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- ケースでわかるリウマチ・膠原病診療ハンドブック~的確な診断と上手なフォローのための臨床パール
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内容
あわせて読む → 本音で語る!リウマチ・膠原病治療薬の使い方
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序文
序
リウマチ・膠原病の診療はまさしく日進月歩である.しかし,それにもかかわらず,依然として本邦の臨床現場には欠けているものが多く,旧態依然と感じられることも事実である.論文や,定評のある教科書(例えば“Kelley and Firestein’s Textbook of Rheumatology” など)を紐解きつつ,適切な指導者のもとで多くの患者の診療にあたることのできる環境が,残念ながら稀であることも一因かと思われる.
内科の1ジャンルとして「リウマチ・膠原病診療」を捉えた場合,以下の特徴があげられる.
1.同一の診断名であっても臨床経過は多彩である
2.炎症という切り口で全身臓器(筋骨格・皮膚軟部組織を含む)にアプローチできる
3.外来診療のウェイトが大きい
4.患者のプライマリ・ケア医の役割を兼ねることもある
5.関節注射以外,特有の手技に乏しい
これらの一つ一つを魅力に感じる医師もいるだろうし(リウマチ科にようこそ!),逆に「難しさ」「割り切れなさ」を感じる医師もいるかもしれない.
例えば,「SLE」という診断名がついていても,ある患者はネフローゼ症候群で苦しみ,ある患者は難治性の皮疹(SLE の和名「紅斑性狼瘡」は,狼に噛まれた傷跡のような皮疹〔狼瘡〕に由来する)に悩まされる.若年女性を襲う疾患であり,患者は口に出さなくても結婚・妊娠・出産ということをライフプランの一部として描いているはずだ.
リウマチ科医は,患者のこうした悩みの近くにいて,疾患によって歪められたライフプランを最小限の処方薬と生活指導によって「元のラインに戻す」ことを使命としている.
本書は,リウマチ・膠原病の専門医を志す初学者が定評ある教科書に取り組む前の「入門書」として,あるいは近接分野の専門医や総合内科医が「症例ベースで」リウマチ・膠原病診療を理解するための実践書として書かれている.
臨床経過がさまざまであることは,個々の患者への画一的アプローチが存在しないことを意味しており,すなわち論文や教科書ベースでの独習を難しくしている要因であると思われる.これを「具体的な症例をもとに概説するテキスト」があれば,少しは学習のハードルが下がるのではないだろうか,と考えたことが,本書企画の端緒である.帝京大学ちば総合医療センターのリウマチ科は,2011年に設立され,千葉内房一帯のリウマチ・膠原病診療を担ってきた.他の歴史ある施設と比較すると圧倒的に短い年月ではあるが,一著を成すにあたって十分な症例の蓄積が得られたため,現在・過去の当科スタッフとともにハンドブックとしてお届けすることができたしだいである.
このハンドブックの向こうには,当科スタッフとともにそれぞれの疾病と戦った個々の患者の人生があることは間違いない.
日進月歩の分野を扱う書物の制限として,完全に最先端の情報を網羅できているわけではない.むしろ,一歩引いたところから「賞味期限の長い情報」を盛り込むように努めたが,主たる分類基準やガイドライン・治療推奨については収載を避けられなかった.関節リウマチの治療推奨を例にとっても,米国・欧州・日本の各学会が競い合うように数年ごとのアップデートをくり返しており,あっという間に記載内容が古びてしまうのが現状である.読者ご自身で記載内容の「鮮度」をご確認いただければ幸甚である.
本書の企画段階から完成まで,主として編者の多忙と怠慢によって,制作予定を大幅に遅れることがしばしばであったが,羊土社の杉田真以子様には忍耐強い励ましをいただいた.特記して感謝したい.
