エビデンスで知るがんと死亡のリスク

  • ページ数 : 402頁
  • 書籍発行日 : 2011年11月
  • 電子版発売日 : 2012年12月15日
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商品情報

内容

男性や貧困は死亡のリスクが高いか。和食や野菜でがんのリスクが減るか。寒冷や夜勤は死亡のリスクが高いか。病気や死亡のリスク、危険因子に関するさまざまな疑問に答えるため、研究のエッセンスをまとめた書。臨床医が知っておきたいがんや死亡のリスクのエビデンスを知ることができる。

序文

私は1983年に医師になって母校の外科教室に入局し,市中病院や大学病院で消化器外科の診療や研究を続けてきましたが,2007年に消化器外科を離れて4年間,九州で地域医療に従事しました.外科医だったときはがん患者の予後に興味があり,外科の雑誌で予後因子や生存曲線ばかり見ていましたが,ふつうの臨床医になると病気や死亡のリスクが気になり,臨床の雑誌で危険因子やリスク比が目に入るようになりました.

以前は病院の図書室や大学の図書館で外科の雑誌を手にとってページをめくり,興味ある論文はコピーして保管していましたが,2007年からは診療の空き時間に診察室のパソコンでPubMedにアクセスし,世界中の有名な臨床の雑誌を読んで病気や死亡のリスクに関する論文を見るようになり,外科医のときには知らなかった新しい世界が開けました.そのときの気持ちを1人でも多くの医師に伝えたくて執筆したのが本書です.

医師の役目に「転帰の予測」があり,医師は病気の診断(diagnosis)だけでなく,治るかどうかの予測(prognosis)ができなければならず,患者情報や切除標本を使って予後因子を明らかにした臨床研究が利用できます.一方,医師の役目には「リスクの回避」もあり,病気や死亡の確率を高める危険因子を知ると,住民の健康管理や国民の疾病予防に役立てることができ,地域住民を対象にした疫学研究が参考になります.

私たちは「転帰の予測」は得意ですが,「リスクの回避」は苦手です.患者や知人のため,家族や自分のためにも,医師は危険因子を知っておくべきです.本書はふつうの臨床医が世界の雑誌に目を通し,がんや死亡のリスクに関する論文を集め,データを紹介しながら研究のエッセンスをまとめたものです.内容に興味を持った人やデータに疑問を感じた人は,ぜひ自分で論文を読んでください.きっと新しい世界が広がります.


平成23年 7月13日

著者

目次

Ⅰ章 年齢や性別:男性や貧困は死亡のリスクが高いか

1 年齢

高齢者と死亡,高齢者とがん,テロメアの短縮

2 性別

がんの男女差,手術の男女差,動脈瘤の男女差,感染の男女差,医師の男女差

3 人種

治療の人種差,手術の人種差,がんの人種差,国や移住の影響

4 所得

米国の貧困者,英国の貧困者,欧州の貧困者,米国の低学歴者

5 家族

がんの家族歴,家族のがん,夫婦の病気,夫婦の離別,子供の死別

6 性癖

性格とがん,性格と死亡,排便とがん,射精とがん,脱毛と死亡,歯疾患とがん,血液型と病気

■ 文献

Ⅱ章 肥満や病気:減量や運動で死亡のリスクが減るか

1 肥満とがん

国別の肥満,肥満とがん罹患,肥満とがん死亡

2 肥満と消化器がん

3 肥満と女性がん

肥満と乳がん,肥満と卵巣がん

4 肥満と病気

肥満と日常疾患,肥満と死亡,腹囲と死亡,メタボと死亡,指導の効果,小児の体格,出生時の体重

5 運動とがん

運動とがん罹患,運動とがん死亡,運動と体重

6 運動と病気

運動と消化器疾患,運動と生活習慣病,運動と認知症,運動と死亡,心肺機能と死亡

7 病気とがん

糖尿病とがん,糖尿病と消化器がん,糖尿病と死亡,併存疾患の影響,精神疾患とがん,ピロリ菌と胃がん,除菌の影響,ポリープと大腸がん,肝炎と肝臓がん,胆石と胆道がん,感染や炎症とがん,CRP値とがん,血糖値とがん,検査値と死亡

