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がん患者の運動器疾患の診かた ―新たなアプローチ「がんロコモ」―

  • ページ数 : 260頁
  • 書籍発行日 : 2019年10月
  • 電子版発売日 : 2019年10月18日
4,840
(税込)
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商品情報

内容

「がんロコモ」への対応ががん患者の運命を変える!?

「がんロコモ」とは,「がんに関連した運動器障害によって移動能力が低下した状態」である.がん治療の進歩に伴い,「がんロコモ」に対応し,患者の運動器という観点からがん診療に取り組むことが望まれている.
運動器の機能を維持・改善することは,がん患者が自身の力で動くため,生活するため,治療を受けるために極めて重要であり,本書は,このがん患者の運動器疾患についてまとめた新しいアプローチの書籍となっている.

序文

がん治療における技術革新はめざましく,画像診断やロボット手術,分子標的薬の研究開発,がんゲノム医療,最近ではがん診療への人工知能(AI)導入など,以前は想像もできなかった展開をみせている.もちろん医療費高騰の問題はあるが,これらの技術革新により,わが国が先進諸国の中でトップレベルの治療成績をあげていることは疑いようのない事実である.

そして,これらの研究開発はがん患者にとっても生命予後の改善という大きな福音をもたらした.がん患者の生命予後を第一義とし,医療者が研究を積み重ね,技術を磨いてきたことはもちろん正しい.編者らも同様に,共に整形外科医であるがその専門は骨・軟部腫瘍であり,この疾患群に含まれる肉腫から患者の生命を救うことに長年多くの力を注いできた.しかし,がん治療の進歩に伴い,生命予後を考えるだけでは患者は救われない時代となった.働きざかりのがん患者はがん治療と就労を両立しなければならない.また,がん治療の最中にいるがん患者は,パフォーマンスステータス(PS)を維持することで治療の継続が可能になる.そして,残念ながら生命予後が限られているがん患者は,自身の尊厳を全うするため最後まで自分で動きたいと考える.このように,がん患者の側に立ち,就労や治療,QOLを維持するために,がん患者の運動器という観点からがん診療に取り組もうとする概念が「がんロコモ」である.

運動器は,消化器や呼吸器などの臓器を乗せた機関車のような存在であり,がんは時に,運動器をも障害し,機関車の機能を停止させてしまう.運動器の機能を維持・改善することは,がん患者が自身の力で動くため,生活するため,治療を受けるために極めて重要であり,本書は,このがん患者の運動器疾患についてまとめた新しいアプローチの書籍になる.その内容では,がん患者の運動機能低下を引き起こす運動器疾患に対して,その概念と対策が詳細に述べられている.がん患者が運動器疾患を患い動けなくなることは,患者自身にとって尊厳に関わる大きな問題であることは論をまたないが,治療を行う医療者にとっても治療遂行の障壁になることは日常診療で多く経験することである.多くのがん診療医が,本書を活用し「がんロコモ」を解決することは,わが国のがん診療のさらなる向上をもたらすと確信している.


2019年10月

森岡 秀夫
河野 博隆

目次

ch. 1 がん患者の運動器疾患 ─がんロコモとは─

1 がんとロコモティブシンドローム

がん患者の移動機能/がん患者の運動器障害/

がん患者の運動器障害に整形外科が果たすべき役割/がん患者の運動器障害を疑ったら

2 がんロコモの概念 ─がんロコモの目指すもの─

わが国は「がん大国」/がんは原発科が診るという文化/

なぜ,整形外科は「がん」を診ないのか?/骨転移診療のあるべき姿/

パフォーマンスステータス(PS)と運動器障害の関係/

がんとロコモティブシンドローム(がんロコモ)/

がん患者が「動ける」ことの意義/運動器診療科の潜在能力を発揮すること

3 がんロコモの分類

がんロコモの定義と分類

4 がん患者の運動機能評価

関節可動域(ROM)/徒手筋力検査(MMT)/

パフォーマンスステータス(PS)/Frankel分類およびAIS/Barthel Index(BI)