2021年1月
帝京大学ちば総合医療センター
第三内科学講座(血液・リウマチ)
萩野 昇
目次
序【萩野 昇】
Color Atlas
略語一覧
Part1 総論編
1 膠原病・リウマチ性疾患の診察【萩野 昇】
何を診るか:seeとobserveの間/炎症性か否か/まず手からはじめよ/肘・肩の診察/頭頸部の診察/下半身の診察
2 検査値の読み方【坂上沙央里】
炎症反応/自己抗体
3 関節穿刺・吸引【前田淳子】
関節穿刺・吸引の目的/関節液の性状評価/使用薬剤について/実際の手技
4 画像検査【鈴木翔太郎】
① 単純X線写真
単純X線写真はどう活用すべきか?/慢性関節炎・関節痛の鑑別/RAにおける頸椎病変とX線写真/RAの進行度の確認
② エコー
エコーを使う前に/エコーをどんなときに使うか?
③ MRI
④ FDG-PET
5 治療薬の使い方
① ステロイドの使い方【萩野 昇】
リウマチ・膠原病治療におけるステロイド/ステロイドの作用機序と臨床的効果/ステロイド使用のポイント/モニタリングと副作用の予防/実際の使用例
② 免疫抑制薬の使い方【坂上沙央里】
メトトレキサート(MTX)/カルシニューリン阻害薬/アザチオプリン/シクロホスファミド(CY)/ミコフェノール酸モフェチル(MMF)/その他の免疫抑制薬
③ 生物学的製剤・小分子標的化合物使用の考え方【萩野 昇】
使用にあたっての基本事項/個人的印象を含めた総括
Part2 疾患編
1 関節リウマチ【萩野 昇】
疾患概念/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体所見/検査所見/鑑別診断/分類基準/治療
2 リウマチ性多発筋痛症(PMR)【萩野 昇】
疾患概念/臨床症状/病歴聴取・身体診察のポイント/検査値のみかた/鑑別診断/治療
3 脊椎関節炎【德永健一郎】
疾患概念/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体診察のポイント/検査値のみかた/分類基準/鑑別診断/治療/合併症
4 結晶誘発性関節炎【篠﨑美樹子】
痛風性関節炎
疾患概念/臨床症状,病歴聴取・身体診察のポイント/検査のみかた/診断/鑑別診断/治療
CPPD結晶沈着症(偽痛風)
疾患概要/臨床症状(偽痛風発作)/診断/治療
5 全身性エリテマトーデス
① 総論【押川英仁】
疾患概念・疫学/臨床症状と病歴聴取・身体診察のポイント/検査/診断(分類)基準/治療
② ループス腎炎(LN)【下郡 佳】
疾患概念/臨床症状・検査所見/診断/治療概論
③ NPSLE【宮本真由子】
疾患概念/病態生理/診療の進め方/難しい状況/治療
④ 抗リン脂質抗体症候群(APS)【竹之内盛志】
疾患概念/臨床症状/抗リン脂質抗体(aPL)とは/分類基準に含まれる3つの検査/治療の実際/予後
6 シェーグレン症候群【德永健一郎】
疾患概念/病歴聴取・身体診察のポイント/疑う契機/検査値のみかた/診断/鑑別診断/治療/合併症
7 血管炎
① 大型血管炎(高安動脈炎,巨細胞性動脈炎)【竹之内盛志】
高安動脈炎
疾患概念/臨床症状と診察のポイント/検査のみかた/診断/鑑別診断/治療/合併症
巨細胞性動脈炎(GCA)
疾患概念/臨床症状と診察のポイント/検査のみかた/診断/鑑別診断/治療/合併症
② 結節性多発動脈炎(PAN)【竹島雄介】
疾患概念/臨床症状/検査の進め方/診断/治療
③ ANCA関連血管炎(MPA,GPA,EGPA)【竹島雄介】
疾患概念/疫学/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体診察のポイント/検査値のみかた/診断基準/治療(寛解導入療法)/合併症
④ IgA血管炎【村中清春】
歴史,疫学,病態生理/臨床症状/病歴聴取のポイント/鑑別疾患と鑑別のポイント/分類基準/治療/予後および経過観察
⑤ ベーチェット病【副島裕太郎】
疾患概念/臨床症状・検査所見/分類・診断基準/治療
8 全身性強皮症(SSc)【村中清春】
概要:全身性強皮症とは/疫学/臨床症状:臓器別症状と病態/診断/検査および臓器別評価/臓器病変の特徴とフォロー方法,治療/肺高血圧症(PAH)
9 炎症性筋疾患【鈴木翔太郎】