■ 文献

Ⅲ章食事や栄養:和食や野菜でがんのリスクが減るか

1 嗜好や食生活

食事とがん,食事と消化器がん,制限食の効果,簡易食の影響

2 肉や魚

赤身肉とがん,白身肉とがん,脂肪酸とがん

3 繊維や豆類

食物繊維とがん,豆類とがん

4 野菜や果物

5 ビタミン剤

ビタミンと病気,ビタミンとがん,葉酸とがん

6 抗酸化物質

抗酸化物質とがん,抗酸化物質の影響,子供や妊婦への影響,フラボノイドとがん

7 骨強化食品

カルシウムとがん,ビタミンDとがん,カルシウムと骨折,ビタミンDと骨折,ビタミンDと生活習慣病

■ 文献

Ⅳ章 喫煙や飲酒:禁煙や緑茶でがんのリスクが減るか

1 喫煙とがん

喫煙と消化管がん,喫煙と肝胆膵がん,喫煙と肺がん

2 喫煙と病気

喫煙と死亡,喫煙と病気,禁煙の効果

3 飲酒とがん

飲酒と食道がん,飲酒と大腸がん,飲酒と肝臓がん,飲酒と女性がん

4 飲酒と病気

飲酒と死亡,適度な飲酒

5 コーヒーとがん

コーヒーと胃腸がん,コーヒーと肝臓がん,コーヒーと女性がん

6 コーヒーと病気

コーヒーと消化器疾患,コーヒーと生活習慣病

7 緑茶とがん

飲茶と食道がん,緑茶と胃がん,緑茶と病気

■ 文献

Ⅴ章輸血や薬剤:制酸や抗菌で死亡のリスクが減るか

1 手術

胆嚢摘出とがん,虫垂切除とがん,豊胸とがん,減量とがん,移植とがん

2 照射

検査被曝とがん,胸壁照射とがん,骨盤照射とがん,職業被曝とがん

3 輸血

輸血とがん,輸血と死亡,がん患者の輸血,がん患者の造血薬

4 制酸薬

くすりのリスク,制酸薬とがん,制酸薬と下痢,制酸薬と肺炎,制酸薬と骨折

5 抗菌薬

抗菌薬とがん,利胆薬とがん

6 女性ホルモン

乳がんの増加,子宮がんの増加,肺がんの増加,大腸がんの減少,妊娠と乳がん,避妊と子宮がん

7 アスピリン

アスピリンとがん,アスピリンと大腸がん,アスピリンと大腸腺腫,アスピリンと食道がん,アスピリンと膵臓がん,アスピリンと生活習慣病,鎮痛薬と消化性潰瘍

8 スタチン

スタチンとがん,スタチンと生活習慣病,スタチンと日常疾患,降圧薬と日常疾患

9 ワクチン

インフルエンザ,抗ウイルス薬,予防接種,肺炎の予防

■ 文献

Ⅵ章 環境や職業:寒冷や夜勤は死亡のリスクが高いか

1 大気汚染

大気汚染と死亡,間接喫煙と肺がん

2 航空旅行

飛行機と血栓,血栓と肺塞栓

3 携帯電話

日光とがん,携帯電話とがん

4 球技や音楽

観戦と死亡,テレビと死亡,音楽と死亡,スポーツと死亡

5 場所や距離

国別の死亡,住居とがん,左右のがん

6 時間や季節

夜間や週末と死亡,気温と死亡,季節と死亡

7 職場や夜勤

化学物質とがん,放射線とがん,夜勤と乳がん,メラトニン抑制

8 睡眠時間

睡眠時間と死亡,睡眠不足と病気

9 ストレス

ストレスと病気,抑うつと病気,抗うつ薬と死亡,医師の燃えつき,医師の自殺

■ 文献

略号

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784498022485
  • ページ数:402頁
  • 書籍発行日:2011年11月
  • 電子版発売日:2012年12月15日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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