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- ブラッシュアップ急性期外科 Brush up Acute Care Sugery
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あわせて読む → ブラッシュアップ急性腹症 第2版
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序文
序
急性期外科(acute care surgery)という語彙は20世紀には一般的でなかった.扱う内容は別として,頻用されるようになったのは比較的最近と思われる.欧米ではもともと外傷外科(trauma surgery)という分野があり,trauma surgeonがいた.21世紀に入ると様々な社会事情の変化(戦争・事故など不慮の怪我の減少?),や非手術治療の選択と代替治療の台頭(IVRなど)があり,詳細な分析結果があるのかどうかも知らないが,事実として外傷手術が減った.Trauma surgeonはtrauma surgeryだけで仕事するのが困難となってきたのか? 看板のタイトルをTraumaからTrauma & Acute Care Surgeryに変えた.それとともにacute care surgeryという語が一般的になってきたように筆者は感じている.実際に急性期外科で扱っている疾患はというと,急性虫垂炎に代表されるようないわゆる“緊急手術”の対象疾患で,それ自体は外科医にとって新しいところは何もない.どこの病院でもどこの外科医でも昔から扱ってきた疾患ばかりだ.地方都市の総合病院や都市部でも専門病院ではない中規模病院で当直をするような外科医ならば,毎日のように対処しなくてはならない手術で,かけだしの若手外科医には予定手術よりもこういった緊急手術を執刀する機会の方が多い人さえいるだろう.
ところが,慣れ親しんだ疾患・手術にもかかわらず同じ疾患や病態でも病院や医者(外科医)が変われば結構その治療法は変わってしまう.いわゆる標準化が進んでいない分野の一つでもある.理由を邪推するならば,外科医は癌などの待機手術が仕事の本丸で,当直で扱うことの多い急性疾患は余力で対処しているのであって,急性期外科をメインの仕事とみなしてこなかったであろうこと.それゆえに,内容を吟味する機会が少なく,いわゆる“権威主義的”であった過去が尾をひきずって,先輩のプラクティスに疑問を感じずに追従してきたので知識がupdateされにくいというところではないだろうか.
内科に比べると外科はEBMの実践が遅れているように感じる.メインの手術技量そのものは本邦の外科は世界の中で引けをとらないばかりか分野によってはリードしている(と信じている)が,方針決定であったり,手術手技以外のマネージメントであったりに関してはかならずしも先頭集団にいるとはいえない.乳房温存術や再建術,センチネルリンパ節生検などが浸透するのは年単位で遅れたし,術前剃毛や術後の創消毒の廃止に至っては欧米に比すること10〜30年くらいの後塵を拝した.術後抗菌薬の長期使用もICTなどの外圧があって初めて適正化が進んだ.「自分(外科医)にしかできない技術を磨くことには熱心だが,誰にでもできることには無頓着」外科医である筆者が自身を揶揄するならばこんな言葉があてはまるように思う.
しかしながら時代は大きく変わってきた.世界中の情報は海外に出向くことなくインターネットを通じた様々なツールで瞬時に手に入る.エビデンスに基づかない治療や,標準治療からの逸脱は徐々に淘汰される方向に向かうだろう.筆者は急性期外科の分野は実はEBMに向いているのではないかと思っている.「緊急手術ばかりでRCTを組むことが難しいから逆ではないか?」とのご意見もあろうかと思うが,急性期外科手術は手術手技自体の難易度はかならずしも高くなく,治療の成否は術式を含めた方針決定にかかっている.多くの外科医にとって手術技術は研鑚するものであって研究する対象ではないが,方針決定や周辺マネージメントは比較研究の題材にしやすい.結果が良くなったか悪くなったかもすぐにわかるので,癌のように何年も追跡せずして得られる.今後少しずつ良いエビデンスが増えてゆくのではないかと思う.本書では中核病院で一般外科医が遭遇する急性期疾患のうち,非外傷の緊急手術として扱うことが多い疾患・病態をピックアップした.現時点でのエビデンスに言及するとともに,筆者自身の経験と意見を添えた.このようなまとめ方がいままであまりなかったので,次世代を担う若手医師・若手外科医が急性期外科の分野で悩んだ時のきっかけやヒントになってくれたらと考えている.またopen abdominal managementやTAC(temporary abdominal closure)など疾患を横断して必要な内容については参照ページが見やすいように目次に独立した項目を挙げる試みをしたので,こちらも活用していただけるとありがたい.
