消化管内視鏡エキスパート3.大腸癌

  • ページ数 : 156頁
  • 書籍発行日 : 2011年10月
  • 電子版発売日 : 2012年8月18日
7,920
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商品情報

内容

「食道」・「胃」・「大腸」早期癌の診断・治療をテーマとした『消化管癌内視鏡エキスパートシリーズ』。その第3巻「大腸編」が電子書籍となりました。消化器内視鏡専門医・専門医を目指す医師に向けて,エキスパートが体得すべき知識と技術を、Q&A形式のページもふんだんに交えて具体的に提供する。
電子書籍版では全文検索、収録内容から南山堂医学大辞典へのリンク参照、文献へもPubMedへのワンタッチリンクなど電子ならではの機能を搭載し、立体的な参照を実現いたしました。

序文

シリーズの序


最近の内視鏡診断・治療は,内視鏡機器の改良開発とあいまって目覚しい進歩を遂げている.特に,消化管の癌に対する新しい診断ツールとして,NBI(narrow band imaging)が登場し,拡大観察と併用することで新たな診断学を生み出した.特に食道や咽頭領域のdysplasiaや癌の拾い上げのみならず精密診断としての深達度診断をも可能としている.これまで主流であったルゴールを用いた色素内視鏡診断からNBI併用拡大観察へと移行しつつある.また胃癌や大腸癌の分野においても,非腫瘍と腫瘍との生検に頼らない鑑別診断,微小癌の発見や存在診断,深達度診断などにも貢献している.

今回のシリーズでは,がん研有明病院の内視鏡診療部で各臓器の責任者として診断・治療に当たっている土田知宏(食道),藤崎順子(胃),五十嵐正広(大腸)の3名が各々「食道」,「胃」,「大腸」の早期癌を主とした診断・治療をテーマに,『消化管内視鏡エキスパートシリーズ』として3巻をセットとして編集・企画させていただいたものである.対象を消化器内視鏡専門医あるいは専門医を目指す中級から上級医とし,エキスパートを目指す医師が習得すべき知識,テクニックを最新の知見と実臨床に沿った具体的な内容とすることを目的とした斬新なシリーズである.したがって,エキスパートを目指す先生方が対象なので踏み込んだ内容とするため,最新の技術を中心に各分野の第一人者とされる先生方にご執筆していただいた.

シリーズの基本的なスタイルとして,診断と治療の基本から応用までを網羅し,さらにこのシリーズの最大の特徴として,実際の手技や患者への対応などを質問に答える形式(Q & A)とし,具体的な質問事項を多数とりあげた.質問は,診断と治療に分け,具体的な診断のポイントや治療手技の細かなコツやテクニックをふんだんに盛り込んだ内容となっている.

本シリーズ3巻が消化器内視鏡診断・治療に携わっている先生方の日常診療に大いに役立つ編集ができたと3編集者とも自負している.

最後にお忙しいなか,すばらしい内容の原稿をご執筆いただいた諸先生方に厚く御礼を申し上げます.また,このような企画の機会を与えてくださった中外医学社の担当諸氏に感謝いたします.


2011年 8月

がん研有明病院内視鏡診療部 五十嵐 正広



『消化管内視鏡エキスパートシリーズ』の3巻(大腸癌)の編集を担当させていただいた.昨今,大腸癌の死亡者数が女性の死因の第1位を占める(男性3位)など,大腸癌に対する社会的な関心度も高まってきている.また,2007年「がん対策基本法」が制定され行政側からも癌に対する予防や早期発見などの基本的施策がかかげられ,大腸癌検診などの普及活動にもとりくまれている.そんななかで大腸内視鏡検査件数も各施設で増加しており,大腸腫瘍や早期大腸癌の発見頻度が増加している.

臨床では,内視鏡検査医は,病変の拾い上げ,正確な診断のほか,発見病変の治療,治療後のサーベイランスなど一連の患者管理が求められ,実践していく必要がある.したがって,拾い上げ診断された病変の正確な質的診断,特に癌であれば精度の高い深達度診断が要求される.すなわち,内視鏡治療可能な病変であるか外科的治療が必要な病変なのか,治療ガイドライン上1,000μm以内かそれ以上かの深達度診断が求められるようになってきている.そのための診断方法として,通常観察,色素およびNBI観察や拡大観察がわれわれの最新の診断手段となっている.本シリーズでは各エキスパートの先生方に最新の診断技術や方法などを具体的に示していただいているので,エキスパートを目指す読者には大いに参考になる内容となっている.

早期大腸癌の診断後治療が行われるが,今回は,ポリペクトミー,EMR,ESDに関する最新の技術や具体的な治療方法,特に最も高度なテクニックを要するESDについては,具体的できめ細かい手技の解説をしていただいている.また,治療には避けて通れない偶発症の対策と治療後のサーベイランスのあり方など,早期大腸癌の内視鏡的治療に関する必要事項を網羅している.

さらに今回のシリーズの特徴として,具体的な手技や日ごろ疑問に感じることなどを質問に答える形式,すなわち「Q & A」方式として,診断編では早期癌の診断に関するコツや診断手段などを具体的に示してある.治療編では,EMRとESDでよく遭遇する問題点をエキスパートがどのように克服して安全かつ迅速に対応しているかなどを写真を用いて解説していただいている.

