プロフェッショナル腎臓病学

  • ページ数 : 639頁
  • 書籍発行日 : 2020年8月
  • 電子版発売日 : 2020年8月7日
15,400
(税込)
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商品情報

内容

教科書の枠を超えた最強の一冊!腎臓の構造,腎生理,電解質の基礎,疾患ごとの診療から,最新の動向まで完全網羅.今すぐ使える,一生役立つプロフェッショナルがおくる綿密な知識.近年急速に変革する腎臓病学の体系的理解が深まる,臨床現場だけでなくケースレポートや原著論文執筆,研究の際にも頼りになる必携書.
COVID-19の腎障害への対応も解説した,今いちばん必要な1冊.

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序文

腎臓病学は,複雑な学問体系である.カナダのTonelliらの分野別の患者複雑度の比較解析では,腎臓医が最も複雑な患者を診療しているという結果であった (JAMA Network Open 2018).しかしながら,それぞれの診断,治療については,それらが成立した歴史的背景と理論的根拠があり,それを正しく理解することで比較的平易にこの学問体系を理解するとともに,臨床の現場に役立てることができる.腎臓の領域では,薬の開発が遅れていることが大きな問題であった.これには,疾患の病態が複雑であることに加え,薬の開発のための臨床試験のエンドポイントに腎死というハードエンドポイントが求められていたことが大きな問題であった.しかしながら,近年学会と政府の密接な連携による検討が行われ,サロゲートエンドポイントが薬の開発のための臨床試験のエンドポイントとして認められるようになり,今後様々な薬の開発が進み,患者予後の大きな改善につながることが期待される.特に糖尿病性腎臓病の領域では新たに開発された糖尿病薬が非常に強力な腎保護作用を有することが示され,さらに腎性貧血の領域ではまったく新しい機序の治療薬が開発され,その根本原理の発見にはノーベル医学・生理学賞が授与されるなど,腎臓病学はかっつてないほど急激な進歩をみせている.

本書は,該当する項目のトップリーダーの先生方に,最新の知見を交えてわかりやすい解析をして頂いた.いずれも非常に素晴らしい内容となっており,忙しい中に貴重な原稿を作成頂いた著者の先生方に編者として心から感謝申し上げる.国際腎臓学会Research Workgroup co-chairとして,国際腎臓学会60周年である2020年に本書が出せたことも,何かの縁ではないかと思っている.また,本書は,その立案の段階から,中外医学社編集部の稲垣義夫氏,上岡里織氏に一貫してご指導いただいた.お二人のご支援なしでは発刊にこぎつけることができなかったものであり,この場を借りて深謝したい.

本書が,腎臓病学を学ぼうとする医学生・若手医師から,その体系を再度見直してさらに能力を磨こうとされている熟練した医師の皆様まで,幅広くお役にたつことを願ってやまない.


2020年7月

南学正臣

目次

I総論

A.腎臓の基礎

 1 腎臓病学の歴史 〈坂井建雄〉   

 1. 腎臓病学の前史:西洋伝統医学(18世紀以前)における腎臓の研究と腎臓病

 2.腎臓病の発見:19世紀初頭以後の病理解剖学

 3.腎臓の構造と機能の発見:19世紀中葉以後の組織学と実験生理学

 4. 腎臓病の診断・治療法の発見:19世紀後半以後の病理組織学と腎病理学

 2   腎臓の構造〈畑中彩恵子,清水 章〉 

 1.腎臓の外観

 2.脈管系

 3.ネフロン

 4.間質

 5.構造と機能

 3 腎臓の生理〈大瀬貴元〉 

 1.糸球体濾過率

 2.腎血漿流量の測定

 3.腎血漿流量と糸球体濾過率の自己制御

 4.尿細管輸送

 5.ネフロン各部位での輸送

 6.糸球体尿細管バランス

 7.対向流システム

 8.バソプレシンと水分の再吸収

 9.体液量調整に働く要素   

B.腎臓の検査

 4 腎臓病の症候と診察

 1.尿の異常

 2.浮腫

 3.皮膚症状

 4.尿毒症症状

 5 腎機能の評価方法

 1.GFR測定の重要性

 2.eGFRの推算式

 3.透析導入時期のGFR推算

 4.CKDのエンドポイント

 5.eGFR変化率のサロゲートエンドポイントとしての検討

 6.eGFR変化率の注意点

 7.まとめ

 6 腎臓に関連する内分泌学的検査

 1.腎臓と関連の深いホルモンとその過剰や欠乏が原因となる内分泌疾患

 2.腎機能とホルモンとの関係におけるpitfall

 7 尿検査〈旭 浩一〉 

 1.蛋白尿と血尿の病態

 2.検査

 8 腎臓の画像診断

 1.超音波検査

 2.X線検査

 3.CT検査(単純・造影)

