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実験医学別冊 NGSアプリケーション RNA-Seq実験ハンドブック

  • ページ数 : 282頁
  • 書籍発行日 : 2016年3月
  • 電子版発売日 : 2018年5月18日
8,690
(税込)
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商品情報

内容

発現解析からncRNA、シングルセルまであらゆる局面を網羅!

RNA-Seqで欲しい「データを取るためのプロトコール」「研究戦略の立て方」「実験の落とし穴」が分かる!mRNAの発現量、ストランド特異的RNA-Seq、マイクロRNAの標的、データベース解析、マッピングのツールなど……本書1冊ですべてできる!

実験医学シリーズ

序文

最も古い次世代シークエンサーが登場して10 年が経過した.その間の目覚ましい関連技術の進展は,あらためて振り返る必要もない.読み取り精度,データ産出量,塩基あたりのコストについて,数十あるいは数百倍の改善がなされ,2014 年にはついにヒトゲノムを1,000 ドルで解析する当初の獲得目標が達成された.装置自体は,大量にシークエンスを産生する塩基配列決定装置以上のものではない.しかし,生物学あるいは基礎医学研究において,これほどまでに多くの革新をもたらした技術は類をみない.鋳型調製法を工夫することで,単純なDNA の解析だけでなく,多くの生物学的情報を網羅的に解析することを可能としたところに,次世代シークエンス技術の要点がある.例えば,修飾ヒストンと結合するゲノム領域を選択的にシークエンスするChIP-Seq 法と呼ばれる手法,あるいはメチル化修飾を受けたシトシン塩基を化学的に変換し,違う塩基として解読することで元の修飾部位を決定するBS-Seq 法は,従来のエピゲノム解析を一変した.生物学的情報を最終的に大量の塩基配列情報へと変換することで多様な局面で網羅的な生物学的情報を取得すべく,実に数多くの新手法が毎月のようにトップジャーナルに掲載されている.現在までに次世代シークエンサーを活用した,〜Seq と呼ばれる手法は優に100 を超えるという.実際,多数の総説が刊行され,その最新の情報について紹介されている.

本書では,そのなかでも「RNA-Seq」と呼ばれる方法に着目した.RNA-Seq は数ある次世代シークエンサーの応用途のなかでも最も初期に開発された手法である.すなわち,RNA 分子を網羅的に読み取って,そのシークエンスの本数を数えることでその発現情報としようというものである.これはその簡便性あるいは必要試料量の微量化についての劇的な改善を背景に,瞬く間に従来のマイクロアレイを用いた手法と双璧をなすまでに成長した.エピゲノム解析の場合と同様に,RNA-Seq 法にも多様なバリエーションが存在する.それらの手法を用いることで,単に発現情報だけでなく,RNA 結合タンパク質との相互作用,翻訳効率の推定,あるいは転写産物の構造解析といったさまざまな解析に用いることが可能となっている.

本書では,RNA-Seq の基礎的な技術の概説,それぞれの実験プロトコールの概要から最新の応用手法に至るまで,編者が知りうる限りのRNA-Seq に関する知識を集約した.これ1 冊で,RNA-Seq のほぼあらゆる局面に対応できるよう企画したものである.企画にあたっては,章ごとの冗長性や記載の矛盾を極力おさえるため,出版社と相談のうえできるだけ少数の研究室の執筆者で書き上げることとした.本書はその意味でも,出版社にとっても「とんがった」企画となっている.「ご無理な注文を...」と思いながらも,卒業生あるいは緊密な共同研究者の方々に依頼の連絡をとったところ,皆様から快く協力をいただいたことに,この場を借りてお礼を申し上げたい.また個人的にもそれぞれの分野にちらばっていった卒業生と旧交を温めるよい機会となった.私から出版社に感謝するところも大である.その趣旨からも,本書は多分に,ある1 つの観点から見たRNA-Seq 像としてバイアスがかかっていることは否めない.ただ本邦での次世代シークエンス関連技術の導入と立ち上げをいちから支えてきた実務者の実感,ということでご容赦願いたい.本書が読者のRNA-Seq 解析の一助となることを心より期待している.


2016年2月

鈴木 穣

目次

概論:RNA-Seqとは何か? 何ができるのか?

第1章 RNA-Seqの基本

試料調製と発現解析の標準的なプロトコール.

1. Total RNAの抽出

2. RNAとライブラリーの定量とクオリティコントロール

3. Stranded mRNA-Seq

4. RNA-Seqデータのマッピング

遺伝子発現解析を例に

5. miRNAを標的としたRNA-Seq

RNA免疫沈降法を中心に

6. 細胞画分からのRNA-Seq

目的に応じたRNAを解析するために

7. 組織サンプルの固定とRNA抽出

8. ヒト血液検体のトランスクリプトーム解析

ゲノムコホートにおける前処理・輸送・抽出を例に

9. 微量サンプルからのRNA-Seq

10. RNA-Seq用途別シークエンサーの選び方

第2章 発展的手法

発現解析以外の発展的手法およびシングルセル解析.

1. CAGE法を用いた転写制御領域の解析

2. 転写開始点データベースDBTSSによる転写制御解析

3. RNA-SeqによるA-to-I RNA編集の検出

4. 3'-seqによる選択的ポリアデニル化の網羅的な解析

5. リボソームプロファイリングによる細胞内翻訳反応評価

6. RNAの合成・分解を定量するシークエンス技術

7. BRIC-Seqによる網羅的なRNA分解速度測定法

8. CLIP法とその改良法によるタンパク質結合RNAの高解像度解析

9. シングルセル①:機器・方法編

C1以外で世界的に開発されている機器・方法について

10. シングルセル②:試薬・キット編

改変型SMART-Seq2プロトコールを交えて

11. シングルセル③:C1システムのプロトコールと実施例

12. 超並列レポーターアッセイによる転写制御解析

第3章 応用例

1. 細菌叢研究におけるRNA-Seq

メタトランスクリプトームによる菌種・機能の解析

2. 免疫研究におけるRNA-Seq

システム免疫学へのアプローチ

3. がん研究におけるRNA-Seq

がんのシステム異常を情報学的に俯瞰する

4. 神経研究におけるRNA-Seq

シングルセルRNA-Seqによる新たな細胞種の発見を例に

5. 遺伝性疾患研究におけるRNA-Seq

先天異常症候群における遺伝子発現異常を例に

6. 感染症研究におけるRNA-Seq

マラリアの宿主-病原体相互作用を例に

第4章 新技術

1. 多様なトランスクリプトーム解析技術

2. PacBio1分子実時間シーケンシング

ゲノム,トランスクリプトーム,エピゲノム解析への応用

3. ナノポアシークエンサーMinION

超小型装置によるRNA解析

第5章 インフォマティクスとデータベース

1. マイクロRNA研究を加速するデータベース

2. RNA2次構造とRNA間相互作用の予測

3. ヒトのオミクス情報を扱うデータベース

トランスクリプトームデータベースGTExと東北メディカル・メガバンク事業を例に

4. FANTOM/ENCODEに関するデータベース・ウェブツール

大規模プロジェクトのデータを利用する

Column

1. RNA-SeqのためのR教育の現状と課題

2. 頭の痛いノンコーディングRNA

3. RNA-Seqはこうして誕生したーそしてデータ再利用へ

4. NGSデータ解析者の苦悩とその解決策


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書籍情報

  • ISBN:9784758101943
  • ページ数:282頁
  • 書籍発行日:2016年3月
  • 電子版発売日:2018年5月18日
  • 判:A4変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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