本書では早期大腸癌をターゲットとしてその診断と治療法,治療後の管理などについてより実践的な内容となっており,内視鏡専門医や内視鏡専門医を目指す先生方のお役に立つものと確信している.


2011年 8月

がん研有明病院内視鏡診療部 五十嵐 正広

目次

I 基本編

1.早期大腸癌の内視鏡診断:通常観察を中心に

A.通常内視鏡による早期大腸癌の深達度診断

1.腸腫瘍の発育形態(PG,NPG)の概念と通常内視鏡による診断

2.早期大腸癌の深達度診断:多施設前向き検討の結果から

2.早期大腸癌の内視鏡診断:色素内視鏡および拡大内視鏡を中心に

A.拡大内視鏡観察を始める前の準備

1.使用スコープ

2.拡大観察の際に使用する液体の種類

B.pit pattern観察の手順

C.pit pattern拡大診断の実際

1.pit pattern分類

2.pit patternと病理組織

3.pit pattern診断能

D.pit pattern診断の有用性・必要性

E.pit pattern観察のピットフォール

3.早期大腸癌に対するNBI拡大内視鏡診断

A.NBI拡大内視鏡診断におけるsurface patternの重要性

B.NBI拡大観察所見:広島分類と観察評価法の要点

C.NBI国際共同研究によるNICE分類の臨床的意義

D.NBI拡大観察の位置づけ

4.早期大腸癌の内視鏡的治療:ポリペクトミー,EMRを中心に

A.早期大腸癌に対する内視鏡的摘除の適応

B.内視鏡的摘除法の選択

C.ポリペクトミー,EMRの実際

1.内視鏡機種と処置具の選択

2.摘除手技

5.早期大腸癌の内視鏡的治療:ESDを中心に

A.使用器材

B.ESDの手順

1.切開・剥離のコツとピットフォール

C.困難例とその対処

1.剥離困難例

2.アプローチ困難例

3.直腸における特徴と注意点

D.ESDの適応

1.臨床病理学的適応

2.技術的適応

3.遺残・再発例の問題点

4.その他の選択肢

E.成 績

F.ESDの限界

1.中止例と筋層牽引所見(muscle retracting sign)

2.偶発症対策

6.早期大腸癌の内視鏡的治療の偶発症対策

A.大腸内視鏡検査に伴う普遍的な偶発症

1.腸管前処置に伴うもの

2.検査前投薬に伴うもの

3.スコープ挿入に伴うもの

B.治療に伴う出血

1.術中出血の予防

2.後出血の予防

3.出血した場合の対処

C.治療に伴う穿孔

1.穿孔予防

2.穿孔した場合の対処

7.早期大腸癌の内視鏡的治療後の経過観察を含めた対応について

A.大腸腫瘍に対する内視鏡治療方法とその適応

B.内視鏡治療方法と遺残再発率の検討

1.対象および方法

2.結 果

3.考 察

II Q & A

■ 診断編 ■

Q1.表面陥凹型癌(IIc)を発見するためのコツは?

Q2.病変が接線方向でしか見えないときの観察法は?

Q3.Ip型のstalk invasionはどのような所見から診断できるの?

Q4.M癌かSM癌か迷ったらどうする?

Q5.10mm以下でもSM癌と診断できる?

Q6.粘液が付いている場合の対策は?

Q7.NBI所見で癌と診断できる所見は?

Q8.Vi高度とVi軽度の所見のとり方は?

Q9.染色むらなのかVnの所見か悩ましい場合はどうするの?

Q10.LST-NGで盆状陥凹がありピットが小型IIIlならSM癌はないと診断できる?

Q11.超音波内視鏡検査(EUS)でSM浸潤度1000μmまでの診断は可能か?

Q12.超音波内視鏡検査(EUS)では隆起型と表面型で深達度診断率が異なる?

■ 治療編 ■

Q1.Ip型で茎が太い場合の出血の予防法は?

Q2.EMRでスネアリングの際完全に一括切除できたと思っても一部残る.予防法は?

Q3.EMRのスネアの選択法は?

Q4.分割EMRとなった場合,トリミングの方法は?

Q5.分割も含め,EMR後の経過観察はどうしたらよい?

Q6.EMRの際,注入液の種類で手技が異なることがある?

Q7.non-lifting signの判定方法は?

Q8.EMR時,注入の仕方で切除の難度が変わるように思うのですが?

Q9.大腸EMR後の縫縮は必要か?

Q10.ESDのナイフの使い分けは?

Q11.血管の処理方法は?

Q12.どの部位から切りはじめるとよいの?

Q13.粘膜下層に線維化が出てきたらどのように対処する?

Q14.線維化と癌の浸潤との鑑別は可能?

Q15.ひだをまたぐような病変で注意すべきことは?

Q16.ESDの時間短縮のコツは?

Q17.ESDを中止にする条件とは?

Q18.穿孔が起こっても続けられる条件は?

Q19.ESD後の管理として腹部単純写真やCTは必要?

Q20.ESD,EMR後の食事開始時期と退院の時期は?

Q21.ESD後の経過観察は必要?

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書籍情報

  • ISBN:9784498043466
  • ページ数:156頁
  • 書籍発行日:2011年10月
  • 電子版発売日:2012年8月18日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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