疾患概念/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体所見/検査所見/鑑別疾患/分類基準/治療
10 成人スティル病【服部周平】
疾患概念/特徴的な臨床症状・身体所見/病歴聴取・身体診察・検査のポイント:鑑別診断/分類基準/治療/合併症
11 骨粗鬆症【本田 学】
疾患概念/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体診察のポイント/検査値のみかた/鑑別診断/診断・薬物治療開始基準/治療
12 IgG4関連疾患【德永健一郎】
疾患概念/特徴的な臨床症状/病歴聴取・身体診察のポイント/検査値のみかた/分類基準/鑑別診断/治療
13 その他
① 自己炎症症候群【副島裕太郎】
疾患概念/疾患各論〜診断・治療のポイント
② 再発性多発軟骨炎【副島裕太郎】
疾患概念/臨床症状・検査所見/治療
Part3 ケース編
Ⅰ 診断が困難なケー ス
1 不明熱・不明炎症へのアプローチが困難【萩野 昇】
診断までのストラテジー/リウマチ・膠原病を疑うきっかけ
2 熱が出てANCA陽性ならANCA関連血管炎か?【山口裕之】
“不明熱”として現れるAAV/ANCAの測定方法〜p/c-ANCAとMPO/PR3-ANCA/ANCA陽性となりうる病態の鑑別診断
3 診断困難な多関節炎【鈴木翔太郎】
ウイルス性関節炎/このようなCaseをみたら…/多関節炎を呈する注意すべき細菌感染症/播種性淋菌感染症/結晶性関節炎/RAでない“慢性多関節炎”
4 くり返す単関節炎(慢性単関節炎)【鈴木翔太郎】
慢性単関節炎の鑑別疾患/慢性単関節炎のマネジメント
5 ステロイド抵抗性のリウマチ性多発筋痛症(PMR)【村中清春】
PMRの鑑別ストラテジー/鑑別疾患各論
6 It’s not lupus!(SLEの類似病態)【下郡 佳】
着目ポイントとストラテジー/Lupus mimickers/ヒトパルボウイルスB19(PVB19)/実際の戦略
7 皮膚筋炎・多発筋炎「以外」を疑うケース【村中清春】
筋炎,筋症状から鑑別疾患を再考する/疾患別各論
8 強皮症は必ずしも全身性強皮症とは限らない【永幡 研】
診断までのストラテジー/皮膚硬化を来す疾患の鑑別
9 側頭動脈に炎症があるが“側頭動脈炎”ではない【萩野 昇】
診断までのストラテジー/リウマチ・膠原病を疑うきっかけ
Ⅱ 治療が困難なケース
1 非常に活動性の高いRA【下郡 佳】
総論/実際の選択肢を考える/その他心がけること
2 妊娠希望のRA診療【平原理紗】
妊娠希望の患者診療/RAと妊孕性/疾患活動性のコントロール/薬剤選択/すべての妊娠希望の患者でMTXの使用を避けるべきか
3 肺障害のあるRA【横地律子,根井雄一郎】
着目ポイントとストラテジー/治療や対応の実際
4 腎障害のあるRA患者の治療【四茂野恵奈】
腎機能が低下したRA患者へのストラテジー/腎機能低下RA患者への抗リウマチ薬の使い方
5 End-stage RA【前田淳子】
End-stage RAに対してリウマチ科医ができること/骨粗鬆症/リハビリテーション/内服ステロイドの減量/心血管疾患(CVD)リスクの低減/炎症が残存している部分への抗リウマチ治療/ヘルスメンテナンス
6 担癌患者のRA診療【平原理紗】
RAと悪性腫瘍リスク/悪性腫瘍が判明したら/周術期管理/悪性腫瘍切除後のRA治療/化学療法中のRA診療/終末期患者のRA診療
7 慢性感染症のあるRA【村中清春】
ウイルス性肝炎(HBV,HCV)
HBV(B型肝炎ウイルス)/HCV(C型肝炎ウイルス)
非結核性抗酸菌(NTM)
疾患概論/肺NTM症を想起すべきとき/診断/治療
8 予後不良型ループス腎炎の治療戦略【横地律子】
着目ポイントとストラテジー/治療や対応の実際
9 中枢神経ループス【坂上沙央里】
概要・疫学/いつ疑うか/臨床症状/リスクファクター/診断/鑑別すべき疾患/治療
10 劇症型抗リン脂質抗体症候群【萩野 昇】
抗リン脂質抗体症候群(APS)/CAPS〜thrombotic storm
11 膠原病と妊娠【副島裕太郎】
総論/抗SS-A抗体陽性例での対応/抗リン脂質抗体陽性例での対応
12 再発をくり返す小血管炎【竹島雄介】
再燃リスクと吟味点/どう対応するか?
