黄斑部〈眼科診療ビジュアルラーニング6〉

  • ページ数 : 352頁
  • 書籍発行日 : 2020年12月
  • 電子版発売日 : 2021年1月22日
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商品情報

内容

ここ数年,OCT,OCT Angiographyなど検査機器の進歩によって,眼底部とくに網膜外層,脈絡膜とその毛細血管層を微細に観察できるようになり,病態の理解が進んだ.パキコロイド関連疾患など,新しい疾患の枠組みが提唱されている.本巻では,画像を満載し,これらの新知見を含めた黄斑疾患の基礎から診療の実際までをまとめる.

あわせて読む → 「眼科診療ビジュアルラーニング」シリーズ
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序文

黄斑は眼球の中でも最も神秘的な部位である.生物進化の過程で哺乳類は一度,黄斑部を失い,霊長類になり再び獲得した.ヒトの黄斑部網膜は特殊な構造をもっている.中心窩に密集した,分解能に優れた錐体視細胞に光が効率よく到達するために,網膜内層はない.網膜血管は内層に存在するため中心窩は無血管となり,血管内を流れる血球が視細胞への光の到達を邪魔することもない.抗酸化物質である黄斑色素が黄斑部を酸化ストレスから守っている.

このきわめて精巧に造られた黄斑部に病気が起こらなければよいのだが,残念ながらさまざまな黄斑疾患が生じてしまう.黄斑疾患はこの約20 年の間に病態,診断,治療とすべての分野で著しく進歩し,今もその進歩は続いている.眼科学のなかでも特筆すべき領域であろう.OCT(optical coherence tomography)は1990 年代後半に開発され,この20 年間の病態理解と診断の進歩を牽引してきた.それに並行した硝子体手術の手技・機器の進歩で治療可能な疾患が増え,さらに,2000 年代前半に登場した抗VEGF(vascular endothelial growth factor)薬は,それまでは薬物治療がほとんどなかった黄斑疾患の診療に,絶大な貢献をしている.

黄斑疾患に興味をもった私は,若い頃から疑問が生じたときにはGass 先生の『Stereoscopic Atlas of Macular Diseases』を開き解決してきた.特に1997 年に出版された第4 版が座右の書である.当然,OCT 画像はないが,眼底所見と蛍光眼底造影所見,病理所見をもとに構築された疾患概念の基本は今でも変わりないことに驚く.名著である.とはいえ,これを日常診療での知識と情報の更新のために使うことはできない.画像検査所見が診療で大きなウエイトを占める黄斑疾患では,ビジュアルに訴え効率よく情報が収集できるテキストが求められる.

『眼科診療ビジュアルラーニング』は,中山書店が長年蓄積してきた資料をサブスペシャリティごとにコンパクトにまとめ,日常診療に役立つように企画されたシリーズである.本巻も既刊同様に,“1.基礎編”で黄斑疾患を理解するための知識の整理を,“2.診断編”では主要疾患の診断ポイントを画像中心に解説した.ところどころ,トピックや歴史的背景などを“Editor’s note”として掲載した.読者の参考になれば幸いである.“3.診療編”では各疾患に造詣の深い専門家の視点で最新情報を寄せていただいた.また,本シリーズ『5.網膜,硝子体』の編集の近藤峰生先生とは目次の立案を共同で行い,内容の重複を避けながらも,一方では疾患の理解に必要な重要部分は,あえて重複を恐れずに両巻に掲載した.『5.網膜,硝子体』も参照して,さらに黄斑疾患の理解を深めていただきたい.

本巻を外来の診察机に置いていただき,診療の一助となれば編者としてこのうえない喜びである.


2020 年10 月

東京女子医科大学眼科学講座/教授
飯田 知弘

目次

1 基礎編

構造と機能

 黄斑部

 網膜硝子体界面

 黄斑部網膜厚とHenle神経線維層

 網膜色素上皮

 網膜,脈絡膜の血管と血流

検査法

 変視症の検出(Amslerチャート,M-CHART®)

 カラー眼底写真,蛍光眼底造影検査,眼底自発蛍光

 OCT, OCT angiography (石羽澤明弘)

治療法の概要

 光線力学的療法

 抗VEGF 療法

2 診断編

網膜硝子体界面病変

 網膜上膜,黄斑偽円孔

 特発性黄斑円孔

 乳頭ピット黄斑症候群

 硝子体黄斑牽引症候群

加齢黄斑変性

 軟性ドルーゼン,網膜色素上皮異常

 滲出型加齢黄斑変性/典型加齢黄斑変性

 滲出型加齢黄斑変性/ポリープ状脈絡膜血管症

 滲出型加齢黄斑変性/網膜血管腫状増殖

 萎縮型加齢黄斑変性

pachychoroid関連疾患

 中心性漿液性脈絡網膜症 (丸子一朗)

 pachychoroid pigment epitheliopathy(PPE),pachychoroid neovasculopathy(PNV) (三宅正裕)

黄斑部毛細血管拡張症

特発性脈絡膜新生血管

網膜色素線条

病的近視

 近視網膜,強度近視

 近視性脈絡膜新生血管

 近視性牽引黄斑症/近視性中心窩分離症,黄斑円孔網膜剥離

黄斑ジストロフィ

 卵黄状黄斑ジストロフィ(Best病)

 Stargardt病

 オカルト黄斑ジストロフィ(三宅病)

続発性脈絡膜新生血管 (松本英孝)

3 診療編

網膜硝子体界面病変/黄斑上膜 (井上 真)

 緑内障を併発した黄斑上膜に硝子体手術を行った症例

網膜硝子体界面病変/黄斑偽円孔,分層円孔 (土居真一郎,森實祐基)

 視力低下をきたした分層円孔に硝子体手術を施行した症例

網膜硝子体界面病変/黄斑円孔 (門之園一明)

