ACL損傷・再建術－レビューとアップデート－

スポーツ外傷の中で，ACL損傷は受傷頻度が比較的高いことに加え，高い確率で手術（再建術）が必要となること，また術後競技復帰までのリハビリテーションに長期間を要し，復帰後の再損傷も少なからず発生することから，アスリートやメディカルスタッフにとって大きな問題であり，以前から本誌でもしばしば取り上げられている．近年，いろいろなソースを通じて多くの情報が得られるようになっているが，そういった状況の中で，過去に検証，報告されてきたエビデンスを正しく理解したうえで，新たな知見を得ることの重要性が高まってきている，と感じている．これらの点を考慮して，本特集号は「レビューとアップデート」という副タイトルをつけ，各領域の第一線において指導的立場で活動されている方々にご寄稿をお願いした．

まず「ACL損傷予防」のパートは，ACL損傷予防をテーマにして，これまでの文献上の報告のレビューと予防トレーニングの立案や効果について，記述していただいた．そして次の「ACL再建術」のパートでは，ACL再建術を取り上げ，多くの臨床経験をお持ちの医師に，これまでの報告をレビューしていただくのと同時に，ご自身のこれまでの経験や最新の知見について述べていただいた．

引き続く「ACL再建術後の評価」のパートでは，ACL再建術を行った膝をどのように評価するかについて，いくつかの異なった側面から情報提供をしていただいている．再建術が，その目的である正常の解剖や機能の再現を達成できたかどうかの検証には，ここで紹介された多面的評価が必要と考えている．

最後の「ACL再建術後の競技復帰と問題点」のパートでは，各スポーツ種目別に，再建術後，競技復帰までのリハビリテーションや復帰基準，そして本手術の最大の問題点である再損傷をいかに防止するかについて，それぞれの種目別に第一線で活躍されている皆様に記述していただいた．種目特性に応じたリハビリテーションの要点や問題点が，わかっていただける内容だと思われる．

ACL損傷はスポーツの現場でメディカルサポートにあたるスタッフにとって，いまだに多くの課題を提供し続けるテーマである．本特集号が，読者の皆様の知識と実践のレベルアップにつながる一助となることを期待している．また，それぞれの原稿では，文末に多くの重要な文献がリストアップされているので，読者の皆様には，それらの参考文献にも目を通すことで，より一層知識を深めていただけるはずである．最後に，ご多忙な中，ご執筆の労をお取りいただいた著者の皆様に深く感謝の意を表する次第である．

特集編集：吉矢晋一（西宮回生病院顧問）