最期に,私の新しいチャレンジに出版という機会を与えて下さった中外医学社および五月女謙一様,出版に際して細やかな編集をしていただいた沖田英治様にこの場を借りて深く御礼申し上げます.
2020年コロナ禍の初秋に 窪田忠夫
目次
1 急性虫垂炎
1 腹腔鏡下手術の台頭
1 開腹か腹腔鏡か?
2 腹腔鏡下虫垂切除術の優位性とは?
3 腹腔鏡下虫垂切除術の問題点とは
2 限局性膿瘍形成/蜂窩織性虫垂炎に対して早期手術はしない
1 かつては虫垂炎なのに回盲部切除をしていた!?
2 限局性膿瘍形成/蜂窩織性虫垂炎は自己治癒力の結果?
3 Interval appendectomyの位置づけ
3 手術のタイミング
1 緊急手術じゃないとダメなのか?
2 そもそも手術しないとダメなのか?
4 合併症予防を目的とした処置の意義
1 腹腔内は洗わない方がいい!?
2 ドレンは不要?
3 虫垂断端は埋め込む必要はあるのか?
4 抗菌薬の使用期間
5 合併症とその対処法,その他
1 腹腔内膿瘍
2 Fecal fistula(虫垂皮膚瘻/盲腸皮膚瘻/回腸皮膚瘻)
3 Stump appendicitis(断端虫垂炎)
4 肉眼所見でノーマルの虫垂は切除すべきか?
2 小腸閉塞
1 絞扼性腸閉塞(Strangulated small bowel obstruction)
1 “絞扼を伴うCL”をどう見つけるか?
2 緊急手術は開腹手術か腹腔鏡か?
3 腸管虚血は発症から何時間まで切除しないで大丈夫なのか?
4 術中に腸管切除を要するか要さないかはどのように判断したらよいか?
5 内ヘルニアの門は必ず閉じるべきなのか?
6 絞扼を伴わないClosed loop obstruction
2 癒着性腸閉塞(Adhesional small bowel obstruction)
1 保存治療で軽快しない場合,いつまで待てばよいのか?
2 癒着剥離術は開腹か腹腔鏡か?
3 繰り返す腸閉塞は待機手術の適応となるのか?
3 癒着性腸閉塞と混同される病態
1 術後腸閉塞(Early postoperative small bowel obstruction)
2 放射線性腸炎による腸閉塞(Small bowel obstruction related to radiation enteritis)
4 将来の腸閉塞を予防するための処置の是非
1 閉腹のときに腹膜も縫い閉じるべきなのか?
2 腹腔鏡手術の方が開腹手術より腸閉塞になりにくいのか?
3 癒着防止物質について
3 大腸閉塞
1 大腸閉塞の分類
1 成因による分類
2 形態による分類
3 原因疾患による分類
2 緊急処置を要する大腸閉塞とは?
3 治療のオプション
1 大腸閉塞における手術の位置づけ
2 右側大腸閉塞の手術
3 左側大腸閉塞の手術
4 上部消化管穿孔
1 病院にやってくるのは軽症例か重症例に二分される
2 Phase 1の穿孔性十二指腸潰瘍に対する治療
1 手術か非手術か?
2 開腹手術か腹腔鏡手術か?
3 理想的な十二指腸潰瘍穿孔部閉鎖法は存在するのか?
