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- 看護における危機理論・危機介入 第5版
商品情報
内容
2004年に初版が出版されて以来、改訂を重ねている人気シリーズ待望の第5版。ここ数年はコロナ禍やはげしい地震・豪雨災害などで重大な喪失を伴う危機状況を様々な形で体験することが多く、危機理論・危機介入の重要性がますます高まっています。
本書は、臨床のあらゆる場で危機的状況にある患者やその家族に接する看護師のために、危機理論の概説から危機介入までのプロセスをわかりやすく解説した入門書です。
Ⅰ~Ⅳ章では危機理論を学び、患者をみるプロセスの中での危機理論の概説、医療現場での危機状況、危機モデルと危機看護介入などを解説しています。Ⅴ章では危機に関する理解や関心をさらに深め、実践につなげられるような事例を紹介しています。
看護学生、新人看護師、臨床の現場で患者の危機的状況に遭遇、危機介入するベテラン看護師にとって、危機看護介入の指標を示す1冊となっています。
序文
まえがき
危機モデル・危機介入について私が学んだのは,ミネソタ大学に留学した際の1974 ~ 76年である.当時,アメリカでは危機・危機介入がはなやかな時代で,あちこちに危機センターがあり,看護界では,新しい看護の到来ということで看護の基礎教育でも,大学院教育でも,盛んにとりあげられていた.当時いわれていた新しい看護とは,手(技術)や口(コミュニケーション)で行う看護とは異なり,看護者の全体(存在)で行う看護ということで,看護師の人間的豊かさ,感性の鋭さ,哲学的学びや価値,信念の重要性が強調されていた.
私は,大学院で,Finkの危機モデルを中心に,その根底にある哲学,人間観,健康観,看護観などについて学んだ.そして,さまざまな事例を分析して危機介入を検討し,実際に臨床でデータを収集し,危機看護介入モデルを作成し,またそれを検討して一連のコースを終了した.看護学を究めるとはこういう学びのことをいうのだろうと感動し,まさに自分のすべてを投入して広く,深く,多くのことを学んだすばらしい経験だった.
あれから30年近くたったが,多くの看護師たちとの学びや大学院生とのゼミ・研究で,危機モデルを通して得た患者,家族の見方や危機看護介入に関する深まりと広がりは,とどまるところがないように思われる.今では,看護学生のほとんどの教科書で危機,危機介入についてとりあげられ,看護の学会や研究会,卒後研修会などでも本テーマがあたりまえのようになり,看護の一つの分野として定着してきている.
1995年の阪神大震災やサリン事件では,多くの看護師たちが危機介入に関してめざましい働きをされた.これら二つの出来事のような,また最近の池田小学校(大阪)事件のような特殊な出来事・事件による突然で急激かつ重大な喪失による危機については,初期介入として,看護師の働きかけは非常に重要であるが,多くの場合,ひきつづき専門家による長期の援助が重要となると思われる.
危機介入について,Jacobsonらは,一般的アプローチと個別的アプローチの二つのカテゴリーに分けて述べている.一般的アプローチとは,予期した死別や,大手術を受けること,未熟児を出産することなどのような出来事から引き起こされる危機への共通したアプローチである.一般的アプローチは,このような出来事から引き起こされる危機には一定の確認される行動があるという前提のもとに,危機がたどる特有な経過に焦点を置いて,短期間で危機を適応の方向に解決していくように働きかけることである.したがって,このような働きかけは精神衛生の専門家以外の援助者,つまり看護師などによって行われるものである.一方,個別的アプローチは,一般的アプローチに対応しないような特殊なケースの場合に,専門家が危機状況にある個人の精神内界の過程などを評価しながら,解決を図るように時間をかけて働きかけることである.
看護師が行う危機介入は,Jacobsonらのいう一般的アプローチである.看護師は施設内・外どこで働いていても,また,いつでも危機的状況にある患者・家族に遭遇するので,危機的状況に敏感に反応し,すみやかにかかわれるように,感性を磨き,こころを配り,知的・技術的に準備を十分に整えておくことが重要であろう.そして,必要なときには,すみやかに適切な専門家に委ねられるよう,経験を大切に積み重ね,判断力を高めておくことが大切である.
