小児診療基本手技マニュアル[改訂2版]

  • ページ数 : 197頁
  • 書籍発行日 : 2012年4月
  • 電子版発売日 : 2012年11月22日
6,600
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商品情報

内容

日常診療や救急現場で必須の手技の、適応・準備・手順・注意点・ポイントなど、イラストを多用しながらわかりやすく解説。より安全性の高い、平易で、確実な手技の確立を目指して、著者らの豊富な経験をもとにしたノウハウが満載。今版では新たに総論を設け、さらに幅広い手技を取り上げることでよりいっそうの充実をはかった。

序文

2版の序


医療は不確実性の高い職業とされていることは周知されているものの,現実的には医療事故ではその不確実性に関する思考は無視されることが多く,周知しているはずの受療者も確実性の一面しか訴えません.想定外が頻発したら困りますが,現実的に,想定外の生体反応が起こることも事実です.このような不確実性を最小限に留める医療に不可欠なものは,医療の基本手技であり,基本的医療姿勢でしょう.すなわち,Physical skillsとPsychological skillsとの両輪がより安全な医療提供のためには必要です.特に医療姿勢は重要であり,patternalな接遇はpit-fallを招きやすい.少なからず謙虚な気持ちで種々の症状に向かい合い,その軽減~治癒への医療技術の提供と支援が求められています.

このような医療提供の仁術的な一面とは別個に,確固たる医療技術を習得しておくことは,前述の次元の手前・基礎の部分です.いかに基本的な手技をマスターしておくかは,医療行為そのものにadvantageを与えてくれるか否かと表裏一体です.医療姿勢の学習とともに,基本手技をしっかりとマスターしておくことは診療の第一線に立つためには不可欠なことです.また,小児救急医療は医学としても医療学としても仁術としても面白い一面がありますが,社会的弱者である子どもが傷病に陥ることからも,より適確な基本手技をマスターしていて,子ども達の苦痛を最小限・最短期間にするために披露しなければなりません.救急医療という待ったなしの場面でこそ,特に基本手技の習得度によりその医療行為の結果の違いが鮮明になるものと思われます.

さらに,基本手技として,その病態に沿って一括りにすることもできる手技もありますが,それぞれに工夫を凝らして継承されている基本手技もあります.日本の中でもその地域毎に若干異なる医療技術・手技も少なくありません.こういう観点から,北九州市立八幡病院小児救急センターで汎用している基本手技を当マニュアルの基本として刊行し,今回,改訂を行いましたが,是非とも本書を利用される施設でそれなりにモディファイしていただき,自前の基本手技マニュアルを作成していただきたい.本書がその礎石となれば本望ですし,子ども達のためにより良い基本手技がわが国で確立され,浸透していくことを望んでいます.

それとともに,改めて,本書の改訂を支援してくださった中外医学社編集部の皆様に厚く御礼申し上げます.


2012年 4月

市川 光太郎


初版の序


小児救急医療自体が学問的に体系化されていず,全国各地の施設で,先人達の治療方法を継承し,それぞれに利点を追及して,三々五々に自分流に発展してきている感があります.腸重積症の治療法をみてもバリウム,ガストログラフィン,生理食塩水,空気と三者三様であり,さらにX線透視下,超音波下とその方法技術論も統一化されていない.あるいはその鎮静の方法や薬剤の選択においても各施設なりの特徴があるのが現実である.実際に初心者から熟練者まで平易かつ確実に行える手技方法が完成されることが理想であるが,その治療ガイドラインの確立は,こと技術的要素の強い手技スキルでは困難な一面があります.採血や点滴の際の患児の固定1つ取っても千差万別であり,輸液の固定テープ,挿管チューブの固定法など,多くの手技に地域や施設の特徴があることが現実です.このような現状の中,各々の手技に一長一短があることは事実であり,画一的な手技・技術に統一する必要はないと思われますが,より安全性の高い,平易で,確実な,そして子ども達にやさしい手技の確立・普及に向けて,その方法論を議論していくことは重要と思われます.