3 通常の十二指腸潰瘍穿孔部閉鎖での対処が困難な場合
1 穿孔部が大きい(Giant perforation)場合に考えるべきこと
2 大きな十二指腸穿孔(Giant duodenal perforation)の閉鎖法について
3 胃液・十二指腸液のドレナージ法について
4 胃出口部狭窄(Gastric outlet obstruction)の対処法
5 外科的潰瘍治療(Acid reduction surgery)は必要かどうかについて
6 縫合不全の可能性を見越した処置
4 胃穿孔の場合
1 胃切除術vs大網充填?
2 大きな胃穿孔(Giant gastric perforation)の場合
5 Phase 3に対する治療
1 術前補液を怠ると大変なことになる!
2 穿孔部閉鎖のみがよいのかdefinitiveな手術がよいのか?
3 スコアリングシステムについて
6 その他の問題点
1 適切な抗菌薬の使い方は?
2 腹腔内はよく洗浄すべきだろうか?
3 耐術能が低いことを理由に非手術治療を選択することはできるのか?
4 手術でもなく従来の非手術的治療でもない第3のオプションはあるのか?
コラム1 B-IIはお嫌いですか?
5 下部消化管穿孔
1 大腸穿孔
1 基本はハルトマン手術
2 ハルトマン手術を超える標準治療はあるのか?(一期的吻合について)
3 Damage control surgeryは意味があるのか?
4 腹壁閉鎖法について
5 結腸憩室症の扱いについて
6 下部消化管内視鏡関連の穿孔に対する対処法は?
2 小腸穿孔
1 どのような原因で起こるのか?
2 穿孔部閉鎖か吻合かストーマか?
3 その他の問題
1 腹腔内洗浄の是非
2 ドレーンは留置すべきか?
3 抗菌薬治療について
4 ストーマ位置について
5 ストーマ固定について
6 ストーマのPrimary maturationについて
6 急性腸管虚血
1 急性腸管虚血(壊死)に対する手術の意義
2 腸管虚血に対する治療
1 急性上腸間膜動脈塞栓症(SMAE)
2 急性上腸間膜動脈血栓症(SMAT)
3 非閉塞性腸管虚血(NOMI)
4 急性腸管虚血に対する血管内治療
3 腸管壊死に対する治療
1 切除範囲の決定とPRO(planned re-operation)
2 壊死腸管がある場合にどのような血行再建を行うべきか?
3 小腸のほぼ全てが壊死している場合には切除すべきか? 救命を断念すべきか?
4 自施設で血管手技ができない場合の対応について
4 SMA閉塞以外の急性腸管虚血の治療
1 上腸間膜静脈血栓症(SMVT)
2 急性結腸虚血(Acute colonic ischemia)
5 その他の問題
1 手術をしないという選択,手術後に救命処置を終了するという選択
2 短腸症候群(SBS: short bowel syndrome)について
7 急性胆嚢炎
1 手術をしないという選択
1 耐術能に問題がある場合
2 重症ゆえに手術しないという選択
2 手術をする場合の問題点
1 手術のタイミング(Optimal timing)
2 Difficult gallbladderへの対処法 その1(Open conversion:適応と移行)
3 Difficult gallbladderへの対処法 その2(Subtotal cholecystectomy)
3 胆管損傷(BDI: bile duct injury)
1 胆管損傷の分類
2 胆管損傷はいつ判明するのか?(Timing of recognition/Identification)
3 術中にBDIを疑うべき状況
4 胆管損傷が判明した後のアクション
5 胆管損傷に対する外科的処置(Surgical option)
6 胆管損傷のタイプ別治療法 その1:術中に気づいた場合(BDI recognized intraoperatively)
7 胆管損傷のタイプ別治療法 その2:術後に気づいた場合(BDI recognized postoperatively)
8 胆管損傷を防ぐためのよい方法はあるのか?