 4.MRI検査(単純・造影)

 5.腎シンチグラフィー

 9 腎生検

 1.腎生検の疫学

 2.腎生検の適応

 3.合併症

 4.腎生検の相対的禁忌とハイリスクな病態

II各論

A.水・電解質・酸塩基平衡

 1 水・Na代謝異常

 1.概論

 2.低Na血症

 3.高Na血症

 2 K代謝異常

 1.概論

 2.カリウムの生体内分布と細胞シフト

 3.生体内のカリウム量の調節機構

 4.K代謝異常(1)─ 低カリウム血症 ─

 5.K代謝異常(2)─ 高カリウム血症 ─

 6.K摂取量,高/低カリウム血症の予後への影響

 3 カルシウム・リン・マグネシウム代謝異常

I.カルシウム(Ca)代謝異常

 1.概念

 2.臨床症状

 3.高カルシウム血症の鑑別

 4.高カルシウム血症の治療

 5.低カルシウム血症の鑑別

 6.低カルシウム血症の治療

II.リン(P)代謝異常

 1.概念と病因

 2.高リン血症の治療

 3.低リン血症の治療

III.マグネシウム(Mg)代謝異常

 1.病態

 2.高Mg血症の原因と治療

 3.低Mg血症の原因と治療

 4 酸・塩基平衡異常

 1.酸・塩基平衡の生理

 2.酸・塩基平衡異常

 3.代謝性アシドーシス

 4.代謝性アルカローシス

B.糸球体疾患

 5 糸球体疾患:症状,組織,病因論

 1.糸球体疾患の症状

 2.糸球体疾患の分類

 3.糸球体疾患の病因

 6 微小変化型ネフローゼ症候群

 1.発症機序

 2.症状・検査所見

 3.病理所見

 4.予後

 5.治療

 6.補助療法

 7.生活・食事管理

 7 巣状分節性糸球体硬化症

 1.概念

 2.病因

 3.疫学

 4.臨床像

 5.病理組織学的特徴

 6.治療

 7.予後 160

 8 膜性腎症

 1.膜性腎症の概念と最近の動向

 2. 膜性腎症の発症・進展機序における免疫学的機序:自己抗原に対する抗体産生

 3.IgGサブクラスと内因性抗原をめぐる話題

 4.自己抗体測定の臨床応用

 5.ネフローゼ症候群(膜性腎症)診療の現状と予後

 6.難治性ネフローゼ症候群に対する新たな治療法の展開

 9 膜性増殖性糸球体腎炎とC3腎症

 1.MPGNの病理学的特徴

 2.免疫複合体型MPGN

 3.補体関連型MPGN(C3腎症)

 4.診断

 5.治療

10 IgA腎症およびIgA血管炎(Henoch-Schönlein purpura紫斑病)

I.IgA腎症

 1.疫学

 2.病態生理

 3.診断

 4.治療

II.IgA血管炎

11 急速進行性糸球体腎炎

 1.概説

 2.ANCA関連血管炎

 3.抗GBM病,抗GBM抗体型RPGN

12 急性糸球体腎炎

 1.疫学・病因

 2.腎炎惹起性抗原と補体活性

 3.症状

 4.検査

 5.診断・鑑別診断

 6.病理所見

 7.治療

 8.予後

C.全身性疾患に伴う腎臓病

13 血管炎

 1.血管炎の概念と分類

 2.ANCA関連血管炎 (ANCA関連腎炎)