 初回手術で円孔非閉鎖,再手術で閉鎖した黄斑円孔症例

網膜硝子体界面病変/乳頭ピット黄斑症 (平形明人)

 乳頭に網膜?離が連続する乳頭ピット黄斑症の症例

網膜硝子体界面病変/硝子体黄斑牽引症候群 (岩瀬 剛)

 急速に進行した硝子体黄斑牽引症候群に対して硝子体手術を行った症例

加齢黄斑変性/ドルーゼン (安川 力)

 加齢黄斑変性発症の注意が必要な症例

加齢黄斑変性/網膜色素上皮?離 (齋藤昌晃)

 網膜色素上皮?離で治療に苦慮した症例と治療の必要性を再考した症例

加齢黄斑変性/典型滲出型加齢黄斑変性 (小椋有貴,五味 文)

 Type1+Type2脈絡膜新生血管合併の典型加齢黄斑変性

加齢黄斑変性/ポリープ状脈絡膜血管症 (森 隆三郎)

 治療方針の異なる3 例のポリープ状脈絡膜血管症の症例

加齢黄斑変性/網膜血管腫状増殖 (大音壮太郞)

 抗VEGF 薬硝子体内注射を継続し,長期にわたり良好な視力を維持できている網膜血管腫状増殖の症例

加齢黄斑変性/pachychoroid neovasculopathy (大野晋治)

 光線力学的療法が奏効したpachychoroid neovasculopathy の1例

加齢黄斑変性/萎縮型加齢黄斑変性 (髙橋寛二)

 両眼に中心窩を含む地図状萎縮がみられた萎縮型加齢黄斑変性の症例

中心性漿液性脈絡網膜症関連/中心性漿液性脈絡網膜症 (和泉雄彦))

 マイクロパルス閾値下レーザーが有効であった中心性漿液性脈絡網膜症の1例

中心性漿液性脈絡網膜症関連/pachychoroid pigment epitheliopathy (三宅正裕)

 pachychoroid pigment epitheliopathy から中心性漿液性脈絡網膜症とpachychoroid geographic atrophy へと移行した症例

中心性漿液性脈絡網膜症関連/focal choroidal excavation(FCE) (山城健児)

 抗VEGF治療によって滲出性変化が消退したFCE

黄斑部毛細血管拡張症/黄斑部毛細血管拡張症Type1 (野崎実穂)

 抗VEGF薬治療で再発を繰り返した黄斑部毛細血管拡張症Type1 の症例

黄斑部毛細血管拡張症/黄斑部毛細血管拡張症Type2 (古泉英貴)

 全層黄斑円孔を合併した黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)Type2の症例

新生血管黄斑症/特発性黄斑下脈絡膜新生血管 (松本英孝)

 抗VEGF薬硝子体内注射が奏効した特発性黄斑下脈絡膜新生血管の症例

新生血管黄斑症/網膜色素線条 (本田 茂)

 抗VEGF療法が奏効し,視力が回復した網膜色素線条の2例

近視関連/病的近視 (長岡奈都子,大野京子)

 自然経過を30年間観察した病的近視の1例

近視関連/近視性脈絡膜新生血管 (佐柳香織)

 抗VEGF 療法を行った近視性脈絡膜新生血管の症例

近視関連/近視性中心窩分離症と黄斑円孔網膜剥離 (馬場隆之)

 内境界膜フラップを用いた硝子体手術を行った黄斑円孔の症例

近視関連/dome-shaped macula (今村 裕)

 dome-shaped macula に漿液性網膜?離を合併した症例と脈絡膜新生血管を合併した症例

近視関連/tilted disc syndrome (中西秀雄)

 治療しても黄斑部漿液性網膜剥離が再発・遷延した両眼性tilted disc syndrome の症例

黄斑ジストロフィ/卵黄状黄斑ジストロフィ (近藤峰生)

 右眼に卵黄状病変,左眼に萎縮病変を示した卵黄状黄斑ジストロフィの1例

黄斑ジストロフィ/Stargardt病 (田中公二)

 眼底自発蛍光でStargardt 病と診断した若年者の症例

黄斑ジストロフィ/三宅病(RP1L1関連黄斑ジストロフィ) (角田和繁)

 文字の見えにくさを感じながらも10年間確診が得られなかった三宅病の症例

黄斑ジストロフィ/中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ (石龍鉄樹)

 健康診断で発見された黄斑変性

特発性黄斑分離 (丸子一朗)

 発症要因のつかめない黄斑分離の症例

macular microhole (河野泰三)

 網膜外層に一部断裂がみられたが,自然閉鎖したmacular microh の症例

paracentral acute middle maculopathy(PAMM) (長谷川泰司)

 網膜中心静脈閉塞症に合併するPAMM

unilateral acute idiopathic maculopathy(UAIM) (橋本勇希,齋藤 航,石田 晋)

 Vogt-小柳-原田病と鑑別を要したunilateral acute idiopathic maculopathy(UAIM)の症例

ヒドロキシクロロキン網膜症 (篠田 啓,Seong Joon Ahn)

 15年前からヒドロキシクロロキンを服用している関節リウマチ患者にみられたヒドロキシクロロキン網膜症の症例

パクリタキセル網膜症 (片岡恵子)

 抗悪性腫瘍薬治療中に両眼の嚢胞様黄斑浮腫をきたしたパクリタキセル網膜症の1症例

タモキシフェン網膜症 (片岡恵子)

 抗悪性腫瘍薬治療中に,両眼の中心窩に空洞が生じたタモキシフェン網膜症の1例


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書籍情報

  • ISBN:9784521745152
  • ページ数:352頁
  • 書籍発行日:2020年12月
  • 電子版発売日:2021年1月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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