脳静脈エッセンス 脳静脈の歩き方

  • ページ数 : 252頁
  • 書籍発行日 : 2016年10月
  • 電子版発売日 : 2017年12月1日
10,560
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商品情報

内容

いざ、魅惑の脳静脈をめぐる旅へ!

好評書『 脳動脈コンプリート』に続き、今度は脳静脈の世界を旅するためのガイドブックが遂に登場!あまり目立たない存在でありつつ、脳神経外科医も知っているようで実は知らないことが多いと思われる脳静脈にフォーカスを当、脳静脈の発生と解剖・病理と画像診断、静脈洞の構造や各アプローチに対する注意点などを詳細に解説。臨床で大いに役立つ指針書!

序文

かねてより私にとりまして脳の静脈は不思議な存在でした.手術で最初に出くわす血管でありながら,術中何事もなければ術後振り返ることもなく,存在すら忘れてしまうのが脳静脈です.心拍出量の15% の血液が動脈を介して脳を環流し,また同じ量の血液が静脈を経て心臓に戻りますが,動脈に比べ破綻や閉塞が少ないのも特徴です.体位によって流速が変化し,頭蓋内圧や髄液循環にも大きく影響します.体幹から突出した頭蓋ですが,四肢に比べ弁がないのに脳表面や脳室内深部で血液を還流させます.また弁がない故に頭蓋骨を通して血液が行き来します.硬膜組織に囲まれて走行する静脈洞も頭蓋骨内を走行する部分とそうでない部分があり,さまざまなバリエーションを持って存在します.まったく解っているようで解っていない,謎の多い脈管です.弱そうで強く強そうで弱い,下手に扱うととんでもないことになる,まるで女性のような存在でもあります.

これまでこの脳静脈に焦点をあてた臨床現場に役立つ指南書は存在しませんでしたが,今回多くの執筆者に恵まれ,この「脳静脈エッセンス」を上梓することができました.

脳静脈の発生と解剖,病理と画像診断,静脈洞の構造や各アプローチにおける注意点など,脳神経外科専門医および脳血管内専門医を目指す若い脳神経外科医が,頭の中で整理しやすいものになるよう構成に配慮しました.一見静脈とは関係ないように思えるAir sinusについても,静脈洞との関連からその修復について,手術経験豊富な筆者に執筆をお願いしました.これまで注目されることが少なかった導出静脈や体幹のBatson静脈叢についても,唯一のまとまった記述になったのではないかと考えています.

前著「脳動脈コンプリート」とは異なり,「コンプリート」とは言えないであろうために「エッセンス」としましたが,完璧でないゆえに魅力ある脳静脈にフォーカスを置く最初の技術書になるものと確信しています.

手に取る脳神経外科医の一助となることを願います.

2016年3月

波出石 弘

目次

[1]脳静脈の発生と解剖

A.脳静脈の発生:総論

B.脳静脈の発生と解剖:各論

1)表在性脳静脈系

2)深部静脈系

[2]脳静脈解剖概要

A.概要

B.発生

C.上矢状静脈洞と関連静脈

D.直静脈洞と関連静脈

E.静脈洞交会,横S状静脈洞と関連静脈

F.後頭蓋窩静脈系

G.海綿静脈洞

H.Condylar vein

[3]静脈洞の解剖

①海綿静脈洞

A.海綿静脈洞近傍の骨構造

B.海綿静脈洞に流入する静脈

C.海綿静脈洞部内頚動脈

D.海綿静脈洞壁と脳神経

E.前床突起とproximal ringおよびdistal ring

②上矢状洞,横およびS状静脈洞

A.硬膜静脈洞の経路と主な流入静脈

1)海綿静脈洞

2)上矢状静脈洞

3)下矢状静脈洞と直静脈洞

4)静脈洞交会

5)横静脈洞

6)S状静脈洞と頚静脈球

7)硬膜静脈洞の副次流出路

B.硬膜静脈洞の構造(上矢状静脈洞を例に)

1)硬膜静脈洞の基本構造

2)硬膜静脈洞の周辺構造

[4]脳静脈疾患の病理

A.脳血管形成異常

B.先天代謝異常

C.脳静脈外傷

D.脳静脈炎症

E.新生物の脳静脈に対する影響

F.脳静脈閉塞症

[5]静脈奇形update

I.Developmental venous anomaly(DVA)

