精神科 必須薬を探る[改訂2版]

  • ページ数 : 248頁
  • 書籍発行日 : 2011年7月
  • 電子版発売日 : 2011年12月23日
4,180
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商品情報

内容

“本当に必要な向精神薬は何か”という視点から、精神科領域において使用される薬剤を紹介する書「精神科 必須薬を探る[改訂2版] 」の電子書籍版です。
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序文

第2版の序


本書の第1版の出版から約7年の月日が流れた.第1版は「必須薬はどれか」という編集者の無理なお願いを,各執筆者が聞き入れてくださり,薬物治療に多少なりとも新風を吹き込めたと自負している.ただ出版直後にある製薬メーカーが事前に何の連絡もないまま多くの部数を買い取るという思わぬ事態が生じた.最近,自社薬に有利な内容が含まれる本を,製薬メーカーが買い取るという約束の下,出版社に出版させることが珍しくないと聞いているため,売り上げという面ではありがたいものの,そのような本と一緒にされることを編集者として非常に危惧した.また科学的な視点で書いてくださった執筆者には申し訳なく思った.このような状況を悩んだこともあったが,今回,新たに診療場面に加わった薬剤や精神医学の考え方を取り入れて第2版を出版することになった.

7年間に新しい抗精神病薬や抗うつ薬が何剤か発売され,例えば不安に対してはベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも選択的セロトニン再取り込み阻害薬を推奨するような風潮が生まれている.しかし精神障害全体を見渡した時,治療成績がそれほど向上したようにはみえない.一方,向精神薬の過量服薬による自殺は大きな社会問題となり,2009年9月には厚生労働省が「医師に対する薬剤師からの処方内容の照会や助言」や「かかりつけ医と精神科医の連携システムの普及と問題の多い処方を見つけた場合の積極的な紹介」などを打ち出した.精神科医をはじめとする医師の向精神薬処方を社会全体が監視しなければならないという悲しい事態である.この背景には症状が改善しなければ次々に多くの向精神薬を加えるという医師の処方姿勢が関係していることは自明で,必須薬という考え方はますます必要になっていると考える.

本書が第1版にも増して臨床現場の医師やコメディカルの方に有効に活用されることを祈る.


2011年 6月

宮岡 等


初版の序


もう20年余り前のことになる.私が精神科医になりたての頃,「精神科の臨床はchlorpromazine,amitriptyline,diazepamがきちんと使いこなせれば90%以上はできる.しかしこれらについては効果や副作用を熟知しなければならない」と教えられた.ひるがえって最近は新しい抗うつ薬と抗精神病薬が続々と発売されており,しばらくはこの傾向が続くようだ.「治療手段は多い方がよい」という一見正しそうな主張もあるが,多くの種類の薬剤を使うが,どれも使いこなしているとはいえない精神科医にしばしば出会うのが現実である.また医療費削減で本当に必要な治療すら受けづらくなっている時代において薬価の著しく高い薬剤を安易に用いる傾向も気になる.

このような状況で本当に必要な向精神薬は何かを見直すことが本書の趣旨である.もし何らかの事情で用いうる薬剤の種類を減らさざるをえなくなった時,最終的にどの薬剤を残したいか,可能な限り少ない数の薬剤を選ぶとしたらどれを選ぶかという視点での検討を各執筆者にお願いした.選択すべき薬剤を絞ることで各薬剤の特徴が明らかになるであろうし,似て非なる薬剤をどう使い分けるべきかも明確になるはずである.選択の根拠について,精神科領域ではまだまだ充分なevidenceがない薬剤が多い.ところがevidenceとよべるデータが存在する薬剤のみ選択すると,研究資金の豊富な会社が発売している薬剤がとりあげられやすいという問題も出る.よって臨床経験もふまえてご自分の意見を書いていただくよう依頼した.

本書の次の段階でとりあげるべきは日本の治験や発売に至る承認のあり方である.治験が限られた精神科医の判断に頼って実施されていたり,承認の基準がきちんと開示されないとすればゆゆしき問題である.今後とりあげるべき課題としたい.

