覚醒下手術 ことはじめ

  • ページ数 : 226頁
  • 書籍発行日 : 2019年3月
  • 電子版発売日 : 2019年3月29日
8,800
(税込)
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商品情報

内容

チームで取り組む覚醒下手術!手技から運動・感覚・言語のモニタリング、覚醒機能や高次脳機能評価まで解説。

脳機能を温存しながら安全かつ最大限に病変を摘出することを可能とする覚醒下手術について、手術の流れに沿って、手技から運動・感覚・言語のモニタリング、視覚機能や高次脳機能評価まで精緻に解説した書.覚醒下手術に関わる医療者必携の一冊.

序文

発刊にあたって

私が,覚醒下手術を初めて見たのは2007年だったと記憶しています.当大学で行われたグリオーマの手術でした.以後大学での覚醒下手術は多くありませんでしたが,脳腫瘍治療担当医師として年に数回の覚醒下手術を行っていました.2013年7月にフランス モンペリエのDuffau教授を訪ね,覚醒下グリオーマ摘出術を見学させていただきました.手術顕微鏡もナビゲーションも使用しない,覚醒下でのタスクに対する患者さんの反応を頼りにしたマクロの手術でした.テクノロジーが進歩してグリオーマ摘出術に多くの医療機器・技術が導入されている昨今の状況の中にあって,肉眼のみで患者さんの反応および術者の知識と経験に依存した手術は強い衝撃でした.覚醒下手術チームの木下雅史講師,作業療法士の中嶋理帆助教が時期を違えてそれぞれDuffau教授の下で留学生活を送り,また言語聴覚士の沖田浩一氏が同施設に見学に赴き,最先端の覚醒下手術を学びました.これに伴い当施設での覚醒下手術件数は増加しました.しかしながら,我々の覚醒下手術の経験はまだ200件程度です.この200件は毎回が発見で,独自で創意工夫を重ねてきました.運動・感覚・言語のモニタリングのみならず,視覚機能や高次脳機能評価を行うようになって,最近は全国から多くの先生方に見学に来ていただくようになりました.そのような状況の中で,まだまだ少ない経験であっても,覚醒下手術の立ち上げを施設で担う先生方,また施設の覚醒下手術チームの構成メンバーに向けてきっと役立つ本が作れると考え,本書をまとめました.執筆者は当施設の覚醒下手術チームメンバーで,関連するパートをそれぞれ専門分野の観点から担当していただきました.少しでもわかりやすくするために図を多く挿入し,術中videoを多用し専用サイトから閲覧できるようにしました(xページ参照).

また,本書は手術室に持ち込んで,術中に困った時に役立つ本をイメージしています.覚醒下手術に関わる多くの医療者に是非広く読んでいただき,少しでも役に立つことができましたらこの上ない喜びです.

本書の出版に当たり,短い期間で,担当分を書き上げた当院の覚醒下手術チームメンバーに感謝いたします.また,金沢大学の覚醒下手術の黎明期を担われた林 裕先生(石川県立中央病院脳神経外科部長)と故 濵田潤一郎先生(金沢大学脳神経外科前教授)に感謝いたします.最後に,編集を担当していただきました中外医学社 佐渡眞歩氏,中畑 謙氏には大変お世話になりました.この場を借りまして厚くお礼申し上げます.


2019年2月

金沢大学医薬保健研究域医学系脳・脊髄機能制御学 教授
中田 光俊

目次

1 はじめに

I 覚醒下手術のエビデンス

II 手術コンセプトの変化

III 皮質マッピングと皮質下マッピング

2 白質神経線維の基礎知識

I 電気刺激で認める症状

II 主な白質神経線維

3 覚醒下手術の準備・コツ

I 覚醒下手術ことはじめ10箇条

II 手術の同意と説明

III 施設認定の手順

4 トラクトグラフィの作成法

I DTIトラクトグラフィの原理

II 綺麗なトラクトの描き方

III 限界

5 覚醒下手術の流れ

I 手術場の入室から退室まで

II 手術に使用する道具

III 局所麻酔の場所,使用薬剤,使用量

IV 全身麻酔下での手術:皮切と開頭範囲の決定

V 覚醒下手術と全身麻酔下の手術

6 タスク者の準備

I タイムスケジュール

II 機能評価・検査法

III タスクの練習

7 覚醒下手術の麻酔

I 術前診察

II 覚醒下手術に対する麻酔管理のリスクファクター

III 入室から退室までの流れ

IV 麻酔における問題点

8 覚醒下手術の手術手技

I 覚醒させるタイミング

II 刺激強度の決定法

III タスクのnegative control

IV Cortical mappingの意義と詳細

V 脳表面処理

VI Subcortical mappingの意義と詳細

VII Subpial dissection

VIII タスクをかける基準

IX タスク陽性の判断とコツ

X 摘出するか否かの判断

XI 覚醒終了の基準

9 覚醒下手術のタスク

〈1〉タスクの考え方とタスク施行の工夫

I タスクの考え方

II タスク施行の工夫

〈2〉運動

I 皮質局在と運動の特徴

II 白質線維と運動の特徴

III 錐体路

IV タスクの方法

V 出現する症状と判別方法

〈3〉感覚

I 皮質局在と感覚

II 白質線維と感覚

III 術中タスクと誘発される症状

〈4〉言語

I タスク者の役割

II 皮質局在と言語

III 白質神経線維と言語

IV 術中タスクの方法と誘発される症状

〈5〉視覚

I 術中出現する視覚障害とその責任領域

II 術中タスクの方法と出現する症状

III 視野障害,視空間認知障害,視覚失認の違いと検出法

〈6〉高次脳機能

I 皮質・白質線維と高次脳機能

II タスクの方法・出現する症状と判別方法

III 術中の高次脳機能評価における偽陽性

10 覚醒下手術の電気モニタリング

I 術中モニタリングの基礎

II 術中モニタリングに必要な機器,機材

III 術中モニタリングの実際

11 症例提示

〈1〉運動領域

〈2〉補足運動野領域

〈3〉感覚領域

〈4〉言語領域

〈5〉視覚領域

〈6〉高次脳機能

12 ピットフォールと対応策

〈1〉麻酔科的視点

I 合併症の種類と対処法

II 換気困難

III 再導入時における気道確保確立までの経緯

IV 再挿管に難渋する場合

〈2〉脳神経外科的視点

I 寒気

II 悪心

III 疼痛

IV 痙攣

V 精神的不安

VI 脳圧亢進

VII 新たな神経症状の出現

VIII 意欲低下

IX 血圧上昇による腫瘍内出血

〈3〉タスク者的視点

I タスク判定に難渋する場合

II タスクの種類とピットフォール

〈4〉検査者的視点

I 電気刺激の注意点

II 術中モニタリング検査の陽性判定

III MEPでどれだけ落ちると不可逆的なのか

IV アラーム時の注意点

V 実際のMEPモニタリング波形の提示

VI トラブルシューティング

13 術後急性期の症状

I 術後急性期の症状と原因

II 術後の錐体路症状と補足運動野症状との見極め

III 緊急の対応を要する症状

IV 経過観察でよい症状

14 術後検査計画

I 術後評価の目的

II 術後の評価法と時期

III 日常生活・社会生活への影響

IV 機能回復の見込み

15 おわりに〜覚醒下手術の今後の展望〜

I 改善点

II 発展の方向性


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書籍情報

  • ISBN:9784498328327
  • ページ数:226頁
  • 書籍発行日:2019年3月
  • 電子版発売日:2019年3月29日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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