 3.結節性多発動脈炎

 4.抗糸球体基底膜病

14 ループス腎炎

 1.概念

 2.病因・病態 

 3.疫学

 4.診断

 5.組織所見・組織分類

 6.治療

 7.予後 

15 その他の膠原病に伴う腎臓病

I.関節リウマチ

 1.疫学

 2.病態

 3.薬剤性腎障害

 4.アミロイドーシス

 5.メサンギウム増殖性糸球体腎炎

 6.その他

II.Sjögren症候群

 1.疫学

 2.病態

 3.症状・検査所見

 4.Sjögren症候群による腎障害

 5.治療・予後

III.強皮症腎

 1.疫学

 2.病態

 3.予後

IV.抗リン脂質抗体症候群

 1.疫学

 2.病態

 3.症状・検査所見

 4.治療・予後

V.その他

16 アミロイドーシス

 1.アミロイドーシスの疾病概念

 2.アミイロドーシスの発症機序

 3.腎アミロイドーシスの分類と遺伝子異常

 4.腎アミロイドーシスの疫学

 5.腎アミロイドーシスの臨床的特徴

 6.腎アミロイドーシスの臨床的診断

 7.腎アミロイドーシスの病理学的診断

 8.新しい病理診断法

 9.腎アミロイドーシスの治療

17 多発性骨髄腫による腎障害

 1.多発性骨髄腫と腎障害

 2.腎障害の機序

 3.腎障害の診断

 4.腎障害の治療と予後

18 MGRS

 1.多発性骨髄腫とMGUS

 2.MGUSとMGRS

 3.MGRSにおける腎病変

19 血栓性微小血管症(HUS含む)

 1.血栓性微小血管症の病態と原因

 2.血栓性微小血管症の臨床症状と診断

 3.TMAの治療と予後

20 aHUS

 1.疾患概念・病因

 2.疫学・予後

 3.診断

 4.治療

21 IgG4関連腎臓病

 1.IgG4-RD,IgG4-RKDの疫学

 2.IgG4-RKDに認められる検査異常所見

 3.IgG4-RKDに認められる腎病理所見

 4.IgG4-RKD診断基準

 5.治療と予後

22 感染症に伴う腎疾患(HIV,MRSAなど)

 1.感染関連糸球体腎炎

 2.ウイルス関連糸球体腎炎

23 糖尿病性腎臓病:病因,症状,自然経過

 1.病因

 2.症状

 3.自然経過

24 糖尿病性腎臓病:予防と治療

 1.DKDに対する治療

 2.糖尿病性腎症重症化予防プログラム

 3.DKD発症と進展を予測するバイオマーカー

25 妊娠と腎

 1.序論

 2.妊娠による腎・血行動態に対する生理的変化

 3.妊娠高血圧腎症(PE)の診断と治療

 4.PEにおける昇圧メカニズム

 5.Catechol-O-methyltransferase(COMT)不全とPE

 6.sFlt1上昇とPlGF抑制:本当にPEの病態に寄与しているのか?