いずれにせよ,小児の処置は大変であるというのが一般的であり,処置が簡単という医療者はいないはずです.そこで,幾らかでも小児の処置が大変という先入観が解消されるように,その手技マニュアルを図説中心に企画してみました.実際に,当小児救急センターには東北~関東~関西~九州と全国各地域で研修を積んだ小児科医が集まっていますので,当センターでのオリジナルな基本手技に限らず,各地域の工夫された手技スキルが反映されるように,スタッフ全員で手技マニュアルを作成するように努めました.

この基本手技マニュアルが多くの実践者から議論され,さらにその手技マニュアルが洗練されていくことが最も望まれていることと考えています.このような観点に立ち,その議論の土台となるべき,手技マニュアルを作成し,これを叩き台として数年ごとに改訂を重ねていくことができれば,小児医療・小児救急医療における,理想的な基本マニュアルの完成が行えるでしょう.このことによって,より普遍的な,全国画一的な手技の方法論が普及していくものと考えられます.本書が,このように将来的に発展していく基礎となる基本手技マニュアルとなればと心から願うとともに,多くの施設で,そして実際現場で,日夜実践している小児科医や救急医の皆さんが,現在の自分の手技を見直し,再考するきっかけとなり,多くの意見が,より良い小児救急医療の提供とその質の向上に反映されれば,幸いと考えています.


2006年 7月

市川 光太郎

目次

総論

1.診療の基本

2.インフォームド・アセント

3.家族への対応--小児科において特に重要なこと

Ⅰ 小児医療・一般診療における基本手技

1.採血(新生児~幼弱乳児,乳幼児以降)

2.静脈路(点滴・輸液)確保

3.各種検体におけるグラム染色法の基本

A.グラム染色法の意義

B.グラム染色法の原理と手順

C.小児における検体採取とグラム染色法

D.腸内細菌科と非発酵菌の鑑別

4.鼻咽頭培養,迅速診断キット検査

A.咽頭培養・鼻咽頭培養

B.迅速診断キット検査

5.尿・便・腟培養

A.尿培養

B.便培養

C.腟培養

6.浣腸・高圧浣腸

A.浣腸

B.高圧浣腸

7.導尿の基本

8.皮内注射

9.皮下注射

10.筋肉内注射

11.口腔内吸引,排痰,肺理学療法(非挿管例)

附)肺内パーカッションベンチレータ(IPV)による肺理学療法

12.川崎病における心エコー基本

13.各種予防接種法

A.インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチン

B.肺炎球菌ワクチン(PCV7)

C.B型肝炎ワクチン(HBV)

D.3種混合ワクチン(DPT)

E.BCG

F.ポリオワクチン

G.麻しん,風しん(MR)ワクチン

H.水痘

I.流行性耳下腺炎

J.日本脳炎

K.インフルエンザウイルス

L.二種混合(DT)

M.ヒトパピローマウイルス

N.ロタウイルス

Ⅱ 小児救急医療における基本手技

14.気道確保

A.用手的気道確保

B.口咽頭エアウェイ

C.鼻咽頭エアウェイ

D.バッグ・マスク換気

E.気管挿管

15.小児の心肺蘇生法(2010AHAガイドライン)

16.新生児の心肺蘇生法

17.自動体外式除細動器(AED),手動式除細動器

18.骨髄針による静脈路確保(IOI)

19.中心静脈路確保

末梢挿入型中心静脈カテーテルPICC

20.動脈内留置カテーテル

21.血液・骨髄・髄液培養

A.血液培養

B.骨髄培養

C.髄液培養

22.腰椎穿刺

23.胸腔穿刺,胸腔持続吸引

24.骨髄穿刺

25.膀胱穿刺法

26.胃洗浄

27.栄養チューブ挿入(胃・十二指腸)

28.イレウスチューブの挿入

29.膀胱留置カテーテル

30.酸素療法

31.腸重積非観血的整復術

32.異物による気道閉塞の解除

33.異物除去(耳・鼻)

34.異物除去(食道・胃)

35.鼠径ヘルニア嵌頓整復術

36.肘内障整復

37.化膿性皮膚疾患の初期対応

38.小外科における縫合

39.熱傷治療基本

40.FASTの基本

41.検査時の鎮静法

42.院内急変時の対応

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書籍情報

  • ISBN:9784498145030
  • ページ数:197頁
  • 書籍発行日:2012年4月
  • 電子版発売日:2012年11月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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