INTESTINE 2020 Vol.24 No.4 拡大内視鏡を極める

  • ページ数 : 126頁
  • 書籍発行日 : 2020年11月
  • 電子版発売日 : 2021年2月5日
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商品情報

内容

特集「拡大内視鏡を極める」

わが国における大腸用拡大内視鏡普及率は40%程度とされている.本号の企画担当委員はこの原因を,① シャフトの太さ・硬さによる難挿入性,② 拡大観察による検査時間の増長,③ 拡大内視鏡分類の理解・習得の難しさ,④ 指導者不足,などと考えた.これらの問題点を解決するために必要と思われる項目について拡大内視鏡を極めた専門医に解説していただくことで読者の拡大内視鏡に対する理解を深め,拡大内視鏡検査がより一般化し臨床に貢献することを目的として本号は企画された.

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序文

序説

消化器における「拡大」内視鏡の開発は町田製作所やオリンパス社により,ファイバースコープの発達とともに1960 年代後半に始まった.最初の倍率は5~20 倍程度であった.X 線診断と内視鏡診断による早期癌診断のスパイラルアップのなかで,1977 年“幻の癌”とみなされていた大腸Ⅱc 病変が発見された.筆者はこれにde novo癌としての位置づけを与えた.筆者と当時の若き同僚達は,Ⅱc 型早期癌や他の早期癌症例を検討し,“Ⅱc のpit pattern は,小類円形ⅢS pit であること”を突き止めた.さらに,実体顕微鏡での表面微細構造の観察を行い,病理組織と対応したpit pattern 分類を作成した.とくに,癌の指標であるⅤ型pit こそがこの研究の中心点であった.われわれは,確実に癌の診断を行えるように実体顕微鏡下にⅤ型pit に対応する切り出しを行い,症例を重ね,pit pattern 分類の検証を積み重ねた.他方,クリスタルバイオレットを使用しながら,当時としては初歩的であったが,拡大内視鏡への挑戦を行いつつあった.拡大内視鏡に基づくこのpit pattern 診断は,われわれの論文や大腸Ⅱc 研究会でのdiscussion を通じ,少しずつわが国に広まっていった.そして,1993 年,われわれはオリンパス社と共同し,ついに拡大電子スコープCF-200Z を世に出すことができた.しかし当初のものは,先端硬性部の長さ,径の太さや硬度の点で操作性,挿入性にまだ問題があった.1999年に登場したオリンパス社のCF-240Z は,CF-200Z の操作性,挿入性が大幅に改善され,また細径のPCF240Z も発売され,拡大内視鏡をルーチン検査に用いることにほとんど抵抗がなくなった.

内視鏡や器具の進歩,技術の向上に伴い,従来は外科手術に委ねられていたような病変も内視鏡治療の範疇に入るようになってきた.大腸腫瘍性病変に対する治療法(経過観察or 内視鏡治療or手術)を考慮するうえで,事前に病理診断を予測することは非常に重要となった.この病理診断予測(=optical biopsy)の領域で,100 倍倍率の色素拡大内視鏡検査の出現により,生体内で腫瘍表面の腺管形態に基づくpit pattern 診断学がゴールドスタンダードとなり,客観性をもって腫瘍・非腫瘍の鑑別のみならず,腫瘍の深達度診断までも可能とした1).また,Narrow Band Imaging( NBI)に代表される拡大観察を併用した画像強調観察の出現により,簡便に粘膜表層の血管や粘膜所見の評価が可能となった.しかし,NBI 拡大内視鏡分類においては国内で複数の分類が提唱され,統一分類の必要性が唱えられるようになり,吉田茂昭先生の声掛けのもと,国立がん研究センター中央病院の斎藤 豊先生が中心となって本邦の大腸拡大内視鏡専門医が結集して大腸NBI 拡大統一分類〔JNET(Japan NBI Expert Team)分類〕が2014 年6 月に提唱された2).

