医学のあゆみ276巻5号 糖尿病治療・研究の最前線2021

  • ページ数 : 240頁
  • 書籍発行日 : 2021年1月
  • 電子版発売日 : 2021年2月5日
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内容

糖尿病治療・研究の最前線2021
企画:戸邉一之(富山大学医学部第一内科)

・最近の糖尿病学は,病態の解明・薬剤や機器の開発,さらには療養指導法の進歩など,飛躍的に発展している.同時に高齢糖尿病の増加と老年症候群の合併,若年高度肥満糖尿病の増加など,臨床的課題は増加している.
・糖尿病の成因についてとくに発展を遂げたのは,2型糖尿病の遺伝素因の研究である.一方,基礎研究分野においては脂肪組織,骨格筋,肝臓などのインスリン作用臓器において,新たなパスウェイが明らかになってきた.
・最近の糖尿病の成因,糖尿病に対する考え方,診断技術,新たな薬剤などあらゆる分野において,糖尿病の研究や治療が日々進歩している様子を本特集から実感していただければ幸いである.

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序文

はじめに

戸邉 一之

富山大学医学部第一内科


2021年はインスリン発見から100年にあたる年であり,糖尿病に携わる医師・研究者だけでなく,広く医学に携わる者にとって記念すべき年である.これまでの糖尿病学の進歩を振り返り,今必要なイノベーションとは何かを考えるのによい機会である.

最近の糖尿病学は,病態の解明・薬剤や機器の開発,さらには療養指導法の進歩など,飛躍的に発展していFる.同時に高齢糖尿病の増加と老年症候群の合併,若年高度肥満糖尿病の増加など,糖尿病をめぐる臨床的課題はますます増加している.

2型糖尿病はインスリン分泌低下の遺伝素因のある者が,高脂肪食・運動不足のエネルギー過剰の状態によりインスリン抵抗性が生じ分泌能を超えた段階で高血糖を発症する.糖尿病の成因についてとくにめざましい発展を遂げたのは,2型糖尿病の遺伝素因の研究である.日本人を含む東アジア人40万人規模のゲノムワイド関連解析(genome wide association study:GWAS)により,東アジア人のインスリン分泌低下の遺伝素因は欧米人と大きく異なることが判明した.

一方,基礎研究分野においては脂肪組織,骨格筋,肝臓などのインスリン作用臓器において,新たなパスウェイが明らかになってきた.同様に,膵β細胞においてもブドウ糖刺激によるインスリン分泌のパスウェイのみならず,インクレチンのシグナルの観点から新たなメッセンジャーが発見されてきた.さらに,全身の代謝を統合する臓器としての脳,そして脳を介した臓器相関という新しい分野が開拓された.メタボローム,エピゲノム解析,シングルセルRNA-seqなどの新しい解析法が開発され,全体像の理解に役立ってきている.

一方,糖尿病に関する偏見や差別(スティグマ)がある現状を直視し,糖尿病患者のよりよい人生を社会的に支援する活動(アドボカシー)も日本糖尿病学会,日本糖尿病協会,行政の活動により進められている.

診療面では,1型糖尿病において血糖安定化や重症低血糖を防ぐデバイスについても進歩が著しい.長らく肥満2型糖尿病はその治療に難渋してきたが,SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の登場と高度肥満症に対する外科治療も加わり選択肢が広がった.

最近の糖尿病の成因,糖尿病に対する考え方,診断技術,新たな薬剤などあらゆる分野において,糖尿病の研究や治療が日々進歩している様子を本特集から実感していただければ幸いである.

目次

糖尿病に対する新しい考え方

インスリン発見の歴史 堀田饒

スティグマとアドボカシー 田中永昭・清野裕

CGMの進歩と応用 小出景子

新しいインスリンポンプ療法 廣田勇士

ビッグデータを活用した研究 杉山雄大

『糖尿病診療ガイドライン2019』食事療法改訂のポイント 宇都宮一典

肥満2型糖尿病と肥満外科(減量・代謝改善手術) 龍野一郎

コロナ禍における糖尿病診療 山﨑真裕・福井道明

基礎研究

インスリン分泌機構――糖尿病の膵β細胞におけるGタンパク質シグナル変換の意義 髙橋晴美・他

膵β細胞量調節の分子機構 西山邦幸・他

膵島の発生 氷室美和・綿田裕孝

GIPによる脂肪量の制御 山根俊介・稲垣暢也

2型糖尿病におけるグルカゴン分泌異常 北村忠弘

肝臓における“選択的インスリン抵抗性”の分子機構 窪田直人・他

骨格筋によるインスリン抵抗性の調節 岩部真人・他

糖尿病とサルコペニア 野村和弘・他

白色脂肪組織とマクロファージ 桑野剛英・戸邉一之

褐色脂肪細胞 脇裕典・山内敏正

臓器間神経ネットワークによる代謝制御機構 菅原裕人・片桐秀樹

アディポネクチン受容体作動薬 岩部美紀・他

アディポネクチンの新しい作用 喜多俊文・下村伊一郎

腸内細菌叢と糖尿病 藤坂志帆・戸邉一之

【トピック】

SGLT2阻害薬の登場により見えてきたケトン体の功罪 久米真司・他

骨格筋組織再生を対象としたシングルセルRNA-seq解析 小池博之・大石由美子

長鎖ノンコーディングRNAによる血糖調節機構 松本道宏・長沼孝雄

2型糖尿病および肥満におけるDNAメチル化の最新知見 橋本貢士

成因研究

劇症1型糖尿病――irAEを含む 橘恵・今川彰久

1型糖尿病に対する免疫修飾療法の可能性 中條大輔

合併症

糖尿病性腎臓病に対する内因性保護的因子としてのオートファジーの役割 北田宗弘・古家大祐

日本糖尿病学会(JDS)と日本循環器学会(JCS)による合同コンセンサスステートメント 荒木栄一

糖尿病性神経障害――早期診断への期待 姫野龍仁・他

糖尿病とNAFLD/NASH 建石良介

糖尿病とがん 納啓一郎

糖尿病と認知症 鈴木亮

糖尿病と骨合併症 竹内靖博

妊娠糖尿病のマネジメント 荒田尚子

治療法

糖尿病の予防治療における食事療法と運動療法の統合効果に関する大規模医療データエビデンス 曽根博仁

薬物療法――総論 吉岡成人

これからのインスリン治療 土方麻衣・弘世貴久

心不全治療薬としてのSGLT2阻害薬 今村輝彦

DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬の適正使用のポイントと使い分け 窪田創大・他

イメグリミンの作用機構とポジショニング 植木浩二郎

サルコペニアを合併した糖尿病性腎症の治療 金﨑啓造

【トピック】

糖尿病患者の余命 後藤温

1型糖尿病の移行期医療 黒田暁生・松久宗英

糖尿病診療での動機づけ面接 村田千里

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書籍情報

  • ISBN:9784006027605
  • ページ数:240頁
  • 書籍発行日:2021年1月
  • 電子版発売日:2021年2月5日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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