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- 失敗に学ぶ外科症例 東京ベイ外科MMカンファレンス実況中継
商品情報
内容
学会発表や出版物は成功体験を中心に話が進むことが多く、現場では、本当に知りたい「うまくいかなかった」情報はなかなか手に入りにくい状況です。
東京ベイ・浦安市川医療センターの外科では、月に2回、M&Mカンファレンスで、経験した症例のうちマネージメントに失敗した症例を取り上げながら、情報共有し、そこからの学びをまとめ、皆で深めています。
本書は、東京ベイ・浦安市川医療センターのM&Mカンファレンスを「症例提示」「カンファレンスの総括」「Dr.窪田のコメント」の順で、実況中継風に紹介~ポイント解説した構成で、現場目線がしっかり盛り込まれた内容となっています。
外科のうまくいかなかった症例を知ることにより、現場で注意できるようになり、また、より良い判断が下せるようになります。
序文
巻頭言
どのような仕事でも失敗の上に成功があるはずなのですが、とかく成功体験が華々しく語られます。一方で、失敗については語ることがタブー視されたり、時に情報が共有されずに同じ失敗を繰り返し招くことがあります。
医療においては、こうした事態を防ごう、減らそうという取り組みがあり、米国のレジデンシープログラムでは「M&M(mortality and morbidity)カンファレンス」が必須項目となっています。本邦では、2018年からの新専門医研修で、内科や救急科を中心にM&Mカンファレンスを取り入れるプログラムが増えてきましたが、外科系プログラムではまだまだなじみがあるとは言えません。しかしながら、外科は手術という侵襲度の高い治療がメインなだけに、他科にも増して大きな合併症が起こり得る科ですので、M&Mカンファレンスの意義はより大きいはずです。
こうした中、2012年から始まった東京ベイ・浦安市川医療センター外科専門医研修プログラムでは、開始当初から現在まで足掛け12年にわたってM&Mカンファレンスをメインコンテンツとして継続してきました。本書ではこの私どもの取り組みを紹介してみようと思います。内容は外科なのですが、どの科のプログラムにとっても参考になる構成としていますので、これから自施設でM&Mカンファレンスを開催してみたいと計画している、特に若手指導医の方々、あるいは実体験として合併症を経験した若手外科医の方々が知りたいと思う情報を満載しました。
企画が動き始める前は自身の臨床経験での失敗談をまとめた本を書いてみるつもりでしたが、個人の経験を語るより12年間の私どものプログラムでの成果を紹介し、批判的評価も含めて広く知っていただくほうが意義があるだろうと考えました。
書名で「実況中継」と称していますが、これは臨場感を伝えたかったのでつけました。個々の事例については、モデルケースはあるものの原則的にフィクションです。実際のディスカッションのエッセンスを残したまま、内容がわかりやすく、教育的となることを心掛けて編集しました。加えて、米国医療でM&Mカンファレンスを実践している町 淳二先生、私どもよりもはるかに前から国内でM&Mカンファレンスに取り組んでいらしてきた寺澤秀一先生、徳田安春先生に、その神髄を語っていただきました。M&Mカンファレンスが何であり、実践するにはどうしていけば良いのか、本書を手に取っていただければ、漠然としていたものがリアルな映像として浮かんでくるはずです。
2020年春から始まったコロナ禍では、リモートワークの利便性を学ぶと同時に、実際に対面することの重要性も再認識しました。2023年秋、コロナへの対応も一つの区切りをつけようというこの時期こそ、顔と顔を突き合わせての議論を再開する時期ではないでしょうか。
この度、東京ベイ外科でのM&Mカンファレンスを本にするという私の思いつきにご賛同いただき、かつ多大なお力添えをいただきました金芳堂様、ならびに編集いただきました西堀智子様、河原生典様にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
2023年秋
窪田忠夫
目次
第1章 M&Mカンファレンスとは?
1 カンファレンスの目的
2 カンファレスの意義
3 カンファレンス対象例の決め方
4 カンファレンスの役割と基本ルール
1 全参加者
2 ファシリテーター
3 プレゼンター
4 アテンディング
5 2~4以外の参加者
5 カンファレンスの流れ
1 開催の宣言
2 症例提示
3 失敗原因の解析と問題点の発見
4 文献に基づく検討
5 今後、同様の症例についての予防策
6 感想、まとめ、take home message
7 評価
6 カンファレンスの開催頻度、時間など
7 カンファレンス参加義務について
8 カンファレスをどう活用していくか?
第2章 M&Mカンファレンス実況中継
PART1 診断
症例1 疾患は一つとは限らない(胃軸捻転+食道穿孔)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例2 入院時の方針へのこだわり(絞扼性腸閉塞)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例3 「絞扼性腸閉塞後の下血はよくあること」で済ませて大丈夫?(消化管出血)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例4 コンフリクトはなぜ生じる?(総胆管結石症)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
PART2 術式
症例1 病歴聴取が手術の成否に影響する?(放射線性腸炎)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例2 治療の優先順位は?(肝硬変臍ヘルニア手術後の出血)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例3 引き出しの数は足りていますか?(穿孔性十二指腸潰瘍/膵液瘻)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例4 急がば回れ(ストーマの選択)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
PART3 手術手技
症例1 スキルアップの落とし穴(総胆管損傷)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例2 外科医の心拍数が上がる時(出血:肺切除)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例3 術後早期の異常の原因はどう考えるべき?(術後腸閉塞)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
PART4 治療方針
症例1 上部消化管穿孔、手術? それとも保存的治療?(八木秀祐)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
症例2 その対処法で大丈夫?(脱水)
1 症例提示
2 カンファレンスの総括
3 Dr.窪田のコメント
第3章 実臨床におけるM&Mカンファレンスの実践と活用
1 アメリカのレジデンシーにおけるM&Mカンファレンスの実際
2 日米のM&Mカンファレンスの経験と国内の現状
1 私のM&Mカンファレンス経験
2 かつての沖縄でのM&Mカンファレンス
3 東京ベイ・浦安市川医療センターでのM&Mカンファレンスに触れて
4 沖縄でM&Mカンファレンスを導入しようとするが……
5 マイアミでのM&Mカンファレンス
6 再び沖縄へ
7 私の思うM&Mカンファレンスの利点
8 国内の現状
3 救急医療とM&Mカンファレンス
1 医療において失敗から学ぶことの意義
2 失敗からの学びをM&Mカンファレンスとして行うことの意義
3 救急医療におけるM&Mカンファレンスの実際
4 M&Mカンファレンスで患者・家族への対応も教える
4 卒後臨床研修におけるM&Mの意義と活用法
1 背景
2 M&Mの目的
3 M&Mの実際と効果
4 M&Mのピットフォール
5 M&Mの例と進め方
あとがき M&Mカンファレンス、過去、現在そして未来
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書籍情報
- ISBN:9784765319690
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2023年11月
- 電子版発売日:2023年10月16日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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