ブラッシュアップ急性腹症 第2版

  • ページ数 : 412頁
  • 書籍発行日 : 2018年11月
  • 電子版発売日 : 2018年11月23日
5,280
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商品情報

内容

腹痛診療のバイブルが,およそ4年半ぶりに全面改訂.

腹痛の初期診療とは「手術が必要な疾患をピックアップする作業」である,とのコンセプトにさらに磨きをかけた.グローバルスタンダードの流れを踏まえた修正を施し,画像診断を中心に最新の知見を追加.著者の個人的経験に基づく記述にはこの間に得られた新たなエビデンスを付記した.

序文

医師になってはじめに赴任した病院で最初に所属したのが救急科であった.1年目医師は救急室を受診する全患者さんの初診をみるのが役割だった.ひっきりなしにやってくる外来患者さんを診ながら,「外来やりながらでも救急車が来たらそっちを先に診ろ!」と先輩医師に言われた.「救急車が来たのはどうやってわかるんですか?」と質問すると,「サイレンの音でわかるけど,病院に近づくとサイレン鳴らないから時々窓の方をみて赤灯がまわっているのを見て気づけ!」とのたまわれた.他の患者さんの診療中に1日に何十台も来るのだ,気づくわけがない.結局「せんせー,救急車来ているよ.何してるの!!」と看護師さんに怒られる."せんせー"という語にさして尊敬の意味が無い事もよくわかった.当時は救急車からの事前情報などない.周辺の救急隊はすべての疾患を自動的にすべてこの病院に搬送していた.何が来るかは来てみないとわからない.3台くらいまとめてくることも珍しくなく,てんてこ舞いの日々であった.

しばらくすると救急車から事前情報が入るようになった.「何十何歳男性,階段から転落して頭部外傷,10分で到着」などと前もって教えてくれる.教えてくれるのはいいが,かならずしもこちらの知りたい情報があるわけではない.来てみると別な主訴だったりもする.到着するまでの時間も外来をつづけているが,救急車の方が気になってしまってかえって集中できない.どうせ全部診るのだから前もってちょっと知ってても知ってなくてもはっきり言ってあんまり変わらない,というより私の場合は気になって集中力が落ちる分だけマイナスと言えた.

この救急隊からの情報だが,最初のうちはより重症な主訴であったばあいに「ドキッと」したのだが,そのうち要領がわかってきて「CPA」と言われた時がもっとも「ホッと」した(不謹慎かもしれないが......).やることは決まっているし手伝いも周りにいる.「胸痛」のときは心筋梗塞と大動脈解離の2つを,「頭痛」のときはくも膜下出血と髄膜炎の2つをつねに考えれば良いことを学んだ.発熱ときたら血液培養を取って痰と尿のグラム染色をし,意識障害ときたら最終的にわからなくても「あいうえお」なんだかを鑑別すれば及第点はもらえた.外傷や熱傷も概ね手順がきまっている.ところが,「腹痛」はいつまで経っても苦手だった.疾患が多彩でやばそうなものを少しだけにしぼることができない.アッペや消化管穿孔などを経験してもつぎからつぎへと知らなかったけど重症で手術になってしまう腹痛が現れる.「せんせー,~分後に腹痛が来まーす」なぞと言われるとこちらの心窩部の方がキリキリしそうであった.ちょっとだけ年数が上の先輩医師もやっぱり腹痛は苦手らしく,「この人なんだろうねー??」と一緒に悩んでいるうちに時間がたってしまう.あとからやってきた強面の外科医に「何時間も前から来てるのになんでさっさと声かけないの!!」とドヤされてしまうのが常であった.こんな時,持っていはいるけど読んでない"COPE"(Cope's Early Diagnosis of the Acute Abdomen)を紐解いてみると,さっき怒られた,自分では全く想像つかなかった疾患が,果たして教科書通りの典型例であった.

その後研修を終え,外科医となり,幸か不幸か医師としてのキャリアのほぼすべてを救急病院で過ごしてきた.そのなかで学んできたことは「腹痛」はこれだけ除外しておけばとりあえず大丈夫という項目にまとめることが難しく,数ある緊急疾患の典型例を1つ1つ経験してゆかねばならないということであった.それがどれほどの経験かは自分ではよくわからないのだが,そうした経験がこれからキャリアアップしてゆく若手医師に何かのヒントになればというつもりで「一般外科指南書」というサイトを数年前から開設している.このたび中外医学社の五月女さんよりお声かけをいただき,一般外科指南書のうちの「急性腹症のトレーニング」の項目を全面的に改訂して本書を執筆することとなった.遅筆で〆切を守れないことしばしばでありながら粘りづよく支えていただいたばかりか,煩雑な構成をとてもみやすいレイアウトに仕上げてくださった.中外医学社ならびに五月女さんにはこの場をかりて深く御礼を申し上げます.