4 その他の問題
1 総胆管結石
2 PTGBDチューブはいつ抜いたらよいのか?
3 内視鏡的ドレナージ
4 SILC(single incision laparoscopic cholecystectomy)の位置づけ
8 急性膵炎
1 外科が介入するポイントは?
1 大昔は“急性膵炎=手術”だった
2 手術の内容と必要なタイミングは決まっている
2 急性期のイベント:Abdominal compartment syndrome(ACS)
1 ACSに対する手術のタイミング,適応
2 減圧開腹(DCL: decompressive laparotomy)
3 一時閉腹(TAC: temporally abdominal closure)
4 ドレッシング交換のタイミングと意義
5 TACの終了時期と腹壁閉鎖法(DPFC vs Planned ventral hernia)
3 亜急性期のイベント:膵周囲貯留液の感染・仮性動脈瘤・結腸狭窄/穿孔
1 介入すべき対象の選択と時期
2 WONに対する外科的介入の考え方
3 ANCに対する外科的介入の考え方
4 Pancreatic pseudocystに対する外科的介入の考え方
5 感染コントロールのためのWONもしくはANCに対する手術の実際
6 WONもしくはPancreatic pseudocystに対する嚢胞消化管瘻作成術(Cyst-enterostomy)の実際
7 壊死物質除去は本当に必要なのか?
4 その他の亜急性期イベント
1 出血(Iatrogenic or spontaneous)
2 結腸狭窄・穿孔
3 EAF(entero-atmospheric fistula)
5 慢性期イベント
1 Planned ventral herniaと腹壁再建
2 Disconnected pancreatic duct syndrome(DPDS)
3 消化管瘻(Cyst-enteric fistula/ Entero-cutaneous fistula/ Entero-enteric fistula)
4 脾静脈血栓症・上腸間膜静脈血栓症
コラム2 外科医の資質とは?
9 上部消化管出血
1 上部消化管出血における外科の位置づけ
1 上部消化管出血に対する治療の変遷
2 手術 vs TAE
2 上部消化管出血に対する手術の実際
1 出血性十二指腸潰瘍
2 胃出血
3 その他の上部消化管出血
3 致死的出血におけるREBOAの活用
10 下部消化管出血
1 結腸憩室出血に対する手術
2 出血源不明としての小腸出血(Obscure gastrointestinal bleeding)
3 直腸出血,主に宿便性出血(Stercoral ulcer bleeding)
4 処置・手術後の出血
11 食道破裂
1 食道破裂に対する治療選択と考え方
1 基礎状態(耐術能)
2 損傷形態と全身状態
3 発症からの時間経過
4 食道破裂に対する手術の考え方
2 食道破裂の手術法 その1:胸部の処置
1 穿孔部の直接閉鎖法
2 穿孔部閉鎖の補強法(Reinforcement)
3 穿孔部を閉鎖しないというオプション
3 食道破裂の手術法 その2:頸部の処置(Esophageal diversion)
1 ループ式頸部食道瘻(Loop esophagostomy)
2 単孔式頸部食道瘻(Endoesophagostomy)
3 頸部食道瘻の閉鎖
4 食道破裂の手術法 その3:腹部の処置
1 胃液(腸液)の逆流を防止するための処置
2 空腸瘻チューブの設置
5 従来法ではない食道破裂手術
1 胸腔鏡でのアプローチ
2 腹腔鏡のみのアプローチ
<トピック:急性期外科に共通する手技と考え方>
腹腔内洗浄の意義
Tension suture(筋膜により緊張がかかる縫合法)
Retention suture(腹壁離開よる内臓脱出を防ぐ方法)
消化管穿孔後のドレーン留置
手術しないという判断(超重症? 耐術能?)
Frailtyについて
TAC(一時的閉腹法)
CSM(予定された腹壁瘢痕ヘルニアの修復法)
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書籍情報
- ISBN:9784498050488
- ページ数:302頁
- 書籍発行日:2020年10月
- 電子版発売日:2020年10月21日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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