特集
The 体幹－進化する技＆理論－

特集編集：西良浩一（徳島大学教授）

思い起こせば2007～2008年頃と記憶しています．私が発育期腰痛治療にはタイトハム克服がカギであり，ジャックナイフストレッチを提唱し始めた頃，盟友・金岡恒治先生が，早稲田で体幹コアの研究を開始していました．筋トレの金岡・ストレッチの西良とニコイチのようにいわれていたのが懐かしい．今思えば，体幹コアで腰部スタビリゼーション，ジャックナイフで骨盤・股関節モビリゼーション．Joint by Joint Theory に準拠した考えを10年以上前から実践していたわけです．

時は流れ，時代は令和．体幹業界の理論はますます進化し，加えて技も格段な深化をきたしています．本特集号では，私・脊椎スポーツドクター視点から見た進化した理論として1）コントロロジー，2）ダイアゴナル，そして，3）モーターコントロールを取り上げました．業界では当たり前に行われているこれらの理論が，整形外科，スポーツ医学の現場にはまだまだ浸透していないと感じています．

これらの重要な理論を理解するために5項目の総論を用意しました．最もBasicである解剖．ここでは体幹筋群の解剖と骨盤底筋，さらにダイアゴナルにつながる筋・筋膜スリングに分けて解説しています．そして体幹エクササイズの基本概念であるJoint by Joint Theory．最後の締めは呼吸．呼吸の理解なくしてコントロロジーやモーターコントロールの理解は深まりません．

さて各論は，体幹サイエンティストが最近提唱されている理論を中心に構成しました．まず，Pilates・コントロロジー．業界では当たり前に指導されているアイソレーションとインテグレーションでは，個々の動きをアイソレートし，良い動きを教育，そして個々の良い動きをインテグレートします．また，エロンゲーションとアーティキュレーションで障害 functional spine unitを保護して，それ以外を可動させます．腰痛治療にも腰痛予防にも欠かせない技と理論です．次はダイアゴナル．つまり対角線の理論です．すべてのパフォーマンスは単純な伸展・屈曲運動や，単独の回旋運動ではありません．ほとんどのパフォーマンスは対角線に相当する筋群がactivateされています．このダイアゴナルを理解し運動療法に組み込むことで最高のパフォーマンスを引き出せます．総論に続き，各種スポーツパフォーマンスでのダイアゴナルの実際を解説していただきました．各論最後はモーターコントロール．モーターコントロールはコントロロジー，ダイアゴナルにもつながる体幹技の総集編と考えます．まず，モーターコントロール総論の理解と，一歩進んだシナジー理論．そして，評価・予防・術後への応用へと解説が進みます．

The 体幹－進化する技＆理論－．各業界のトップランナーが執筆した最先端の知識が満載です．今回紹介する理論は，まだまだState of the Art の領域であると思われますが，本号をきっかけに日本中でこの理論が実践されれば，State of the Science の領域となると確信しております．Art からScience へ期待の膨らむ特集号です．

体幹を制するものは腰痛を制する．

国民病といわれる腰痛を体幹運動療法で克服する重要な一歩となった特集号と自負しております．ぜひ熟読し体幹プロフェッショナルになっていただきたい．