次世代シークエンス解析スタンダード

  • ページ数 : 404頁
  • 書籍発行日 : 2014年9月
  • 電子版発売日 : 2015年1月30日
6,050
(税込)
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商品情報

内容

もはや次世代ではないNGSの新常識と現場のノウハウを集約した決定版!

エピゲノム研究はもとより、医療現場から非モデル生物、生物資源まで各分野の「NGSの現場」が詰まった一冊。コツや条件検討方法などWET実験のポイントや、データ解析の具体的なコマンド例がわかる!

序文

次世代DNA シークエンサー(NGS)の登場により,大量のDNA 配列情報を低価格で高速,高精度に得られるようになった.これにより,ゲノム科学はビックラボのものだけでなく,ひとりひとりの研究者の手元に届いたのだ.すでにNGS はライフサイエンスの各分野にさまざまな革新をもたらし,もはや"次世代" の装置ではない.

NGS は簡単に言ってしまえば,単にDNA 配列を大量に計測する装置だが,計測するDNA を工夫することで,さまざまな生命現象を測れる多目的装置であるところに面白さがある.例えば,DNA 構造だけでなく,RNA 転写量やクロマチン構造,DNA/RNA- タンパク質相互作用,DNA 結合タンパク質の修飾を1 つの装置で測定できる.今もなお,世界中の研究者が日々新しいシークエンス手法を開発し続けている.現在,私が知るシークエンス手法だけでもすでに90 手法に届く勢いであり,新手法がトップジャーナルの誌面を賑わしている.定量性と網羅性の両方を飛躍的に向上させたゲノム科学は,もはや博物学的な研究ツールというイメージを逸脱し,生命を理解し制御,再構成するために,必要な情報を計測する必須装置としての地位を確固たるものにした.さらにモデル生物のみならずフィールドの生物の生命機能を直接研究できる装置としてもその威力を発揮し,偏りのない普遍的な生命観や生物多様性の根源的理解の一翼を担っている.

しかしながら,NGS 解析に敷居を感じている研究者もまだまだ多いのではないか.まず,ひとりの研究者やひとつの研究チームが,多様でかつ進歩の非常に速いNGS 技術を正確にフォローするのは困難極まりない.また実験費用が下がったとはいえ,ほかの実験と比べて,やはりまとまった試薬代が必要であるため,NGS 実験はそれなりの知識と経験,勇気が必要である.NGS は数GB~ TB 級データを出力するため,大規模データ解析に慣れていない実験系研究者には,データから知識を引き出すこと自体にも困難さが残る.最近では,NGS 解析の総説集が出版され,その敷居は下がりつつあり,NGS 実験・解析への憧れを募らせる研究者も多いだろう.ところが,NGS 実験の計画や,試薬・機器の選定,適切なプロトコール,実験・解析のコツなどの実践的な経験知は体系化されていない.

そこで本書はNGS 実験・解析の実践的プロトコールを提供することを目的とした.試薬キットに添付されているような,無機質なプロトコールではなく,コツや実験の品質評価など,本書1 冊で実験が始められる内容を目指した.さらに多様なシークエンス手法のうち代表的で使いやすい手法を厳選し紹介した.

本書では,執筆者として,実際に手を動かして実験・解析をしている現場の方や,実験手法・解析法そのものの開発者,日夜,大量の共同研究を捌く老舗のゲノム系研究者,シークエンス機器・試薬メーカーの技術者,データベースやスーパーコンピュータを提供する研究者などの方々にお願いした. 日々の研究で想像を絶する苦労をして得たノウハウを惜しげもなく提供して頂いた執筆者のみなさまに深く感謝したい.また普段から情報交換をさせて頂いている私のラボのメンバーやNGS 現場の会,インターネットで情報発信しているみなさまに感謝する.これだけの多様な内容の書籍を出版までサポートして頂いた羊土社の間馬彬大さん,蜂須賀修司さん,冨塚達也さんに心から感謝を申し上げる.本書が読者のみなさまが掲げる夢を実現する助けになると幸いである.それを通じて,日本のゲノム研究がさらに盛り上がることを心からお祈り申し上げます.


2014年7月

二階堂 愛

目次

Ⅰ 基礎編

1 NGSのアプリケーションと今後の展望

2 NGSの試薬選択ガイド

3 現行機種の長所・短所とその選択

4 NGS解析の要 品質管理の重要性と方法

5 NGSデータ解析に必要なコンピューティングの基礎

Ⅱ プロトコール メディカル・クリニカルシークエンス

1 メンデル遺伝性疾患の原因遺伝子を解明する Exome-seq

2 遺伝子診断 ターゲットキャプチャ

3 アンプリコンシークエンスのためのプライマーを自在に設計する

4 がんゲノムから後天的変異を抽出する Genomon-exomeにおける方法論

5 HLA遺伝子の完全配列を決定する

6 ヒトゲノム・オミックス情報をコホート研究に応用する

Ⅲ プロトコール エピゲノム

A ChIP-seq

1 ヒストン修飾や転写因子の結合領域を同定するコツやポイント

2 RとBioconductorでChIP-seq データを解析する

3 高精度で結合領域を決定する GeF-seq

B DNAメチル化解析

1 バイサルファイト変換で全ゲノムDNAメチル化を定量する PBAT法

2 メチル化結合タンパク質でDNAメチル化領域を濃縮する MBD-seq法

3 メチル化感受性制限酵素を利用しメチル化領域を検出する① HELPアッセイの基本と微量DNAメチル化解析を可能とするサンプル調製法

4 メチル化感受性制限酵素を利用しメチル化領域を検出する② NGSを用いたHELP-taggingの実際

C クロマチンアクセシビリティ解析

1 クロマチン立体構造を評価する 3C, ChIA-PET

2 オープンクロマチンを同定する FAIRE-seq

Ⅳ プロトコール トランスクリプトーム・転写制御

1 急速に普及するRNA-Seqで遺伝子発現をみる

2 1細胞から遺伝子発現を網羅的にみる Quartz-Seq

3 CAGE法で転写制御領域を解析する fastCAGE調製法

Ⅴ プロトコール 環境・進化・生物資源

1 難読領域を含む微生物ゲノム完全長配列をde Novoに決定する PacBio RS Ⅱを用いたアセンブル

2 細菌種や組成を調べる メタ16Sとメタゲノム解析

3 微生物コミュニティの遺伝子レパートリーを調べる メタゲノムデータ解析

4 ゲノム情報のない生物種の新規ゲノム配列を決定する

5 非モデル生物の遺伝子発現をみる RNA-Seqとde novoゲノム

6 非モデル生物のSNPを探索する RAD-seq

7 育種へ応用する MutMap

Ⅵ プロトコール データ解析と環境構築

1 解析環境を導入する スパコンの利用

2 LPMを用いて解析環境を構築する

3 Galaxyを用いてグラフィカルに解析する 解析パイプラインによるChIP-seqとCAGEデータの利用

4 DDBJ Read Annotation Pipeline 解析パイプラインによるRNA-Seq de novo assemblyとイネ多型解析

5 変異を解析する グラフィカルなインターフェイスを使って

6 ゲノムブラウザを用いて可視化する① UTGB Toolkitによる可視化

7 ゲノムブラウザを用いて可視化する② GenomeJackによる可視化

8 NGSデータを公共データベースへ登録する

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書籍情報

  • ISBN:9784758101912
  • ページ数:404頁
  • 書籍発行日:2014年9月
  • 電子版発売日:2015年1月30日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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