ch. 2 がんロコモの原因と対策

2―1 がん治療に関連する運動器疾患

1 がん治療と骨代謝

 がんによる骨代謝への影響/がん治療による骨代謝への影響

2 薬剤性末梢神経障害 ─原因とその対応─

 末梢神経障害発症のメカニズムとその特徴/評価/予防・治療

3 がん患者の廃用症候群 ─がんロコモにおける特徴─

 廃用症候群とは/がん患者における廃用症候群/がんロコモ患者における特徴

4 がんとリハビリテーション ─がんロコモへの取り組み─

 がん周術期患者に対するリハビリテーション/

 抗がん剤治療患者に対するリハビリテーション/悪液質とリハビリテーション

2―2 運動器疾患としての骨転移

1 骨転移の疫学 ─がん時代をむかえて─

 骨転移の発生頻度/骨転移の原発/骨転移部位/Skeletal related event(SRE)と治療

2 骨転移の病態とメカニズム

 なぜ腫瘍細胞は骨に転移するのか/腫瘍細胞による骨代謝への干渉

3 骨転移の臨床症状とがんロコモ

 骨転移による臨床症状/骨転移による痛みに対しては緊急対処が必要な場合がある/

 四肢長管骨転移の症状:痛みは骨折の危険信号である/

 脊椎転移による背部痛を見逃さないために:痛みは麻痺の危険信号である(Red flag)/

 早期診断・早期治療のキー:患者指導

4 骨転移の画像診断 ─良性骨病変との鑑別・麻痺や骨折リスクなど─  〈植野映子〉

 骨病変の指摘/質的診断

5 造骨性と溶骨性骨転移 ─組織像から見た骨折リスク─

 がん骨転移と骨折/転移性癌腫に対する骨組織反応/

 がん骨転移による骨折リスク/溶骨型転移での骨折/

 混合型転移での骨折/造骨型転移での骨折/骨梁間型転移での骨折/

 転移性骨腫瘍の背景疾患

6 骨転移患者に対する装具治療の基本 ─がんロコモを防ぐには─

 基本的な考え方/装具療法の適応/体幹装具/

 四肢骨転移に対する装具/歩行補助具/車椅子

7 病的骨折の治し方 ─がん患者が動けるために─

 病的骨折を治すとはどういうことか/

 誰が転移性骨腫瘍によって生じた病的骨折を治すのか/

 切迫骨折を治す/術式決定で知っておくべきこと/固定の原則

8 外科的切除を行う骨転移 ─がんロコモとがん治療─

 一般的な骨転移手術治療の適応/骨転移に対する外科的切除の適応/

 骨転移に対する外科的切除の実際/合併症

9 脊椎転移外科的治療のタイミング

 介護社会から自立支援社会へのパラダイムシフト/

 がん診療に必要とされるのは"専門領域+α"(アサーティブコミュニケーション)/

 脊椎転移のケアがなぜ必要か?/脊椎転移の手術のタイミングはいつか?/

 なぜ「動けない」「生活できない」のか?/

 脊椎転移による脊髄麻痺は,除圧が早ければ早いほど機能予後が良い!/

 脊椎転移の手術はPSを改善する!/

 Frankel Aは実用性の回復が困難であり,早期離床を目標とすべき/

 脊椎転移の治療において大切なこと(予後予測ではない)/

 患者の健康と満足度を高めるQoS

10 脊椎転移に対する低侵襲治療 ─新しい取り組み─

 姑息的手術/手術適応と低侵襲化の必要性/脊椎手術の低侵襲化/

 低侵襲化の利点と問題点/PPSの進歩/根治的手術

11 骨転移に対する放射線治療 ─がんロコモ対策を中心に─

 脊髄圧迫症状(麻痺)の予防・改善を目的とした放射線治療/

 骨折の予防を目的とした放射線治療

12 骨転移に対するIVR ─がん患者のQOL改善への取り組み─

 治療対象と適応基準/使用機器/CT透視ガイド下ablation治療手順とその工夫/

 しばしば行う追加手技を伴う工夫方法/RFAとCryoの比較・相違

13 骨転移と骨修飾薬

 はじめに:骨転移によるQOL低下/

 骨転移の機序と骨特異的な薬物治療:骨修飾薬(BMA)/

 がん患者における骨粗鬆症・骨密度低下とその治療

14 骨修飾薬による顎骨壊死 ─対策と臨床経過─

 顎骨壊死/骨修飾薬の対象となる患者/

 口腔管理の目的は,患者の日常生活を支えること/

