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- 臨床スポーツ医学 2015年7月号(32巻7号)判断に迷う野球肘
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内容
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序文
判断に迷う野球肘
-診断・治療の指針を示す-
特集編集:柏口新二
(JCHO 東京新宿メディカルセンタースポーツ・健康医学実践センター)
野球肘という言葉は野球関係者や医療関係者だけでなく,一般社会でも広く普通に使われている.しかし言葉の意味する内容は人によって異なり,曖昧模糊として,時に誤解による対応の間違いから残念な結果になることがある.野球肘やリトルリーグ・エルボーは肘の外傷・障害の総称であり,特定の疾患や障害を指す診断名ではない.野球肘を体系化して理解するためには,しっかりとした視点や尺度をもって見ていく必要がある.
今回,著者の先生には野球肘の理解や対応のなかでトピックスとなっているいくつかの問題について,異なる視点や立場からそれぞれの解釈や考えを述べて頂いた.どちらが正しいかという争いではなく,何が不明なのか,どの点が異なるのかを浮き彫りにすることを目的とした.不明で未解決な問題には敢えて指針を示すのではなく,不明であるという事実と現時点での見解を述べて頂いた.5 年後,10 年後に新たな事実が見つかり,解決するかもしれない.その時には本特集で述べた見解が違っているかもしれないが,間違いを恐れて曖昧な表現にならないようにした.
骨化完了前の野球肘で多くの問題を有する障害は離断性骨軟骨炎である.病態,治療そして予防における問題点とその対応策についての意見を集約した.検診により早期に発見されれば保存的に治癒することが多いが,いかに安静を守っても治らない症例もある.また発見が遅れて病巣が広範になってからではいかなる手術でも関節症性変化の進行を食い止めることができない.内側上顆障害についても,高分解能MRI の導入で投球に対する生理的反応や骨化障害から骨端軟骨損傷や裂離骨折までさまざまな病態が存在することがわかってきた.治療は正確な病態診断に基づき,固定の是非を判断するという考え方が主流を占めるようになった.
骨化完了後の野球肘で日米のトピックとなっているのは内側側副靱帯に関わる問題である.治療としてはトミー・ジョン手術に代表される靱帯再建手術が多く行われている.メジャーリーグでは投手の9 人に1 人が再建手術を受けているという事態で,「手術を受けると球速が上がる」という迷信も広がっている.また再建手術の適応が中・高校生にまで低年齢化する傾向があり,社会問題になっている.投げられない理由は痛みか不安定性か,痛みの病態は何か,再建術以外の治療法はないのかなどの未解決の問題が山積している.
野球生命に関わるもう一つの野球肘は骨硬化型の肘頭疲労骨折である.難治性で手術が必要となることが多く,また術後の再発も多く,固定材料の選択や方法に問題がある.そして再発予防や復帰のためのリハビリテーションでは身体機能の改善と投球動作への介入が不可欠となる.内側側副靱帯損傷と肘頭疲労骨折の保存的対応については,現場で選手を指導している専門家2 名に注意点とポイントを紹介して頂いた.
目次
特集
野球肘とは何か-さまざまな視点からみる-/柏口新二
野球肘検診の普及-産官学連携の役割とその取り組み-/帖佐悦男
[離断性骨軟骨炎への病態に即した対応]
保存的対応か手術かの選択/岩堀裕介
広範型病変への対応/正富 隆
いつから,どのように投球を許可するか/菅谷啓之
上腕骨小頭骨軟骨障害という病態/松浦哲也
[内側上顆障害への病態に即した対応]
一発外傷への対応と慢性外傷への対応/山崎哲也
保存的対応-固定の適応と期間-/鶴田敏幸ほか
[内側側副靱帯不全への病態に即した対応]
実質および近位付着部の外傷・障害/古島弘三
遠位付着部の外傷・障害/宮武和馬ほか
[肘頭の過労性骨障害]
肘頭骨端線閉鎖不全の手術治療-術式や固定材料の選択-/紙谷 武ほか
肘頭疲労骨折に対する治療方針と課題/河﨑賢三ほか
[投球動作への介入]
野球肘の現場復帰のマネジメント-投球負荷選択の基準-/能勢康史
ピッチングコーチによる動作介入/吉田篤史
研究発表
肩前方不安定症の病態評価におけるテーブルテスト(脱臼不安感の定量評価法)の有用性-relocationの有無によるテーブル角の変化の特徴- /藤井康成ほか
Current Contents
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書籍情報
- ISBN:9784011003207
- ページ数:112頁
- 書籍発行日:2015年7月
- 電子版発売日:2021年6月18日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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