平成26年3月

窪田 忠夫

目次

第1章 腹痛疾患へのアプローチ

1 病歴聴取

1 発症からの時間「いつからか?」

2 部位「どこが痛む?」

3 発症時の様子「痛みの始まり方」

4 持続痛か? 間欠痛か? 発作性か?

5 悪心・嘔吐,下痢

6 発熱の有無

7 その他の病歴

8 High risk patientsの抽出

2 身体所見

1 バイタルサインの確認

2 視診

3 聴診

4 打診

5 触診

6 直腸診

7 意識レベルのチェック

8 High risk patientsの抽出

3 初期診断と鑑別疾患

1 初期診断について

2 鑑別疾患について

3 ROS(Review of systems)

4 確定診断のための検査

1 血液検査

2 尿検査

3 単純X線

4 超音波検査

5 腹部CT

6 MRI

5 確定診断がつかないとき

1 帰宅して経過観察

2 入院して経過観察

3 緊急手術/診断的腹腔鏡(=外科コンサルト)

6 経過観察と再評価

1 確定診断がついている場合

2 疾患の局在性はわかったが診断に至っていない場合

3 全然わからない場合

7 各種アプローチ法

1 緊急性からのアプローチ

2 罹患部位からのアプローチ

3 痛みの性状からのアプローチ

4 随伴症状からのアプローチ

5 女性へのアプローチ

第2章 熟知すべき代表的な外科疾患

1 急性虫垂炎

1 急性虫垂炎の病歴聴取

2 急性虫垂炎の自然経過

3 急性虫垂炎の身体所見

4 急性虫垂炎の初期診断と鑑別疾患

5 急性虫垂炎の検査所見

6 急性虫垂炎の確定診断

7 急性虫垂炎の病期評価

8 急性虫垂炎の治療方針

9 特殊な虫垂炎

2 小腸閉塞

1 はじめに

2 小腸閉塞の病歴

3 小腸閉塞の身体所見

4 小腸閉塞の初期診断と鑑別疾患

5 小腸閉塞の検査

6 小腸閉塞の確定診断/詳細診断

7 小腸閉塞の治療方針

3 大腸閉塞

1 大腸閉塞の分類

2 大腸閉塞の病歴

3 大腸閉塞の身体所見

4 大腸閉塞の初期診断と鑑別疾患

5 大腸閉塞の検査

6 大腸閉塞の確定診断と緊急性の評価

7 大腸閉塞の治療

8 その他の大腸閉塞

4 上部消化管穿孔

1 上部消化管穿孔の分類と病態

2 上部消化管穿孔の病歴

3 上部消化管穿孔の身体所見

4 上部消化管穿孔の初期診断と鑑別疾患

5 上部消化管穿孔の検査

6 上部消化管穿孔の確定診断

7 上部消化管穿孔の治療方針

8 腹膜刺激症状を伴わない上部消化管穿孔に注意

5 下部消化管穿孔

1 下部消化管穿孔の分類と程度

2 下部消化管穿孔の病歴

3 下部消化管穿孔の身体所見

4 下部消化管穿孔の初期診断と鑑別疾患

5 下部消化管穿孔の検査

6 下部消化管穿孔の確定診断

7 下部消化管穿孔の治療

6 胆石症/急性胆嚢炎

1 結石の成因について

2 胆石症/急性胆嚢炎の病態と自然経過

3 胆石症/急性胆嚢炎の病歴

4 胆石症/急性胆嚢炎の身体所見

5 胆石症/急性胆嚢炎の早期診断と鑑別診断

6 胆石症/急性胆嚢炎の検査

7 胆石症/胆嚢炎の確定診断

8 胆石症/急性胆嚢炎の治療方針

9 特殊な胆嚢炎

7 急性胆管炎/総胆管結石症

1 急性胆管炎/総胆管結石症の病態

2 急性胆管炎/総胆管結石症の病歴

3 急性胆管炎/総胆管結石症の身体所見

4 急性胆管炎/総胆管結石症の早期診断と鑑別疾患

5 急性胆管炎/総胆管結石症の検査

6 急性胆管炎/総胆管結石症の確定診断

7 急性胆管炎/総胆管結石症の治療

8 特殊な胆管炎

8 急性腸管虚血

1 急性腸管虚血の分類

2 急性腸管虚血の病歴

3 急性腸管虚血の身体所見

4 急性腸管虚血の初期診断と鑑別疾患

5 急性腸管虚血の検査

6 急性腸管虚血の確定診断

7 急性腸管虚血の治療方針

8 腸管虚血の予後

9 結腸虚血

10 上腸間膜静脈血栓症

9 破裂性腹部大動脈瘤

1 破裂性腹部大動脈瘤の病歴と身体所見

2 破裂性腹部大動脈瘤の診断と治療方針

3 腹部大動脈瘤手術後の合併症

4 特殊なタイプの大動脈瘤

10 嵌頓ヘルニア

1 嵌頓ヘルニアの病歴

2 嵌頓ヘルニアの身体所見/早期診断/鑑別疾患

3 嵌頓ヘルニアの検査/確定診断

