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- 低Na血症―体液・水電解質異常の臨床とその理解
商品情報
内容
低Na血症の歴史から近年解明が進む疫学・病態生理,新規治療薬トルバプタンなど最新の知見や,鑑別が難しく,原因によらない対応が必要な高度低Na血症へのアプローチまで具体的に解説.翻訳なのに読みやすい!これまでの臨床マニュアルと一線を画す本質的理解を促す1冊.
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序文
監修のことば
今回,「低Na血症―体液・水電解質異常の臨床とその理解」の巻頭言を寄稿させて頂くことは大変に光栄であり,この本をまとめ上げられた監訳者の志水英明先生,椙村益久先生,冨永直人先生の3先生に出版に際しての祝福の言葉を伝えたく思います.
本書は低Na血症と言えば頭に浮かぶような世界中の著名な臨床家・研究者が全員集合して執筆した「低Na血症の辞書」とも言うべき豪華な内容となっています.通読するには少し内容や量が多すぎるきらいがありますが,ポイント・ポイントにおいて該当部分を読むことで,その部分に関しては漏れのない知識が得られるようになっています.さらに日本語訳の担当者の布陣もこれまた豪華です.日本の低Na血症,電解質異常を臨床と研究面でリードされてきた石川三衛先生,内田信一先生,小松康宏先生,山村由孝先生などの大御所から,新進気鋭の若手まですべてがこの領域における臨床あるいは研究で一流の方々ばかりです.
日本語訳は往々にしてやや意味が違っていたり,不明瞭であったりすることも多いのですが,本書はそのようなものが一切ありませんし,本書は通読というよりも興味のある該当章をその都度読むという性質を考えれば,非常に読みやすい書籍となっています.
本書は単なる臨床でのマニュアル本ではなく,教科書・辞書ですので,内容はかゆい所に手の届く網羅的なものになっています.その意味では臨床医であっても,単に臨床現場で一読するだけでなく,時間のある時に読み進めたいと思わせる,非常に好奇心・興味をそそられる構成となっています.特に,低Na血症の歴史,近年解明が進む疫学・病態生理,新規治療薬トルバプタンやガイドラインの整備により活気づいている治療などは最新の知識が満載であり,臨床医であっても研究に進むきっかけにもなるのではと思うほどです.
一方で,このような網羅的な読み物の弱点は,鑑別の難しく,まずは原因によらない対応が必要な高度低Na血症への実地臨床対応面の記載がわかりにくくなることだと思われます.個人的には第4章16節(低Na血症の診断アプローチ)の存在がその弱点を補う形となっており,全読者はこの節は一読すべきと考えます.
いずれにしても,本書はこれまでの臨床マニュアル本と一線を画す重厚な低Na血症の教科書であり,本疾患にいつも悩まされている臨床医や,病態解明に熱意を持つ研究医の双方が満足できる良書であることは間違いなく,より多くの先生方に一読頂ければ幸いです.
2021年8月
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 教授 柴垣有吾
監訳のことば
低Na血症は,日常臨床で最も頻繁に遭遇する水電解質異常であると同時に,診断および治療に関して苦慮することも多い水電解質異常です.これは,研修医のみならず経験を積んだ医師に至るまで同様ですが,臨床に直結し,疑問を解決してくれるような日本語の書籍はなかったように思います.そのような中で,2005年に中外医学社から「より理解を深める!体液電解質異常と輸液」という医学書が出版され,腎生理学に基づきながらも臨床に直結しているという点において,他の書籍とは一線を画すものでした.その後,その最良書に影響を受けたと思われる多くの医師により,日常臨床においてすぐに活用できるようにまとめられた書籍が多く出版されるようになり,診療上,より機能的になっていることと思います.
その一方で,それらの書籍のほぼすべてが制限のある頁数の中で,水電解質異常(Na,K,Cl,Ca,P,Mg)のみならず,その他の多くの項目に関しても記載しているため,1つ1つの水電解質異常に関する深みを感じづらい状況になっているのも事実かと思います.また近年,低Na血症に関する論文数が著しく増加しており,低Na 血症の病態や生命予後への関与の解明が進展し,臨床的および学術的な低Na 血症への関心の高まりを反映しているものと考えられます.