D.遺伝性腎疾患と先天性腎疾患

26 常染色体優性多発性囊胞腎

 1.概念

 2.疫学・診断

 3.病態生理

 4.進行予測因子

 5.治療

27 常染色体優性遺伝性尿細管間質性腎疾患

 1.ADTKDとは

 2.ADTKDの疫学

 3.ADTKDの病態生理

 4.ADTKDの臨床所見・検査所見

 5.ADTKDの診断基準

 6.ADTKDの治療

 7.最近の知見

28 Alport症候群とThin basement membrane disease

 1.疾患概念

 2.疫学

 3.病態

 4.分類

 5.診断

 6.治療

 7.腎予後および遺伝子型・臨床型の相関

 8.非典型的軽症XLAS男性患者の発症機序

 9.Alport症候群とTBMの境界に関する考察

29 その他の遺伝性腎疾患

I.常染色体劣性多発性囊胞腎

 1.概要

 2.疫学と予後

 3.原因遺伝子PKHD1について

 4.治療

II.Fabry病

 1.概要

 2.疫学と予後

 3.治療

III.ネフロン癆

 1.概要

 2.原因遺伝子について

 3.治療

IV.腎コロボーマ症候群

 1.概要

 2.原因遺伝子PAX2

V.PAX2関連腎疾患

30 先天性腎尿路異常

 1.CAKUTとは

 2.疫学

 3.原因

 4.症状

 5.検査

 6.治療

E.尿細管・間質性腎疾患

31 間質性腎炎

 1.定義

 2.間質性腎炎の分類

 3.病因

 4.臨床的特徴

 5.治療

 6.バイオマーカー

 7.予後

 8.特殊な間質性腎炎

32 薬剤性腎障害

 1.疫学,発症形式

 2.DKIの分類,機序と特徴

 3.診断,腎生検の位置づけ

33 尿細管性アシドーシス

 1.概念

 2.病態

 3.診断

 4.治療

34 動脈硬化に基づく腎疾患および腎血管性高血圧症

I.動脈硬化に基づく疾患

 1.良性腎硬化症

 2.悪性腎硬化症

II.腎血管性高血圧症

35 高血圧緊急症

 1.高血圧緊急症の疫学と病態

 2.高血圧緊急症の症状と診断

 3.高血圧緊急症による臓器障害

 4.緊急降圧療法

F.急性腎障害

36 急性腎障害:病態生理と疫学

 1.AKIの概念

 2.病態

 3.疫学

37 急性腎障害:診断と予後予測

 1.診断

 2.予後予測

38 急性腎障害:管理と治療

 1.AKIのリスク因子評価と予防病期によるAKI診療

 2.AKI後のフォローアップ

 3.AKI患者における輸液管理

 4.AKI患者における薬物療法(利尿薬,昇圧剤)

 5.KDIGO AKI予防バンドル

 6.AKI患者における栄養療法

39 Critical care nephrology

 1.Critical care nephrologyのこれまで

 2.Critical care nephrologyが対象とするもの

 3.Critical care nephrologyに必要なもの

 4.Critical care nephrologyにおける血液浄化療法のトピックス

G.慢性腎臓病

40 病態生理と疫学

 1.疫学

 2.病態生理

41 慢性腎臓病:診断と予後予測

 1.慢性腎臓病の診断

 2.慢性腎臓病の重症度分類

 3.慢性腎臓病の予後予測

 4.慢性腎臓病の医薬品開発におけるエンドポイント

42 慢性腎臓病:管理と治療(貧血,CKD-MBDを除く)

 1.慢性腎臓病の管理

 2.慢性腎臓病の治療

43 腎性貧血

 1.病態生理

 2.腎性貧血の診断

 3.ESAによる腎性貧血治療

 4.貧血の補正による治療利益

 5.新規ESAとしてのPHD阻害薬

44 CKD-MBD

 1.CKD-MBDの概念

 2.保存期における病態

 3.透析患者における病態

 4.CKD-MBDの管理

H.腎代替療法

45 血液透析

 1.血液透析の歴史

 2.血液透析の原理

 3.ダイアライザー

 4.透析液

 5.バスキュラーアクセス

 6.至適透析

 7.血液透析中の合併症

 8.医療経済

 9.透析見合わせ基準

 10.チーム医療

46 腹膜透析

 1.原理

 2.導入

 3.適正透析

 4.栄養管理

 5.カテーテル

 6.合併症

47 腎移植

 1.概要

 2.術前評価

 3.周術期管理

 4.移植後管理

48 血漿交換

 1.血漿交換療法

 2.適応となる病態

 3.治療条件の決定

 4.合併症

I.腎臓病学の新しい展開

49 Onco-nephrology

 1.がん治療に伴う腎障害

 2.透析患者のがん治療

50 Interventional nephrology

 1.VA(vascular access)

 2.腹膜透析カテーテル挿入

51 Palliative nephrology

 1.Palliative care,そしてpalliative nephrology

 2.Shared decision making(SDM:共有型意思決定)

 3.Conservative kidney management(CKM:保存的腎臓療法)

 4. Advance care planning(ACP:事前ケア計画,人生会議)と

   end-of-life care(EOL:終末期ケア)

 5.保存的腎臓療法実施中に生じる自覚症状と対処法

52 腎臓の再生と発生

 1.腎臓発生

 2.腎臓再生

J.COVID-19における腎障害

53 COVID-19と腎障害

 1.日本でのCOVID-19の感染拡大

 2.COVID-19とAKI

 3.腎臓病患者とCOVID-19

 4.透析患者とCOVID-19

 5.腎移植患者とCOVID-19

 6.COVID-19患者の剖検腎

 7.COVID-19患者に対するレニン-アンジオテンシン阻害薬の使用

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書籍情報

  • ISBN:9784498224629
  • ページ数:639頁
  • 書籍発行日:2020年8月
  • 電子版発売日:2020年8月7日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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