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- 「大人の発達障害」トリセツのつくりかた
商品情報
内容
患者さんの対応でうまくいかず困った経験を持つ医療者のための1冊.
発達障害の有無ではなく、「ほとんどの人は何らかの発達特性を持っている」という多様性を前提に、その特性ゆえに医療の中で困っている患者さんがいた際,医療者としてどのような支援が出来るのか,様々なシチュエーション・多職種での実践的知識を解説!
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序文
はじめに
本書は,主に入院患者さんの対応でうまくいかず,つまずき,困った経験を持つ医療者を対象とした,臨床現場ですぐに使える「大人の発達障害」の知識を具体的に解説した実践書です.私はかねてから,大人の発達障害は精神科臨床のみならず,一般臨床における隠れたテーマと考えていました.そして,2016 年に行われた第29 回日本サイコオンコロジー学会札幌大会(大会長: 上村恵一先生)で,中西健二先生と一緒に「大人の発達障害の評価と対応」をテーマとしたメディカルスタッフ向けのシンポジウムを企画・実施しました.本シンポジウムは大変盛況となり,あらためて臨床現場でのニーズの高さを確信し,以後もこのテーマに精力的に取り組んできました.
大人の場合,発達障害の特性を比較的強く持つ人でも,それによって日常生活に支障をきたすことは少ないかもしれません.ただし,ひとたび身体的不調をきたして入院すると,検査や治療など初めて経験することが続き,さらには体調の悪さや不慣れな医療スタッフとの関わり,大部屋での生活などが重なって自分のペースが保てなくなり,先の見えない不安に陥り,心理・行動面においてさまざまな問題が生じる可能性があります.
ふだんはあまり意識されませんが,われわれ医療者の頭の中には「標準的な患者像」というものが存在するようです.しかし,日々の臨床ではそこから大きく外れる患者さんに出会うことがあり,その理解に苦しむ言動は,ともすれば自己中心的のように思えてしまいます.そのようなケースにおいて,発達障害の文脈であらためてエピソード全体を眺めてみると,正しい理解や評価,そして適切な対応が見えてくることがあります.つまり,大人の患者さんの治療やケアを担う医療者が,発達障害に関する知識を持っておくことはきわめて有用と考えられます.医療者が適切な対応を行うことによって,患者さんは本来の目的である身体治療を円滑にすすめることができるのです.
ただし,すべての人は何らかの発達特性を持っていることがほとんどで,人によってその強さや内容が違うだけです.われわれ医療者にとって,対応に困る入院患者さんへの安易なレッテル張りは禁物で,「発達障害の診断をつけること・つけようとすることは,絶対にするべきではない!」というのが本書のスタンスです.また,何が苦手で何に困っているかは,患者さんによって大きく異なります.そのため,決してマニュアル的な対応に終始するのではなく,その患者さんの特性に合わせて対応を工夫することが大切です.
本書では,まず大人の発達障害に関する実践的知識と介入内容について,オリジナルの図表を豊富に取り入れてできるだけ具体的に解説しました.そして,臨床の第一線でご活躍中の先生方に全国各地からお集まりいただき,7 つのテーマについてクロストークを行い,その内容をそのまま掲載しました.豊富なご経験を持つ各職種のスペシャリストから,新しい気づきや有用なアイデアをたくさんいただきましたので,ぜひご一読下さい.また,同じくエキスパートの先生方にお願いし,大人の発達障害をテーマに渾身のコラムを書いていただきました.いずれも大変充実した内容となっており,大人の発達障害に対する視野が広がり,理解がさらに深まるものと確信しています.
「大人の発達障害」について正確な知識を持つことで,患者さんの見え方や接し方がガラリと変わる可能性があります.本書が,主に入院患者さんの対応に難渋した経験を持つ医療者にとって,その一助となれば幸いです.
2020年7月
井 上 真 一 郎
目次
第1章 知識編
1.今なぜ「大人の発達障害」が問題なのか?
2.発達障害とは?
A.発達障害の定義
B.発達障害の分類
3.ASDとは?
A.ASDの診断基準
B.自閉とは?
C.スペクトラムとは?
D.障害とは?
E.ASDの臨床的特徴
F.想像力とは?
G.こだわりとは?
H.感覚とは?
4.ADHDとは?
A.ADHDの診断基準と臨床的特徴
B.ADHDに伴う実行機能障害
C.ADHDに伴う報酬系機能障害
第2章 実践編
1.病棟スタッフとしていかにかかわるか
A.STEP 1「気づき」
B.診断はつけない
C.鑑別について
D.STEP 2「評価」
E.STEP 3「対応」
2.コンサルトする際に気をつけておきたいこと
3.コンサルトされた際に気をつけておきたいこと
4.発達障害が疑われるケースとそのアプローチ
第3章 紙上座談会
1.「対応に困るケース」についてのクロストーク
──リエゾン精神科医×児童精神科医×リエゾンナース×公認心理師
1)指示や説明が通らない患者
2)クレームが多く攻撃性の強い患者
3)急にパニックになって混乱する患者
4)感覚(痛みや音など)に過敏な患者
5)話が長くて脱線する患者
6)病状の深刻さが伝わらない患者
7)病棟のルールが守れない患者
2.「やりとりがうまくいかない医療者」についてのクロストーク
──精神科医×看護師×心理士(覆面座談会)
◇医師にみられる「IQずば抜けて高め」タイプと「ザ・自閉症」タイプ
◇医師−患者関係で問題となるのは,コミュニケーション能力
◇医師のコミュニケーション能力を周囲がサポート
◇医師にコミュニケーションの苦手さの自覚がない場合
◇医療者間でコミュニケーションがうまくいかないケース
◇看護師と発達障害
第4章 紙上研修会
▲症例ベースの紙上研修会
症例 こだわりが強く,パニックをきたしやすい患者
Column
私が「大人の発達障害」の重要性に気づいたきっかけ
『場所』から考える大人の発達障害〜様々な場所での臨床経験から〜
私が大人の発達障害で思っていること─当事者意識を持った精神科医より
4つの診断を受けた女性─治療的ではない安易な診断
診断名にとらわれない発達特性のアセスメント
発達障害診療における「私なり」の心構え
患者さんをとらえる上で大切にしていること〜「発達特性」という視点から〜
発達障害者への支援を行う中で気づくこと
「大人の発達障害」を支援する際に大切にしていること
私が妊婦さんから教わったこと
摂食障害診療を通じて,発達障害の対応について考える
医療者が知っておきたい「大人の発達障害」の実践的知識─入院患者の対応にどういかすか?
「わがままな患者」とラベリングされた人の“生きづらさ”
「大人の発達障害」さんに対して私たちが抱きやすい誤解
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書籍情報
- ISBN:9784498229204
- ページ数:150頁
- 書籍発行日:2020年8月
- 電子版発売日:2020年8月7日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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