慢性疼痛診療ハンドブック

  • ページ数 : 300頁
  • 書籍発行日 : 2016年11月
  • 電子版発売日 : 2017年12月28日
5,060
(税込)
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商品情報

内容

「痛み」に寄り添う医療のために。

「痛み」を科学的に追求し、根拠に基づいた情報を発信するNPO法人「いたみ医学研究情報センター」の医療者教育用資料を再編集し、初学者でも読みやすい内容にまとめあげました。医師、理学・作業療法士、看護師、社会福祉士など、慢性疼痛のケアに悩む全ての方にオススメです。

序文

「痛み」は日常診療の中で中核となる症状の一つですが,本企画のテーマである「長引く痛み=慢性疼痛」は,患者さんの生活の質を低下させるだけでなく,取り巻く家族や職場,社会全体に不幸な影響をもたらすことが知られています.慢性疼痛といっても原因はさまざまあり,加齢に伴う組織の変性・損傷から生じるものや,リウマチ性疾患などの持続炎症を伴うもの,神経障害を伴うもの,また組織障害と痛みとの関連性は見いだせないものの兎に角「痛い」と訴えているもの,そして多くの場合これらの病態が混在しているものが考えられます.

特に難治性の痛みになると,その診断根拠にも不明確な部分が多く,疾患を取り扱う医療者,特に専門家の間でも意見の隔たりがみられるため,その結果,様々な病名を告げられた患者さんの多くは,医療者の発言に混乱し,痛みの緩和を求めて医療機関への受診を繰り返しているのが現状です.このような背景から私たちは,「慢性疼痛」を取り扱うことの多い医療者が中心のNPO 法人を立ち上げ,2012年度からは厚生労働省「からだの痛み相談支援事業」を執り行っております.本書は,その事業内容の一つである「医療者への痛みの教育」の中で,各分野のエキスパートが用いてきた資料をスライドベースで再編集し,初学者でも読みやすい内容となるように仕上げてまいりました.著者として,整形外科,麻酔科,精神科の専門医師に加え,理学療法士,看護師,臨床心理士の先生方にご執筆いただき,各職種目線からみた痛み医療の考え方および対処法についてご提示いただいております.

また,本書では「慢性疼痛」という言葉を,患者さん目線でわかりやすい「慢性痛」という表現に変え,慢性痛症候群を一つの病態として捉えております.

プライマリケアで直接患者さんの治療を担う医師や理学・作業療法士はもちろんのこと,患者家族への接点となる看護師や社会福祉士の方にとっても,痛みの本質を理解していただき,患者さんやその周囲に人たちにどのように対応すべきかの参考になるのではないかと考えております.読者の皆様にとりまして,痛み医療の一助になれば幸いです.


平成28年10月

認定NPO法人いたみ医学研究情報センター
池本 竜則

目次

1 慢性痛症候群とは

1 痛みとは

2 痛みの分類

3 疼痛診療について

4 運動器疼痛における調査

5 疼痛における社会的な問題

6 心身状態によって痛みの感じ方は異なる

7 痛みの破局化とは

8 廃用とは

9 慢性痛患者の特徴〜破局化思考

10 慢性痛症候群とは何か

11 慢性痛の悪循環

12 医療者診断の問題

13 慢性痛治療の考え方

2 治療に難渋する慢性痛患者とは

1 治療に難渋する慢性痛患者とは

2 治療に難渋する要因

3 身体的要因

4 精神心理的要因 I

5 精神心理的要因 II

6 精神心理的要因 III

7 精神心理的要因 IV

8 環境要因

9 治療要因

10 難治性疼痛の代表疾患と要因

11 線維筋痛症,慢性会陰部痛,舌痛症などの機能性疼痛

12 治療に抵抗する慢性痛を予防する対策― 一般論

13 治療に抵抗する慢性痛を予防する対策― 具体案

3 慢性痛では痛み以外の評価が重要

1 痛みの主観的評価

2 慢性痛患者で重要な治療目標設定

3 簡易疼痛評価 BPI(Brief Pain Inventory)

4 疼痛生活障害評価尺度(ADL評価) PDAS(Pain Disability Assessment Scale)

5 痛みに対する破局的思考の程度 PCS(Pain Catastrophizing Scale)

6 不安・抑うつ評価 HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)

7 症例:47歳男性

8 症例:47歳男性(つづき)

9 そこでわれわれは...

