こうすればうまくいく!在宅PCAの手引き

  • ページ数 : 110頁
  • 書籍発行日 : 2013年3月
  • 電子版発売日 : 2015年7月10日
2,640
(税込)
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商品情報

内容

患者さんの期待を裏切らない質の高い鎮痛を実践するために

在宅緩和ケアにおいて確実な鎮痛を得るために有効な手段の、オピオイド注射薬によるPCA(自己調整鎮痛法)の意義と活用方法が実践的にまとめられています。
病院の術後鎮痛のエキスパート、在宅で豊富な経験を持つ看護師・医師、在宅現場に注射剤を提供する市中の薬剤師の方々が執筆し、経験の少ない在宅現場の医療関係者でも安心して活用できるように作成されている、これからの在宅医療に必携の書。

序文

はじめに

痛みを伴うご病気の方のケアで大切なことは,その方の体の苦痛を和らげることであり,また,予めそれを保証することで心の苦痛を和らげて差し上げることです.そして,約束した以上はそれを確実に果たすことがプロの仕事だと考えています.

ここで基本となるのは,WHO 方式がん疼痛治療法にもあるように鎮痛薬の経口投与です.しかし,最期まで確実な鎮痛を保証する立場での問題は,「必ず薬を飲めないときがやって来る」ということです.消化器系の疾患ならなおさらです.薬を飲めない場合には経直腸(坐剤),経皮(貼付剤)などの投与経路がありますが,「痛みのために坐剤を入れる体位が取れない」,「用量が段階的にしか調節できない」,「最小用量が衰弱した患者さんには多すぎる」,「開始から適切な投与量の決定までに何日もかかる」,などの弱点があり,これらの選択肢だけではしばしば痛みの治療に難渋します.

そんな時に有効な手段が注射剤のPCA(Patient Controlled Analgesia)です.注射剤を皮下,静脈内,時に硬膜外腔,くも膜下腔に投与しますので,薬を飲めなくても確実に鎮痛を得ることができます.また,持続的に投与することで安定した鎮痛効果が得られるほか,突出痛を感じた時や痛みが辛く感じてきたとき,これから動くと痛くなることが予想されるときにはPCA ボタンを押すだけで患者さんが自ら迅速に鎮痛薬を使うことができます.言うまでもなく,注射剤なので少量ずつの投与や,小刻みな投与量の調節も容易です.

PCA は病院では多職種にある程度理解され,特に手術後の痛みのコントロールでは標準的に使用されています.しかし,こんなに良いものがあるにも関わらず,在宅の現場ではほとんど使われていないのが現状です.そして,その理由を尋ねると,「管理した経験が無いので不安だ」という不安の声,「呼吸抑制が起きたらどうするんだ」という心配の声が聞かれます.「幽霊の正体見たり枯れ尾花」,私はいつもこの不安を「おばけ」だと表現します.知識不足・経験不足があると,誰でも漠然とした不安を抱くものですが,実際には心配する必要などありません.そもそも呼吸抑制を心配すること自体が知識不足・経験不足であり,普通にやりさえすれば他の方法よりずっと安全なのです.

本書は,PCA の意義と活用方法を実践的にまとめることで,経験の少ない在宅現場の医療関係者の方にも安心して活用していただくことを目的に作成しました.著者には,病院の術後鎮痛のエキスパート,在宅で豊富な使用経験を持つ看護師・医師,在宅現場に注射剤を提供する市中の薬剤師を揃えました.これを読めば,患者さんの期待を裏切らない質の高い鎮痛を実践できるように作りました.これからの在宅医療のなかで必携の書になると信じています.


平成24年12月27日 宇都宮のクリニックにて

村井邦彦

目次

1 PCAってなに?

A.モルヒネの注射剤による鎮痛の歴史

B.オピオイドによる鎮痛〜血中濃度の上昇と鎮痛効果〜

C.注射剤による鎮痛

1 注射剤の投与経路の比較〜静脈内投与と皮下・筋肉内投与〜

2 注射による鎮痛薬の投与方法

D.PCAとは

1 PCAの歴史

2 IVまたはSC-PCAによる鎮痛薬投与法の基礎

3 PCAに用いる機器

E.在宅療養におけるIV-PCA,SC-PCAのニーズの高まりと適応,ケアの体制の整備

2 普及の問題点と対策

A.十分に活用されていない現実

B.普及のハードルと対策

1 医療行為について,在宅と病院の違い

2 在宅PCAポンプは患者,家族にとって難しい手技か?

3 PCAポンプの使用は煩わしくないか?

4 医師の考え方

5 供給面

6 コスト面

C.患者・家族・介護者の立場で感じる問題点

1 患者の場合

2 家族の場合

3 介護者(ヘルパー)

D.調剤を行う環境

E.薬局における対応

1 医療機能情報システム

2 薬剤師会

3 薬剤師会などの取り組み

3 適応

A.PCAの適応

1 経口困難症例

2 疼痛コントロールが不十分

3 全身状態不良

4 在宅での適応

B.投与経路

1 持続皮下注入法

2 持続静脈注入(CVポート)

3 持続硬膜外注入

4 持続くも膜下腔注入

C.症例提示

1 大量モルヒネ使用患者の在宅での使用

2 皮下注時の注意点

4 準備

A.必要な人的資源とそれぞれの役割

B.皮下注を行うにあたり必要なもの

C.持続注入ポンプの選択

1 機械式PCAポンプ,ディスポーザブルPCAポンプの比較

2 機械式PCAポンプの種類

3 ディスポーザブルPCAポンプの種類

5 開始と維持

A.安全な初回投与量の設定

B.鎮痛薬以外の薬剤を混合するか:混合してもよい薬の種類と量

C.薬局との事前調整:処方箋の書き方

D.薬局における無菌調製:自院で調整する場合の方法

E.自宅への配送:自宅での薬液の保管

F.各種ポンプの特徴

G.針の留置

H.トラブルの事例と正しい対処法

6 在宅での維持─訪問看護師の立場から─

A.退院時の在宅支援

1 退院時カンファレンス

2 訪問看護ステーションが行う受け入れ準備

B.在宅におけるPCAポンプの管理

1 訪問時の病状とPCAポンプの確認

2 訪問時の観察ポイント

3 皮下穿刺の方法

C.PCA利用症例の実際

7 在宅PCAのコストと保険請求

A.コスト

1 機械式PCAポンプのレンタル

2 機械式PCAポンプの購入

3 ディスポーザブルポンプの購入

4 消耗品の準備例

5 薬剤の処方例

B.保険請求

1 診療所

2 訪問看護ステーション

3 薬局

C.請求額と患者の支払月額

8 麻薬の流通,医療廃棄物

9 平成24年度診療報酬改定の評価と,今後の制度改善に期待すること


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書籍情報

  • ISBN:9784498057128
  • ページ数:110頁
  • 書籍発行日:2013年3月
  • 電子版発売日:2015年7月10日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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