本書が精神科臨床における必須薬を考えるたたき台となることを願う.本書作成にあたり気長に編者を支えてくれた中外医学社 小川孝志氏に感謝する.


2004年 11月

宮岡 等

目次

A.必須薬の考え方 <熊谷雄治>

1.WHO必須医薬品モデルリストとは

2.必須医薬品選定の基準

3.モデルリスト使用の利益と不利益

4.診療ガイドラインと必須医薬品

5.個人における薬剤リスト

B.精神疾患治療薬

1 統合失調症(精神分裂病) <久保田正春>

1.最近の状況から

2.ブチロフェノン系とSDA

3.フェノチアジン系とMARTA

4.コンプライアンスの低下に対して

5.賦活系について

6.今後の課題

7.まとめにかえて

2 双極性障害 <鈴木映二・早馬 俊・山田和男>

1.躁病期の治療

a.躁病期の治療に用いられる治療薬

b.気分安定薬

c.抗精神病薬

d.ベンゾジアゼピン

2.うつ病相の治療薬

3.寛解期の治療

4.双極性障害の必須治療薬

3 うつ状態,うつ病―新規抗うつ薬だけでうつ病は治療できるか? <森田幸代・下田和孝>

1.新規抗うつ薬間の比較

2.三環系抗うつ薬(TCA)と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の比較

a.paroxetineとamitriptylineとの比較

b.paroxetineとclomipramineとの比較

c.paroxetineとimipramineとの比較

d.paroxetineとTCA全般との比較

3.三環系抗うつ薬(TCA)とセロトニン―ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の比較

a.milnacipranと各TCAの比較

b.milnacipranとTCA全般との比較

4.miltazapineとTCAとの比較

4 不安性障害 <張 賢徳・山口裕介>

1.なぜSSRIが第一選択薬なのか

2.BZDは本当に第二選択薬あるいは併用薬なのか

3.BZDは本当に危険な薬なのか?

4.BZDは急性期治療の第一選択薬である

5.SSRIとBZDの併用療法の思いがけない利点

6.BZDの頓服使用について

7.tandospironeについて

8.非定型抗精神病薬について

9.薬価について

10.まとめ

11.臨床への示唆

5 認知症 <野澤宗央・井関栄三>

1.高齢者の薬物治療の注意点

2.ADの薬物治療

3.VaDの薬物治療

4.DLB,FTLDの薬物治療

5.BPSDの薬物治療

6 せん妄 <萬谷智之・岡本泰昌>

1.薬物療法を行う前の留意点

2.薬物療法の基本的な考え方

3.せん妄治療に使われる薬物

a.抗精神病薬

b.ベンゾジアゼピン系薬物

c.鎮静作用を持つ抗うつ薬

d.鎮静作用を持たない薬物

4.薬物選択

7 睡眠薬 <井上雄一・内田淳子>

1.睡眠薬開発の流れ

2.睡眠薬の処方の実状と問題点

3.睡眠薬の選択と副作用,処方時の注意点

a.睡眠薬の開始と適応について

b.睡眠薬の副作用

c.睡眠薬の選択と注意点

4.睡眠薬の中止・減薬方法

C.向精神薬の副作用治療薬

1 パーキンソン症状 <森 和彦・堀口 淳>

1.抗パーキンソン病薬とその特徴

2.薬原性錐体外路症状とそれに対する各薬剤の効果

a.パーキンソニズム

b.アカシジア

c.ジストニア

d.ジスキネジア

3.各薬剤の副作用

4.抗コリン薬の投与方法とその留意点

2 起立性低血圧 <佐藤清貴>

1.起立性低血圧の症候

2.起立性低血圧の原因

3.薬剤性起立性低血圧

4.起立性低血圧の治療

5.起立性低血圧の薬物治療

a.必須薬

b.その他

3 便秘 <塚田信廣>

1.便秘の定義

2.排便のメカニズム

3.便秘の分類

4.便秘の診断

5.治療

a.生活指導

b.心理療法

c.運動療法

d.食事療法

e.薬物療法

f.外科的治療

6.精神神経疾患患者の慢性便秘

a.便秘発症のメカニズム

b.予防と治療

D.病棟,病院別にみた必須薬

1 老人専門病院 <磯野 浩>

1.老年期に多い精神疾患・精神症状

2.せん妄

3.うつ病・うつ状態

4.妄想(幻覚)