4 嵌頓ヘルニアの治療方針

5 各種腹壁ヘルニア

 コラム1 イレウス撲滅運動

第3章 外科的疾患の鑑別となる疾患

1 急性憩室炎

1 急性憩室炎の病歴

2 急性憩室炎の身体所見

3 急性憩室炎の初期診断と鑑別疾患

4 急性憩室炎の検査

5 急性憩室炎の確定診断

6 急性憩室炎の重症度評価と治療

7 患者教育

8 特殊な憩室炎

2 急性膵炎

1 急性膵炎の病歴

2 急性膵炎の身体所見

3 急性膵炎の初期診断と鑑別疾患

4 急性膵炎の検査

5 急性膵炎の確定診断と評価

6 急性膵炎の治療

3 急性腸炎/感染性下痢症

1 急性腸炎の病歴

2 急性腸炎の身体所見

3 急性腸炎の初期診断と鑑別疾患

4 急性腸炎の検査

5 急性腸炎の確定診断

6 急性腸炎の治療方針

4 非感染性腸炎

1 虚血性腸炎

2 薬剤性腸炎

3 炎症性腸疾患

4 血管炎に伴う腸炎

5 好中球減少性腸炎

6 好酸球性腸炎

5 アニサキス症

1 アニサキス症の病歴と身体所見

2 アニサキス症の検査と診断

3 アニサキス症の治療

4 アニサキス症のピットフォール

6 急性潰瘍/急性胃炎

1 急性潰瘍

2 急性胃炎

7 強い腹痛を呈する内科的疾患

1 上部消化管穿孔を疑わせる強い心窩部痛

2 急性胆嚢炎を疑わせる右季肋部痛

3 虫垂炎を思わせる右下腹部痛

4 汎発性腹膜炎を呈する広範な腹痛

8 腹痛をきたす胸部疾患

1 心筋梗塞/不安定狭心症

2 大動脈解離

3 特発性食道破裂

4 肺炎/胸膜炎/膿胸

 コラム2 ちゃんこ  イレウス  インターン

第4章 頻度は低いが緊急手術(処置)が必要な疾患

1 破裂性腹腔動脈瘤

1 破裂性腹腔動脈瘤の病歴と鑑別診断

2 破裂性腹腔動脈瘤の治療

2 内ヘルニア

1 内ヘルニアの病態

2 内ヘルニアの診断と治療方針

3 内ヘルニアの種類

3 腸重積

1 腸重積の分類

2 腸重積の病歴

3 腸重積の身体所見

4 腸重積の初期診断と鑑別疾患

5 腸重積の検査と確定診断

6 腸重積の治療

7 胃切除術後腸重積

4 輸入脚症候群

1 輸入脚症候群の解剖と生理

2 輸入脚症候群の病歴

3 輸入脚症候群の身体所見

4 輸入脚症候群の初期診断と鑑別疾患

5 輸入脚症候群の検査と確定診断

6 輸入脚症候群の治療

7 輸入脚症候群の予後

 コラム3 東の横綱と西の横綱

第5章 知識として知っておくべき疾患・病態

1 腹痛をきたす婦人科疾患

1 破裂性子宮外妊娠

2 骨盤腹膜炎

3 卵巣捻転

4 破裂性卵巣嚢胞/卵巣出血

5 子宮内膜症関連病変

6 子宮筋腫関連病変

7 破裂性子宮留膿腫

2 腹痛を呈する泌尿器科疾患

1 腎血管疾患

2 尿管結石症

3 腎盂腎炎

4 尿閉

5 膀胱破裂

6 尿膜管洞/嚢胞

3 小児の腹痛

1 急性虫垂炎

2 腸重積

3 上腸間膜動脈症候群

4 先天奇形に伴う腹痛

5 異物に伴う腹痛

6 各種捻転

7 全身性疾患に伴うもの

4 肝疾患に関連した腹痛

1 急性アルコール性肝炎

2 原発性細菌性腹膜炎

3 破裂性肝細胞癌

4 肝膿瘍

5 肝硬変合併症と腹痛

5 脾疾患

1 脾梗塞

2 脾破裂

3 脾膿瘍

4 迷走脾

6 大網・腸間膜の疾患

1 大網捻転

2 大網膿瘍

3 腸間膜リンパ節炎

4 腸間膜脂肪織炎

7 分類不能な疾患

1 脂肪垂炎

2 腸管気腫症

3 門脈ガス

4 胆道気腫

5 胆道出血

8 術後および医原性の腹痛

1 術後一般の問題

2 胃術後の腹痛

3 大腸手術後の腹痛

4 胆道変更後の腹痛

5 婦人科術後の問題

 コラム4 魔法の治療

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書籍情報

  • ISBN:9784498140394
  • ページ数:412頁
  • 書籍発行日:2018年11月
  • 電子版発売日:2018年11月23日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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