- m3.com 電子書籍
- 自殺を防ぐ診療のポイント
商品情報
内容
精神科以外の医療従事者が、日々の臨床の場で、自殺予備軍をどう見極めどう対応すればいいのか、そのノウハウを紹介した一冊。
序文
序
本書を執筆している時点で自殺に関する最新の情報は2012年のものである.警察庁の発表によると,2012年には自殺者数は27,766人にのぼり,その数は交通事故死者数(4,411人)の6.3倍であった.世界中では毎年約100 万人が自ら命を絶っているとの推計もある.
わが国では年間自殺者数約3万人という事態が1998年以来,続いている.その実態を直視し,2006年には自殺対策基本法が成立し,自殺予防は社会全体の課題であると宣言された.そして,さまざまな自殺予防対策が実施されてきた.
さて,自殺予防というと精神科の問題と考えられがちだが,自殺に至る前に精神科に受診していた人は一般に考えられているほど多くはない.自殺者の大多数は生前にさまざまな精神障害にかかっていたという報告がいくつもある.ところが,そのような人々が精神科に受診しないうちに最後の行動に及んでいるという事実は,わが国だけでなく,諸外国の調査においてもしばしば指摘されてきた.
今は副作用も少なく,効果的な各種の向精神薬が開発されている.また,問題を抱えたときに自殺といった非適応的な解決策に及ぶような行動パターンを修正するさまざまな心理療法も開発されてきている.さらに,自殺の危険の高い人々にとって,周囲の人々との絆を回復させる試みも必要になってくる.以上のような治療法を組み合わせることによって,自殺の危険の高い人の抱える病理を治療し,自殺を予防する余地は十分に残されている.このように,早期の問題認識と適切な援助希求はメンタルヘルスの基礎である.
ところが,精神障害についての知識が不足していたり,いまだに社会の偏見が強かったりするために,ただちに精神科受診につながっていないのが現状である.うつ病をはじめとする精神障害に罹患した多くの人々はさまざまな身体症状を訴えて,精神科以外の各種の医療機関を受診している.特に,身近なかかりつけ医のもとを受診している.その結果,検査が繰り返される.もちろん,実際に何か重症の身体疾患があるかもしれないので,検査はぜひ進めてほしい.
しかし,明らかな異常が見つからなかったり,患者の訴えを説明するほどの深刻な原因が見当たらなかったりする場合も少なくない.しかし,どうしても納得できない患者は病院を転々と受診していくかもしれないし,あるいは,すっかり絶望して,自殺という最後の行動を選択してしまう可能性もある.この段階で,かかりつけ医がもう一歩踏み込んで,患者の心理社会的側面に光を当てるならば,自殺予防に向けて大きな役割を果たすことができるだろう.
このように,自殺は精神科だけの問題ではあり得ない.むしろ,自殺の問題を抱えた人というのは,最初の段階では精神科に受診しないで,精神科以外の医療機関を受診している例が圧倒的に多い.本書は,精神医学の専門書というよりは,精神科以外を専門とする医師や研修医に向けて,自殺予防のためにこれだけは知っておきたいという知識を中心にまとめた.
なお,どれほど努力をしても,自殺が100%予防可能なわけではなく,悲劇が起きてしまうことがあるのも現実である.自殺が起きると,同じ病院・病棟に入院していた他の患者が動揺し,その後,複数の自殺行動が生じる危険も高まる.自殺した患者の担当だった看護スタッフや医師も心理的に激しく動揺する.そこで,本書では自殺を予防するためにどのようにサインをとらえるべきかということを中心に解説するのだが,不幸にして自殺が起きてしまった場合に,遺された人々に対するケアについても取り上げる.
自殺予防は決して精神科だけの問題ではなく,医療従事者すべてがその予防のために大きな役割を果たしている点を強調したい.精神科以外の医療従事者が自殺の問題について理解し,自殺予防のためのゲートキーパーの役割を果たしていただくことができないものかと考えつつ,本書をまとめた次第である.
なお,著者らは全員が2012年4月に新設された筑波大学医学医療系災害精神支援学に所属している.自殺予防は災害精神支援学にとっても最優先課題と考えており,本書の執筆を進めた.
最後になったが,本書の企画・編集を積極的に進めてくださった中外医学社編集部鈴木真美子氏と秀島悟氏に心から感謝申し上げる.氏のご尽力がなければ,本書はそもそも生まれなかっただろう.
2013年1月
著者を代表して
高橋祥友
目次
第1章わが国の自殺の実態...〈池嶋千秋〉
1.はじめに
2.自殺者数の推移
3.自殺死亡率
4.自殺と性別
5.自殺とライフステージ
6.自殺と職業
7.自殺の原因と動機
8.自殺と時期
9.自殺の手段
10.自殺未遂
11.わが国における自殺対策
12.まとめ
第2章自殺に関連する精神障害...〈高橋晶〉
1.はじめに
2.自殺と関連する主な精神障害
第3章自殺のリスク評価...〈高橋祥友〉
1.自殺の危険因子
2.直前のサイン
3.自殺の危険の高い人に共通する心理
4.まとめ
第4章対応と治療の原則...〈高橋祥友〉
1.はじめに
2.対応の原則
3.精神科との連携
4.症例
5.まとめ
第5章不幸にして自殺が起きてしまった時に...〈樫村正美〉
1.はじめに
2.遺された人に生じる反応
3.対応の基本原則
4.まとめ
文献
索引
column
・感情労働と自殺
・過労自殺
・SNSと自殺
・震災と自殺
・PTSDと自殺
・リストカット
・群発自殺
・大学生と自殺
・自殺予防教育
・マスメディアと自殺
・映画に描かれた自殺
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
-
全文・
串刺検索 -
目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
-
PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
-
南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
-
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:5.3MB以上(インストール時:11.6MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:21.2MB以上
-
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:14.1MB以上(インストール時:35.2MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:56.4MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784498129542
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2013年5月
- 電子版発売日:2014年8月29日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍(iOS/iPhoneOS/AndroidOS)が必要です。
※書籍の体裁そのままで表示しますため、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。