5.その他

2 小児精神科医療施設 <新井 卓>

1.小児精神科外来における必須薬

a.チック症

b.夜驚症

c.多動性障害

d.神経症性障害

e.広汎性発達障害

f.統合失調症

g.気分障害

2.小児精神科入院治療における必須薬

a.摂食障害

b.行為障害

c.強迫性障害

d.その他の疾患について

3.まとめ

3 緩和医療を含むがん治療専門病院 <大西秀樹>

1.がん専門病院(緩和医療を含む)における精神医学的治療に関する問題

2.がん患者において入院時,終末期にみられる精神医学的な疾患

3.がん医療における精神科治療の特殊性

4.緩和医療を含むがん治療専門病院において必須である薬剤

a.抗不安薬,睡眠薬

b.抗精神病薬

c.抗うつ薬

d.抗てんかん薬

e.特に必須の頻度が高い薬剤

5.緩和ケアチームで活動する際に知っておくべき薬剤─オピオイドとステロイド

a.ステロイド

b.オピオイド

c.使用されるオピオイド

4 アルコール症治療専門病院 <村山昌暢>

1.アルコール急性中毒/離脱に対する治療薬

a.diazepam(セルシン)

b.haloperidol(セレネース)

c.糖質・電解質輸液薬

d.ビタミンB群

e.強力ネオミノファーゲンシー

2.断酒維持に関する治療薬

a.cyanamide(シアナマイド)

b.disulfiram(ノックビン)

付.naltrexoneとacamprosate

3.まとめ

5 精神科救急医療 <長谷川朝穂>

1.精神科救急における治療方針

2.薬物療法を行う前に

3.薬物療法の実際

6 精神科外来クリニック <住吉秋次>

1.統合失調症

2.気分障害

3.不安障害

4.睡眠障害

5.てんかん

6.まとめ

7 企業の医務室 <田中克俊>

1.抗不安薬

2.抗うつ薬

3.睡眠薬

8 プライマリケア,内科外来 <内田貴光・堀川直史>

1.プライマリケア,内科外来における精神医学の重要性

2.プライマリケアを受診する精神疾患患者の頻度と診断分布

3.プライマリケアにおける精神疾患の診断方法

4.プライマリケアにおける精神疾患の治療

a.プライマリケア医による治療が望ましい精神疾患

b.向精神薬療法が有効な精神疾患

c.精神科への紹介

5.プライマリケアにおける向精神薬療法

a.向精神薬の分類と概説

b.プライマリケアにおける向精神薬使用の原則

c.個々の精神疾患の向精神薬療法

9 救命救急センター <上條吉人>

1.diazepamとmidazolam

a.不穏や興奮に対して

b.アルコール離脱症状に対して

c.けいれん発作に対して

d.悪性症候群に対して

2.haloperidolとrisperidone

せん妄の治療に対して

E.研修医に知っておいて欲しい向精神薬の知識 <宮岡 等・齋藤正範>

1.医師臨床研修制度の変遷

2.必須薬選択の前提

a.必須薬の考え方

b.保険適応

c.治療ガイドライン

3.必須薬の選び方と処方時の注意

a.原則は単剤投与

b.向精神薬療法以外の対応も重要である

c.期待される効果を患者に説明する

d.少量から開始し漸増する

e.向精神薬ではプラセボ効果が大きい

f.薬剤の減量,中止を頭において治療を続ける

g.情報を選ぶ

4.薬剤の種類別必須薬について

a.抗精神病薬

b.抗パーキンソン病薬

c.抗うつ薬

d.抗不安薬

e.睡眠薬

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書籍情報

  • ISBN:9784498129016
  • ページ数:248頁
  • 書籍発行日:2011年7月
  • 電子版発売日:2011年12月23日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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