本書の構成はI章からV章に読み進めることで,理解や応用が深まるようにした.I章では危機理論の発展の背景と危機全般について把握できるようにし,II章では,危機に関連の深い喪失,悲嘆,不安をとりあげ,危機および危機看護介入の理解が深まるようにした.III章では医療の場で危機を引き起こす要因を集約して具体化しやすいようにし,IV章ではこれまでに理解したことを基盤に,危機に陥った人の回復に向けての危機看護介入に用いられるフィンクとコーンのモデルと,危機に陥る危険性の大きい人の問題解決的アプローチに用いられるアグィレラとムースのモデルをとりあげ活用しやすいようにした.そしてV章ではそれらが実際にどのように活用されるか事例で説明した.
本書は医療の場で活躍している看護師や看護学生が,危機状況にある患者やその家族の危機看護介入に,最善を尽くすのに役立てていただければこの上ない幸せである.
本書をまとめるにあたって,長年にわたり多くの学びや示唆をいただいた,さまざまな研修・研究会などでご一緒した看護師や看護教師の皆さま,また大学院のゼミ・研究などで議論を深めた院生の皆さまに心から感謝を申し上げる.最後になったが,本テーマに大きな関心を寄せ本書の出版を勧めて下さった金芳堂の柴田勝祐社長,および企画から製作までご尽力をいただいた編集部三島民子,営業部野村誠の三氏に厚くお礼申し上げる.
2004年5月
小島操子
目次
Ⅰ章 危機とは
1. 危機理論の発展
1 理論的基盤
2 危機に関する研究
2. 危機の特徴と危機看護介入
1 危機の定義
2 危機の特徴
3 危機看護介入
3. 発達的危機と状況的危機
1 発達的危機
2 状況的危機
Ⅱ章 喪失と危機
1. 危機をもたらす喪失
1 愛の喪失
2 性役割の喪失
3 自己観の喪失
2. 喪失と悲嘆
1 正常な悲嘆
2 病的な悲嘆
3 予期的悲嘆
3. 不安と危機
1 不安の特徴
2 不安の緩和による危機回避
- 1) 洞察による不安の緩和
- 2) 鎮静・安楽による不安の緩和
- 3) 予期的心配・指導による不安の緩和
Ⅲ章 医療の場で危機を引き起こす要因
1 危機を引き起こす出来事
2 出来事のうけとめ
3 ソーシャル・サポート
4 コーピング(対処)
- 1) 対処規制
- 2) 防衛機制
Ⅳ章 危機モデルと危機看護介入
1. 危機モデルとは
1 危機モデル
2 危機の問題解決モデル
2. フィンクの危機モデル
1 危機のプロセス
2 危機への看護介入
3 死別の危機への看護介入
3. コーンの危機・障害受容モデル
1 危機・障害受容のプロセス
2 危機・障害受容への看護介入
4. アグィレラの危機問題解決モデル
1 危機にいたるプロセス
2 問題解決的危機看護介入
5. ムースの疾病関連危機モデル
1 危機にいたるプロセス
2 問題解決的危機看護介入
6. 家族危機モデル
1 二重ABC-Xモデル
2 家族危機への看護介入
Ⅴ章 危機状況にある患者の危機の分析と看護介入
〔事例紹介〕
1.初発診断時に深刻な症状と予後告知を受けたIさんの危機
2.心臓手術後に在宅酸素療法が必要となったJさんの危機
3.消化管穿孔のため緊急手術を受けたMさんの危機
4.術後化学療法終了後に肝転移が見つかったNさんの危機
5.長期に抗がん剤治療を受け続けた進行卵巣がんのKさんの危機
6.がん治療中の療養の問題を話し合えないOさん家族の危機
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書籍情報
- ISBN:9784765319904
- ページ数:195頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年2月14日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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