある研修病院では,これらの疾患群を"ジェネラルケース"と呼んだり,"分類不能症例"と呼んで,内科当直をする研修医や若手医師が持ち回りで診るようにしています.行き場のない患者さんの行き場を作るシステムがあるのは,とても大切なことです.しかし,研修医や若手医師が,それぞれの診療科のカンファレンスでジェネラルケースを症例提示すると,「なんでこんなの診てるの」「はいはい,早く退院させてね」と言われ,上級医からまともに取り合ってもらえず,患者さんと上級医の間で板挟みになっています.上級医たちはジェネラルケースがディープに深掘りすると,奥深い空間を持っていて,若手医師を大きく成長させる症例だということに気づいていないのです.
本書はそんな上級医たちへの筆者からの挑戦状であり,若手医師へのエールのつもりで筆を執りました.
CHAPTER 1 の高齢者診療では,ER 診療における一期一会という時間的束縛の中で,危険な状態に注意を払いつつ,いかに診療を上達させるかという点に重きを置きました.筆者がこれまで見てきた,診療の達人たちのアプローチ法のエッセンスをまとめたものになったらと思っています.また腎機能や造影剤という,ER で問題になりやすい項目については特別に掘り下げてみました.
スピードを要求されるER の現場ですべてのことができるかというと,必ずしもそうではないと認識しています.ディープアプローチとスピードトラック(すばやい診療)とは,ある程度トレードオフの関係にあるためです.しかしスピードが速い人は,時間的余裕がありますからアプローチを深くすることもできるはずです.深いアプローチに慣れた人は,思考スピードが速くなるはずです.本書は引き算ではなく,深さと速さのかけ算を目指しています.
CHAPTER 2 のジェネラルケースでは,本来なら日中に感染症科や総合診療科にコンサルトしたい疾患も含まれていますが,実際に多くの病院では,まだ感染症科や総合診療科がないことと,頼れる人の少ない夜間や救急を想定して書かせてもらいました.そのため内容として重点を置いたのはER から入院当初までの初期対応になります.高度な知識を持った専門の先生方が読まれるとダメダメなところもあると思いますが,批判のタネに使ってもらいつつ,それを糧に成長できるならありがたいと思います.
またジェネラルケースについては,忙しい当直の合間に調べやすいように,それぞれの項目を単独で読んでも内容が成立するように注意を払いました.そのため重複しているところが多分にあることを認識しています.また大切なところ,陥りやすいところは何度も同じことを書いています.なんてしつこい著者なのだろうと思った方は,...その通りです.ER 診療は1 回1 回が全力勝負です.多くのER 医が経験しているようにたくさんの失敗をもとに書かれていますので,しつこい検証と認知バイアス回避に必死なのを,どうかお察しください.
なお図表の一部は,筆者が制作したスマートフォンアプリ『ER のTips』にも載っており,本書でもそこから引用しています.こちらのアプリは無償提供させていただくこととしましたので,診療現場で活用いただければと思っています.さらに,本書で使用したスライドを勉強会などで利用できるように,三輪書店さんの協力のもとPDF ファイルで提供いたします.
最後に執筆にあたって協力いただいた名古屋掖済会病院救急科の面々と写真を提供くださった柳内愛先生,小川健一朗先生,小川磨育子先生,平田智也先生に感謝します.そして膨大な量の原稿にもかかわらず,メゲずに最後まで編集いただいた三輪書店の小林美智氏と,いつも支えてくれる愛する妻と2 人の娘に感謝と敬意を表します.
平成29年 秋
著者 安藤 裕貴
目次
推薦のことば
序文
CHAPTER 1 ERの高齢者診療
01 ER診療は高齢者に学べ
02 イニシャルアセスメント
03 意識評価のコツとエッセンス
04 バイタルサインの特徴 血圧編
05 バイタルサインの特徴 脈拍編
06 バイタルサインの特徴 呼吸回数編
07 バイタルサインの特徴 体温編
08 病歴聴取のコツ 生活習慣のパターン認識
09 病歴聴取のコツ 薬剤内服歴
10 病歴聴取のコツ 家族関係の諸問題
11 病歴聴取のコツ ADLを確認しよう
12 高齢者と腎機能
13 造影剤と造影剤腎症
CHAPTER 2 ジェネラルケース
01 誤嚥性肺炎
02 尿路感染症
03 蜂窩織炎
04 インフルエンザ
05 ERの不明熱
06 アルコール関連疾患
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書籍情報
- ISBN:9784895906086
- ページ数:504頁
- 書籍発行日:2017年10月
- 電子版発売日:2018年8月24日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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