そのような現状を受け,「低Na血症に特化した,何か良い医学書はないものか?」とAmazonで調べていた際,幸運にも“Disorders of Fluid and Electrolyte Metabolism:Focus on Hyponatremia”に邂逅しました.Karger社より出版されて間もない時であり,すぐに取り寄せて読んでみると,様々な観点から低Na血症に関して記載されており,そしてその深みのある内容を受け,「是非ともこの医学書を翻訳したい」という気持ちになりました.また原著の監修者が,低Na血症に関するU.S. expert panel recommendationsの筆頭・責任著者であり,また世界的な教科書であるWilliams Textbook of Endocrinologyにおいて下垂体後葉,バソプレシンの節の著者であるJoseph G. Verbalis先生であったことも,原著を翻訳するにあたって,十分な信頼をおくことができた大きな理由でもありました.そしてこの度,訳書である「低Na血症−体液・水電解質異常の臨床とその理解」の出版に至った次第でありますが,新型コロナウイルスのパンデミックが発生する直前の2019年11月に開催された米国腎臓学会ASN Kidney Weekに参加した際,ワシントンD.C. のとあるbarにて,Verbalis先生に日本語の訳書を計画している旨お伝えしたところ,「本気で言っているの」とは仰りながらも,嬉しそうな表情をされたことも,本書を出版するにあたっての更なる励みになりました.
本書の出版に際し,この新型コロナウイルス禍において特にご多忙な中,快くお引き受け下さった翻訳担当の各先生方,監修の柴垣有吾先生,監訳の志水英明先生,椙村益久先生に,この場をお借りし,心より深く感謝申し上げます.そして,中外医学社の上岡里織氏,桑山亜也氏のお二方の昼夜問わずのご尽力がなければ本書は出版できなかったであろうことを,最大限の謝意とともに,申し添えます.
本書によって,低Na血症に興味を持たれる多くの方々が,その深みを少しでも感じられ,臨床とその理解につながるのであれば,それ以上の喜びはありません.
2021年8月
監訳者を代表して 冨永直人
目次
はじめに
1.低Na血症の歴史 <石川三衛 San-e Ishikawa>
CHAPTER 1 低Na血症の病態生理,疫学および有害事象
2.水分恒常性維持の病態生理 <磯部清志 Kiyoshi Isobe,内田信一 Shinichi Uchida>
3.低Na血症の原因と疫学 <小松康宏 Yasuhiro Komatsu>
4.低Na血症の臨床像と死亡との関連性 <藤沢治樹 Haruki Fujisawa>
5.低Na血症と骨量減少,骨粗鬆症,骨脆弱性および骨折 <椙村益久 Yoshihisa Sugimura>
CHAPTER 2 低Na血症の主たる要因〜診断および治療〜
6.不適切抗利尿症候群(SIAD)による細胞外液量正常低Na血症 <冨永直人 Naoto Tominaga>
7.糖質コルチコイド欠乏症と低Na血症 <青谷大介 Daisuke Aotani>
8.細胞外液量減少低Na血症 <座間味亮 Ryo Zamami>
9.肝硬変と細胞外液量増加低Na血症 <龍華章裕 Akihiro Ryuge>
10.心不全と細胞外液量増加低Na血症 <末永祐哉 Yuya Matsue>
11.低Na血症の過補正と有害事象 <上原温子 Atsuko Uehara>
CHAPTER 3 低Na血症の従たる要因〜診断および治療〜
12.脳外科疾患と低Na血症 <尾関俊和 Toshikazu Ozeki>
13.担がん状態と低Na血症 <松浦友一 Tomokazu Matsuura>
14.薬剤誘発性低Na血症 <谷澤雅彦 Masahiko Yazawa>
15.運動誘発性低Na血症 <宮内隆政 Takamasa Miyauchi>
CHAPTER 4 低Na血症の治療〜追加事項〜
16.低Na血症の診断アプローチ:適切な検査が行われているか? <志水英明 Hideaki Shimizu>
おわりに
17.低Na血症の研究の展望 <山村由孝 Yoshitaka Yamamura>
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書籍情報
- ISBN:9784498123960
- ページ数:172頁
- 書籍発行日:2021年10月
- 電子版発売日:2021年10月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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