そして,2018 年2 月より520 倍の拡大倍率を有する超拡大内視鏡 Endocytoscopy( Endocyto,以下EC,CF-H290ECI,オリンパス社)が登場した.超高精度のoptical biopsy の実現を視野に入れた次世代内視鏡であり,リアルタイムで細胞観察を可能とする3).しかし,EC による画像の読影は内視鏡診断学と基本的な病理学的知識を要するため,外国の医師を含め大腸内視鏡検査を行うすべての医師が正しく診断できるかは不透明である.この状況を打開し,「誰でも名医」を実現するため,われわれは人工知能(AI)を用いたコンピュータ自動診断システムの研究開発に着手した.臨床性能試験を経て,サイバネットシステム社が2018 年12 月に薬機法承認を取得し,オリンパス社より大腸のEC 画像をAI で解析し,医師の診断を補助する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN®(エンドブレイン)」を2019 年3 月に国内で発売するに至った.その後もAI 開発を継続し, 病変の検出支援を行う「EndoBRAIN-EYE」,深達度診断の支援を行う「EndoBRAIN-Plus」,潰瘍性大腸炎の炎症活動性評価の支援を行う「EndoBRAIN-UC」が薬機法承認を受け,2020 年内に市場に登場する予定である.内視鏡とAI を組み合わせることで,リアルタイムでAI のサポートを受けながら大腸病変の検出,質的診断,早期癌の深達度診断などを行う時代が到来することが予見される4).

“木を見て森を見て葉を見て花を見る.そしてまた木を見る”.この多重視,複眼視が拡大内視鏡診断の根本である.筆者の内視鏡医としての基本的な考えは,視点を変換して課題によって見方を変えることである.正しいfocus の合った診断が正しい治療に結び付くのはいうまでもない.


工藤 進英
(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)

目次

特集

0序説

Editorial

工藤 進英

Shin-ei Kudo

1-1拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (1) 拡大内視鏡がなぜ必要か?

Why magnifying colonoscopy is necessary?

藤井 隆広

Takahiro Fujii

1-2拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (2) 挿入性における大腸スコープの特徴

Features of various colonoscopes

坂本 直人

Naoto Sakamoto

1-3拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (3) 構造強調と色彩強調のバランス設定

Endoscopic observation of colorectal lesions using various functions including sharpness and color

榎本 有里

Yuri Enomoto

1-4拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (4) 従来光源内視鏡/レーザー内視鏡/LED内視鏡の長所・短所

Advantages and disadvantages of conventional light source endoscopy/laser endoscopy/LED endoscopy

新村 健介

Kensuke Shinmura

1-5拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (5) フォーカスの合わせ方

How to focus the magnifying endoscope

松下 弘雄

Hiro-o Matsushita

1-6拡大・超拡大内視鏡を使いこなすためのtips & trouble-shooting(技術論) (6) 超拡大内視鏡で良好な画像を得る工夫

Tips for acquiring better endocytoscopic images

三澤 将史

Masashi Misawa

2-1拡大・超拡大内視鏡診断を極める (1) 拡大内視鏡診断のストラテジー

Strategy and art of magnifying colonoscopy for colorectal neoplasia

田中 秀典

Hidenori Tanaka

2-2拡大・超拡大内視鏡診断を極める (2) NBI診断を極める

Diagnosis of colorectal lesions using narrow-band imaging endoscopy

井上 史洋

Fumihiro Inoue

2-3拡大・超拡大内視鏡診断を極める (3) Pit pattern診断を極める

How to master pit pattern diagnostics? The associated theoretical concept

山野 泰穂

Hiro-o Yamano

2-4拡大・超拡大内視鏡診断を極める (4) 超拡大内視鏡診断を極める(AIの活用も含めて)

Diagnosis of colorectal neoplasms using endocytoscopy with/without the aid of artificial intelligence

森 悠一

Yuichi Mori

3拡大所見と病理組織診断との整合性を得るための工夫

Correlation between magnifying endoscopic and histopathological findings

河野 弘志

Hiroshi Kawano

4[コラム]非拡大観察における拡大観察でのノウハウの活かし方

Non-magnifying endoscopic observation of colorectal lesions using knowledge of magnifying endoscopy

安藤 正夫

Masao Ando

連載一覧

5-1人工知能(AI)による潰瘍性大腸炎の内視鏡画像評価の開発

Development and validation of a deep neural network for accurate evaluation of endoscopic images from patients with ulcerative colitis

竹中 健人

Kento Takenaka

TOPICS

TOPICS

5-2急性下部消化管出血における緊急大腸内視鏡検査の有用性と安全性

Efficacy and safety of early vs elective colonoscopy for acute lower gastrointestinal bleeding

新倉 量太

Ryota Niikura

TOPICS

TOPICS

6経時的変化を追うことのできたSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)with cytological dysplasiaの1例

A case of SSA/P (sessile serrated adenoma/polyp) with cytological dysplasia showing changes in endoscopic images over time

加藤 文一朗

Bunichiro Kato

第28回大腸Ⅱc研究会 Young Award

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書籍情報

  • ISBN:9784004202404
  • ページ数:126頁
  • 書籍発行日:2020年11月
  • 電子版発売日:2021年2月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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