10 まとめ

4 家族にも目を向けよう

1 家族関係の重要さ

2 症例1:50代女性 15Xcm,50kg強

3 症例1(つづき)

4 何が一番お困りですか?

5 治療方針

6 治療経過

7 症例2:30代女性 16Xcm,50kg弱

8 症例2(つづき)

9 治療方針

10 治療経過

11 症例3:19歳女性 15Xcm,50kg半ば

12 症例3(つづき①)

13 症例3(つづき②)

14 治療方針

15 治療経過

16 家族関係についてのポイント

5 神経障害性疼痛とは

1 痛みの分類・病態

2 神経障害性疼痛の診断

3 疼痛疾患の特徴

4 運動器疼痛疾患の30~40%は神経障害性疼痛の要素を持っている

5 神経障害性疼痛の重症度評価尺度(神経障害性疼痛の発症機序の解明に繋がると期待されている)

6 臨床的価値の重み・考え方

7 神経障害性疼痛に対する薬物療法の有効性と副作用

8 神経障害性疼痛―薬物療法アルゴニズム

9 NePの併存症

10 病的疼痛疾患の悪循環モデルFear-avoidance model

11 認知行動療法Cognitive behavioral therapy

6 慢性痛治療薬の使い方・考え方

1 慢性痛における治療薬の選択

2 慢性痛の原因となりうる重要な病態:神経障害性疼痛

3 神経障害性疼痛薬物療法(抜粋)

4 神経障害性疾病の治療薬について知っておきたいこと

5 プレガバリン投与前後の疼痛スコア

6 糖尿病性神経障害に対するデュロキセチンの効果

7 NNT(number needed to treat)という考え方

8 帯状疱疹後神経痛に対するプレガバリンの研究

9 添付文書での自動車運転に関する注意

10 重大な副作用

11 慢性腰痛に対する各薬剤の推奨度

12 ベンゾジアゼピンの世界各国での処方量

13 ベンゾジアゼピン系薬剤の危険性

14 まとめ

7 エゴグラムによる性格診断

1 交流分析とエゴグラム

2 構造分析

3 やりとりの分析

4 心理的ゲーム

5 エゴグラム

6 自我状態の二面性

7 エゴグラムパターン

8 症例:40歳女性

9 症例:40歳女性(つづき)

10 まとめ

8 補償体系・疾病利得の評価

1 疾病利得の種類

2 症例:40代男性

3 身体所見 社会背景

4 精神障害者保健福祉手帳

5 障害年金

6 障害等級には様々な制度があり,それぞれ基準が異なる

7 障害年金の等級基準

8 障害年金額の算出

9 経過 症例:40代男性

10 痛みの持続(慢性化)と補償制度との関連

9 むち打ち症に対する現在の考え方と治療

1 頚椎捻挫の定義

2 頚椎捻挫の発症機序

3 外傷性頚部症候群(むち打ち症)

4 判例から見たむち打ち

5 むち打ち損傷病型分類(ケベック分類1995)

6 カナダでの外傷性頚部症候群

7 頚椎捻挫の治療には,頚椎カラーを「痛み」がある間装着する?

8 WAD患者の受傷時年齢と治療期間

9 年齢区分からみた治療終了までの期間の累積分布

10 結果のまとめ

11 頚椎捻挫の国際研究

12 補償が行動に及ぼす影響

13 日常生活での加速度(35kmで追突は10G程度)

14 頚椎捻挫による椎間板ヘルニアが後日発生することがある?