A.疾患概念

B.臨床像

C.画像所見

D.鑑別診断

E.治療

II.遺伝性出血性毛細血管拡張症

A.疾患概念

B.責任遺伝子

C.診断基準と臨床像

D.画像所見

E.治療

[6]脳静脈と各手術アプローチ

①Interhemispheric approach

A.Interhemispheric approachに関連する静脈解剖

B.脳動脈瘤に対するアプローチ

1)前交通動脈瘤

2)前大脳動脈遠位部動脈瘤

C.アプローチの実際

②Sylvian approach

A.体位・頭位・皮切

B.開頭・硬膜切開

C.Superficial sylvian vein(SSV)とその周辺静脈の解剖学的特徴

1)SSV

2)SSVへ流入するbridging vein

3)Frontobasal bridging vein

4)Insular vein

5)Deep middle cerebral vein

D.Transsylvian approach

1)Transsylvian approachにおける最終イメージ

2)SSVの走行の確認

3)Sylvian fissure表面の剥離

4)Sylvian fissureの剥離

5)Sylvian valleculaeの剥離

6)Chiasmatic cistern,carotid cisternの剥離

E.意図せず損傷した場合の対処法

③Subtemporal approach

A.準備

B.体位

C.頭位

D.皮膚切開

E.開頭

F.硬膜切開

G.硬膜内操作

H.閉頭

I.Subtemporal approachに関係する静脈,静脈洞

④Lateral suboccipital approach

A.体位・頭位

B.皮膚切開・開頭・硬膜切開

C.硬膜内アプローチ

D.Lateral suboccipital approachにおいて問題となる静脈

⑤Trans-petrosal approach

A.手技:Combined trans-petrosal approach

1)体位

2)皮膚切開

3)解剖学的指標の確認

4)Posterior petrosectomy

5)Anterior petrosectomy

B.Combined trans-petrosal approachに関係する静脈解剖

⑥Occipital transtentorial approach

A.体位・頭位

B.皮膚切開・開頭・硬膜切開

C.硬膜内操作と剥離する静脈

D.静脈損傷時の対応

⑦Infratentorial supracerebellar approach

A.Infratentorial supracerebellar approachの特徴

B.周辺解剖

1)深部静脈系

2)後頭蓋窩静脈系

3)架橋静脈

C.体位

D.皮膚切開,開頭,硬膜切開

E.術中問題となる静脈の対応

⑧下垂体門脈系

A.解剖

B.下垂体の血管解剖

C.下垂体門脈の機能

D.手術アプローチ

⑨脳室内静脈と内視鏡手術

A.脳表から前角へ

B.モンロー孔周囲

C.第三脳室から脚間槽へ(第三脳室底開窓)

D.第三脳室後半部,中脳水道(松果体部腫瘍,中脳水道形成)

E.側脳室体部(中核穿孔,脳室洗浄)

F.体部から四丘体槽へ(脳室-四丘体槽短絡)

G.側脳室三角部

H.側脳室下角

⑩導出静脈

I.乳突導出静脈

A.導出静脈(emissary vein)

B.乳突孔(mastoid foramen:MF)/乳突管(mastoid canal)

C.乳突導出静脈(mastoid emissary vein: MEV)

D.外側後頭下開頭

II.Posterior condylar canalとcondylar emissary veinの解剖

A.Posterior condylar canalとcondylar emissary veinの解剖

B.Trans-condylar fossa approachでのcondylar emissary veinの処理について

C.Condylar emissary veinを頭蓋外で凝固止血して切断する方法

D.Condylar emissary veinを頚静脈孔まで追いかける方法

E.症例提示

⑪静脈グラフト採取

A.大伏在静脈の解剖

B.大伏在静脈グラフト採取の適応

C.術前評価と注意点

D.手技

1)手術室内での準備

2)大伏在静脈の表層側の剥離

3)分枝の処理

4)採取

[7]硬膜動静脈瘻の開頭手術

①前頭蓋底

A.症例提示

B.前頭蓋底硬膜動静脈瘻dAVFに対する開頭手術手技のキーポイントと注意点

②横静脈洞部

A.横静脈洞部硬膜動静脈瘻の疫学

B.横静脈洞部硬膜動静脈瘻の分類と症候

C.横静脈洞部硬膜動静脈瘻の治療適応と治療方法

D.横静脈洞部硬膜動静脈瘻の外科治療

③頭蓋頚椎移行部

A.治療戦略

B.外科的根治術

1)手術支援

2)体位

3)皮切から開頭

4)硬膜内操作

5)閉創

[8]血管内アプローチ

①静脈系のアクセスルートの画像支援

A.病変部の評価

B.硬膜動静脈瘻塞栓術のアクセスルート

1)穿刺部位

2)シャント部位別アクセスルート

C.経静脈的塞栓術中の画像支援

1)コントロールカテーテルからの頚動脈造影

2)3D Road map

D.閉塞静脈洞を介したアクセス法

②血管内治療に必要な静脈解剖

A.前頭蓋底部の静脈

B.上矢状静脈洞と同部周辺の静脈

C.横静脈洞,静脈洞交会と同部周辺の静脈

D.S状静脈洞,後頭静脈洞と同部周辺の静脈

E.後頭蓋窩静脈の解剖のポイントとanterior condylar confluentの理解

1)脳幹の静脈

2)橋のsuperficial veins

3)延髄のsuperficial veins

4)中脳のsuperficial veins

5)小脳の静脈

6)Petrosal draining group

7)Galenic draining group

8)Tentorial draining group

9)Anterior condylar confluence

③経静脈的アプローチに必要なデバイスの準備とtechnical tips

A.ガイディングシステム

1)下錐体静脈洞を介した海綿静脈洞へのアプローチ

2)顔面静脈や浅側頭静脈を介したCSへのアプローチ

3)横S状静脈洞へのアプローチ

4)その他の特殊なアプローチ

B.マイクロカテーテルとガイドワイヤー

C.塞栓物質

D.システム数

E.動脈側のデバイス

④深部静脈系と海綿静脈洞の読影と解剖

A.深部静脈系の発生と解剖

B.海綿静脈洞の発生と解剖

[9]Air Sinus(構造とその修復)

①Frontal sinus, Ethmoid sinusおよびSphenoid sinus

A.Frontal sinus(前頭洞)

1)解剖

2)修復手技

B.Ethmoid sinus(篩骨洞)

1)解剖

2)修復手技

C.Sphenoid sinus(蝶形骨洞)

1)解剖

2)修復手技

②側頭骨のair cell

A.側頭骨petrous partのair cells

B.Mastoid cellsと手術における注意点

C.Petrous cellsと手術における注意点

[10]Batson静脈叢

A.解剖

1)Batson静脈叢の歴史

2)Batson静脈叢の解剖

B.Batson静脈叢の機能と臨床的意義

1)Batson静脈叢の機能

2)Batson静脈叢の臨床的意義


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書籍情報

  • ISBN:9784498228665
  • ページ数:252頁
  • 書籍発行日:2016年10月
  • 電子版発売日:2017年12月1日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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