13 難治性の高安動脈炎【山口裕之】
着目ポイントとストラテジー/初期治療/再発時の治療戦略/治療導入後のフォローアップ/その他の治療
14 皮膚筋炎に合併する急速進行性間質性肺炎【德永健一郎】
着眼ポイントとストラテジー/検査の解釈と治療の実際/今後の課題やフォローアップ
15 全身性強皮症に合併する間質性肺炎【德永健一郎】
着眼ポイントとストラテジー/治療や対応の実際/今後の課題やフォローアップ
16 強皮症腎クリーゼ【永幡 研】
診断までのストラテジー/治療/予後
17 進行期の全身性強皮症
① 指尖部潰瘍【永幡 研】
診断までのストラテジー/治療
② 消化管障害【宮本真由子】
診断までのストラテジー/治療や対応の実際/フォローアップ
Ⅲ 治療合併症の起きたケース
1 RAに合併する急性間質性肺炎 〜ニューモシスチス肺炎か,MTX肺炎か,それとも?【横地律子,根井雄一郎】
着目ポイントとストラテジー/画像所見/治療や対応の実際
2 MTX関連リンパ増殖性疾患【山口裕之】
着目ポイントとストラテジー/MTX-LPDの疫学/臨床像/診断/MTX-LPDへの対処/MTX-LPDの予後/MTX-LPD発症後のRAの治療薬
3 ステロイド骨粗鬆症(GIOP)【下郡 佳】
GIOPの着目ポイント/GIOPの病態/評価方法/実際のマネジメント/治療
4 シクロホスファミド(CY)の副作用(妊孕性・発がん性)【竹島雄介】
シクロホスファミド(CY)使用にあたって/妊孕性の低下/悪性腫瘍の発症
5 TNF阻害薬の副作用【坂上沙央里】
短期的に/中長期的に/比較的幅広い期間で/長期的には
Ⅳ 予防を検討するケース
1 ニューモシスチス肺炎(PCP)予防【村中清春】
HIV関連PCP(HIV-PCP)と非HIV関連PCP(non HIV-PCP)の違い/PCP発症リスク/リウマチ性疾患ごとのPCPリスク/免疫抑制薬ごとのPCPリスク/既存肺疾患のPCPリスク/PCP早期診断:予防戦略の1つとして/予防のための薬剤/ST合剤予防投与の副産物
2 ワクチン【村中清春】
はじめに〜ワクチン概論/ワクチン各論/リウマチ性疾患各論/薬剤各論
Ⅴ 社会的な問題があるケース
1 RAの活動性が高く生物学的製剤の適応だが費用を支払えない【德永健一郎】
着眼ポイント/対応の実際/その他考慮したい点
2 通院困難例【平原理紗】
通院困難な場合の対応/在宅医療の利点と課題/RAにかかわる社会保障制度/RA患者に在宅医療でできること
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書籍情報
- ISBN:9784758118903
- ページ数:544頁
- 書籍発行日:2021年2月
- 電子版発売日:2021年3月10日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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