15 入通院の必要性,外泊外出回数

16 痛みの機序による分類:器質的疼痛と非器質的疼痛

17 IASP2009 Global against pain

18 長野地裁松本支部の判例(昭和57年3月30日)

19 医療が慢性痛をつくる?

10 慢性痛の診断書の書き方・考え方

1 診断書の書き方・考え方

2 後遺障害の定義

3 症状固定の定義

4 後遺障害

5 等級認定について

6 自賠責の計算式

7 交通事故交渉サービス業の存在

8 診断書

9 交通事故の医療費をめぐる判決

10 自賠責医療の実務

11 医療機関の損保に取るべき態度

12 損保が支払わない理由

13 医業類似行為からの紹介患者

14 医業類似行為への責任に関する判例

15 長期通院は問題となる

16 詐病対策は?

17 まとめ

11 痛みと虚偽性障害

1 症例

2 問題行動

3 ねつ造

4 虚偽性障害

5 虚偽性障害における身体症状

6 虚偽性障害における問題行動

7 虚偽性障害の病因

8 虚偽性障害の痛みの訴えへの対応

9 身体症状症と詐病との鑑別診断

10 虚偽性障害の罹病率

11 「治療」から「対応」,「管理」へ

12 医療者の良心と葛藤

12 神科医から見た慢性痛

1 精神科医から見た慢性痛

2 症例

3 症例

4 精神疾患の安易な診断は危険

5 心を研ぎ澄まして感じる貴重な患者情報

6 診断に役立つ心モニター

7 見当識の確認だけでも...

8 症例

9 症例

10 時系列と処方

11 "痛み"とは..."精神科的な評価"とは...

13 Red flagsの評価

1 Red flagsの評価

2 痛みのRed flagsとYellow flags

3 腰痛におけるRed flags

4 症例1:85歳女性 腰痛

5 症例1:追加検査

6 症例2:45歳女性 背部痛

7 症例2:45歳女性 背部痛(つづき)

8 症例3:86歳男性 腰痛

9 症例3:86歳男性 腰痛(つづき)

10 症例4:84歳女性 右頚部から肩の痛み,小指のしびれ

11 症例4:84歳女性 右頚部から肩の痛み,小指のしびれ(つづき)