 対策:医科歯科連携による感染源となりうる歯牙の管理/

 潜在的な歯性感染症リスク/感染源の管理とQOLの維持のバランスを/

 医科歯科連携の現状

15 骨修飾薬長期投与に伴う非定型大腿骨骨折の病態と治療

 AFFの病態/AFFの診断/AFFに対する保存的治療/AFFに対する手術療法

16 骨転移の痛みとオピオイド ─がんロコモにおけるオピオイドの位置づけ─

 骨転移の痛み/疼痛患者の管理/骨転移の痛みと事例/

 がんロコモにおけるオピオイドの位置づけ

17 骨髄癌腫症について

 機序/疫学/症状・症候/検査所見/治療/予後

18 原発不明骨転移とゲノム医療

 原発不明がんについて/原発不明がんのゲノム解析について

2―3 がん患者と良性運動器疾患

1 がん患者と良性脊椎疾患

 危険信号を有し,重篤な脊椎疾患(腫瘍,炎症,骨折)の合併が疑われる背部痛/

 悪性腫瘍と骨粗鬆症性椎体骨折の鑑別は特に重要/

 良性の神経症状を伴う背部痛(つまり下肢に麻痺や神経痛を伴うもの)/

 良性の腰椎由来の下肢神経症状と関節疾患との鑑別に注意/

 非特異的な背部痛(X線,MRIなどで異常がないが背部痛を伴う)

2 がんの好発年齢に一致して発生する良性関節病変

 肩関節/手関節/股関節/膝関節

3 がん患者と関節リウマチ

 がんとリウマチ性疾患/がん患者が有するリウマチ性疾患に対する治療

ch. 3 がん患者の社会復帰

1 がん患者の在宅支援 ─がんロコモ対策が果たす役割─

がん患者の在宅支援に対するがんロコモ対策の重要性/

外来がん化学療法やその他外来通院患者へのがんロコモ対策/終末期患者の在宅支援/

外来でのがん患者へのリハビリテーション治療の提供について

2 がん患者の運動器管理と医療連携 ─ 一般整形外科医によるがんロコモ対策─

がん患者の運動器障害の診断は整形外科が行う/

がんによる痛み(骨転移)に対して一般整形外科医が求められること/

がん治療による運動器障害に対して一般整形外科医が求められること/

がんが原因でない運動器障害に対して一般整形外科医が求められること

3 がん患者の就労と運動器管理 ─就労支援とがんロコモ─

職業復帰とリハビリテーション治療/

リハビリテーション医学の視座から見るがん複合障害/

運動器診療を専門とする"がん専門医"に対診する/

就労支援の具体的な形/主治医の責任としての"運動器管理"

ch. 4 キャンサーボードと骨転移外来

1 がん診療拠点病院とキャンサーボード ─がんロコモにおける役割─

がん診療拠点病院とは/キャンサーボード/

がんロコモにおけるがん拠点病院およびキャンサーボードの役割

2 骨転移キャンサーボード ─立ち上げから運営まで─

なぜ骨転移キャンサーボードが必要なのか?/

骨転移キャンサーボードはどの診療科が主導すべきか?/

骨転移キャンサーボードの立ち上げに必要な準備/

骨転移キャンサーボード開催までの実際の取り組み/

東京医科歯科大学における骨転移キャンサーボードの運営方法について

3 骨転移キャンサーボードの実際 ─その内容と結果─

当院の骨転移キャンサーボードについて/症例提示/骨転移キャンサーボードの効果

4 骨転移外来 ─外来でできるがんロコモ─

骨転移の外来診療とは/骨転移外来の形態と実践例/外来診療前の準備/

骨転移外来での診察/骨転移外来で行う検査/骨転移外来で行う治療

ch. 5 がんロコモへの対応の具体例(セルフチェック)

問題

解答と解説

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書籍情報

  • ISBN:9784498054820
  • ページ数:260頁
  • 書籍発行日:2019年10月
  • 電子版発売日:2019年10月18日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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