12 症例5:72歳男性 後頚部〜背部痛

13 状況認識における問題 診断決定の思考プロセスの問題

14 診断エラーに導かれる認知バイアス

15 慢性痛の診断の際に

14 神経ブロック治療の適応と限界

1 症例1:急性増悪を繰り返す慢性腰痛①

2 デイスカッションタイム

3 症例1:急性増悪を繰り返す慢性腰痛②

4 神経根ブロック

5 症例2:54歳女性 数年来の慢性腰痛①

6 Q and A

7 デイスカッションタイム

8 症例2:54歳女性 数年来の慢性腰痛②

9 慢性痛の治療:神経ブロック治療の適応と限界

10 神経ブロック治療の適応:急性痛と慢性痛

11 慢性痛患者に対する神経ブロック治療①

12 慢性痛患者での目標設定

13 慢性痛患者に対する神経ブロック治療②

14 慢性痛患者に対する神経ブロック治療③

15 "とにかく痛い!!"訴えの連続

16 インターベンショナル治療の落とし穴

17 痛みのコントロールだけに目を奪われると

18 慢性痛に対して神経ブロック治療を行う時,医師は以下のことを考えて行うべき

19 神経ブロック治療の前に

20 慢性痛 神経ブロック治療介入のカギ

21 身体の機能的な評価 理学療法士

22 慢性痛における神経ブロック治療の立場

15 非がん性慢性疼痛へのオピオイドの使い方

1 はじめに

2 各領域のオピオイド治療の考え方の違い

3 がん疼痛と慢性痛のオピオイド治療の違い

4 慢性痛に対するオピオイド治療の適応

5 本邦で慢性痛に使用可能なオピオイド鎮痛薬

6 オピオイド鎮痛薬の副作用

7 オピオイド鎮痛薬の眠気対策

8 オピオイド鎮痛薬の悪心・嘔吐対策

9 オピオイド鎮痛薬の便秘対策

10 各国のガイドラインにおけるオピオイド鎮痛薬投与量の上限

11 オピオイド治療開始後の経過と投与期間

12 オピオイド治療の高用量化,長期化による問題

13 オピオイド治療が高用量化,長期化する患者の特徴

14 オピオイド治療に固執する患者の特徴

15 オピオイド治療の目標設定

16 オピオイド治療中の注意点

16 人工関節手術の適応と限界

1 人工関節の種類

2 人工膝関節と人工股関節

3 人工関節の適応と原因疾患

4 変形性関節症の疼痛

5 変形性膝・股関節症に対する保存治療

6 関節温存手術

7 人工膝関節置換術

8 人工股関節置換術

9 人工関節置換術後のADL

10 人工関節の合併症(1)

11 人工関節の合併症(2)

12 術後遷延痛

13 術後遷延痛の対策

17 慢性痛に対する運動療法

1 海外の診療ガイドライン―慢性腰痛に対する治療の勧告―

2 非特異的腰痛に対する運動療法

3 運動療法の種類で有効性に差があるか?

4 CQ8 腰痛の治療に安静は必要か

5 CQ11 腰痛に運動療法は有効か

6 CQ11 腰痛に運動療法は有効か

7 運動はやればやるほど良いのか

8 中年以降でも活動性を増やすと死亡率は減少する

9 運動は,アルツハイマー病や認知症を予防できる可能性がある

10 運動は,乳癌や前立腺癌による死亡率を減少させる

11 運動はうつ状態を改善する

12 全身運動はインフルエンザに対する防御効果を強化する

13 日常の運動量が多い人は骨折の発生率が低い

18 慢性痛患者への具体的な運動指導法

1 慢性痛患者の特徴① 恐怖―回避思考

2 慢性痛患者の特徴② "0か100か"の極端な思考

3 運動開始・再開時の精神心理面への対応

4 医療者は患者に寄り添うdecision-makingのサポーター

5 運動の効果と指導の工夫

6 Pacingが重要

7 具体的な運動指導法

8 具体的な運動指導の流れ

9 運動指導法(初診)

10 運動指導法(2回目以降)

11 Case study

12 Case study―運動指導法の具体例―

13 Case study―運動指導と経過の具体例―

14 まとめ

19 慢性痛患者への実践会話

1 医療者から言われて患者が不快だと感じた

2 基本姿勢

3 慢性痛の正しい知識を提供する

4 自分の努力ってどういうこと?

5 ほめること・認めること

6 会話の中に大事なフレーズが潜んでいる

7 50/50

8 「無理」や「できない」ではなく,「何ができるか」

9 しかし...

10 患者本人が気づく 他人と環境は変えられないが...(現状を他人や周囲の環境のせいにしている)

11 責めない 自分を客観視することの必要性

12 一人ぼっちではない

13 安心させる 場合によっては根拠のない励ましも特効薬に

14 前医を悪く言わない 涙の意味

15 目標・理想

20 慢性痛に対する認知行動療法

1 慢性痛と認知行動療法

2 認知行動療法が有効な領域

3 認知行動療法とは

4 認知行動療法の基本原則

5 認知行動モデル

6 Fear-avoidance model

7 認知行動療法の他の基本原則

8 悪循環を抜けるために

9 慢性痛患者の典型的な悪循環

10 活動と安静のバランスをとる

11 アクティビティ・ペーシング

12 行動の背景に潜む認知

13 認知再構成

14 まとめ

索引

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書籍情報

  • ISBN:9784498056107
  • ページ数:300頁
  • 書籍発行日:2016年11月
  • 電子版発売日:2017年12月28日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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