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実験医学増刊 Vol.37 No.10 新時代が始まったアレルギー疾患研究

  • ページ数 : 215頁
  • 書籍発行日 : 2019年6月
  • 電子版発売日 : 2019年7月19日
5,940
(税込)
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商品情報

内容

疾患多様性を理解し病態の層別化に基づく治療を実現する!

発症や重症化の機序が次々と明らかになり,それに基づく患者の層別化や分子標的薬の臨床応用が行われるなど,アレルギー疾患研究は近年新たな局面を迎えています.本書ではこのような病態解明・新規治療法開発の最前線を紹介します.

実験医学 最新号・バックナンバー・増刊号

序文

わが国では,乳幼児から高齢者まで,国民の約2 人に1 人が何らかのアレルギー疾患を有 しているといわれている.それほど身近な疾患でありながら,われわれはいまだにアレル ギーの実態を十分に把握し,合理的にコントロールできているとは言い難い.そういう状況 を背景に,2014年に「アレルギー疾患対策基本法」が,2017年には「アレルギー疾患対策 の推進に関する基本的な指針」が公布された.この基本指針では,医療の質の均てん化に向 けた医療体制の整備の取り組みに加え,アレルギー疾患に関して「諸問題の解決に向け,疫 学研究,基礎研究,治療開発および臨床研究の長期的かつ戦略的な推進が必要である」と示 されている.このような指針に対してわれわれはどのような方向の研究を進めるべきであろ うか.

ライフステージに注目する研究としては,例えば環境省が2010年から開始したエコチル調査が注目されている.これは,3年間のリクルート期間で10万人の妊婦を登録し,子どもと両親の参加による13年の追跡期間でデータを集積して解析する出生コホート研究である.この調査に関しては,アレルギー疾患への貢献にも大きな期待がある.すなわち遺伝的要因に加えて,在胎中を含む環境要因などが複雑に関係して発症に至るプロセスが考えられるからである.また,乳児期にアトピー性皮膚炎として発症したアレルギー病態が,小児期に経時的に食物アレルギー,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,結膜炎など別なアレルギー疾患に変わっていくアレルギーマーチという概念がある.これに関しては,予防的・先制的治療として,例えば乳児期からのアトピー性皮膚炎をきちんと治療した結果,卵アレルギーの発症が8割減少したなどの報告がある.一方このような病態とは異なり,アスピリン喘息,アレルギー性気管支肺真菌症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,慢性好酸球性肺炎などは,喘息を背景として発症するアレルギー関連重症気道疾患である.そして,このような疾患群は小児期の喘息患者ではほとんどみられない.成人後に生じる免疫学的病態が関与している可能性がある.おそらく,小児期のアレルギーは2型サイトカインやIgEが中心で働くアトピー型であり,成人発症の気道疾患は好酸球関連の要素が強いと考えることもできるが,詳細なメカニズムはまだわかっていない.

このように,アレルギー疾患の特徴の1つとして,発症年齢,重症度,予後など多様な病態をもつため,自然経過や標準的な治療に対する効果や副作用に違いが出てくることがあげられる.このような状況に対応するためには,疾患の層別化が重要であり,標準化された表現型(フェノタイプ)分類の確立が必要となってくる.さらに,このような病態を考える際に,エンドタイプという言葉が使われることがある.エンドタイプとは,疾患を病態メカニズムによって分類する考え方である.多様な病態が含まれるアレルギー疾患をエンドタイプに分類し,疾患を反映するエンドタイプが同定できれば,その病態をターゲットとした適切な早期介入治療が可能になると期待される.このような病態メカニズムの解明には,基礎免疫学とのさらなる連携が重要となる.また,アレルギー疾患は複数の臓器に病態が認められることが多く,今後は臓器連関に関する研究が不可欠で,異分野融合型の研究も必要となってくるであろう.

このように多岐にわたるアレルギー疾患研究を俯瞰できるよう本書を編集しました.お役に立てれば幸いです.


2019年4月

山本 一彦

目次

概論 これからのアレルギー疾患研究と治療

第1章 アレルギーのメカニズム研究

Ⅰ.遺伝情報と環境

1.アレルギー疾患の遺伝的解析

2.アレルギー疾患におけるヘルパーT細胞のDNAメチル化制御

3.アレルゲンコンポーネントと臨床への応用

4.マイクロバイオータとアレルギー疾患

Ⅱ.免疫細胞とサイトカインなど

1.アレルギーにおける樹状細胞の役割

2.アレルギー性気道炎症の病態形成におけるPathogenic Th2細胞の多様な役割

3.アレルギー疾患における制御性T細胞の役割

4.ろ胞型ヘルパーT細胞とアレルギー

5.2型自然リンパ球とアレルギー

6.好塩基球によるユニークなアレルギー炎症調節機構

7.好酸球性炎症とアレルギー〜プログラム細胞死とシャルコー・ライデン結晶の形成の関連

8.脂質メディエーターとアレルギー

9.アレルギーにおけるIL-33,TSLP,IL-25の役割

Ⅲ.新たな視点

1.アレルギー疾患への臨床応用をめざした表皮バリア統合データ解析

2.食用油の脂肪酸組成のユニーク性を利用した多臓器アレルギー・炎症疾患の制御

3.加齢とアレルギー

4.アレルゲン特異的免疫療法の作用機序

第2章 疾患研究から次世代の治療に

Ⅰ.気管支喘息

1.フェノタイプ・ジェノタイプ・エンドタイプ

2.喘息患者におけるIFN産生不全

3.アスピリン喘息Update〜難治性病態の解明と新規治療戦略の可能性

4.バイオ製剤について

Ⅱ.アトピー性皮膚炎

1.アトピー性皮膚炎のエンドタイプ〜precision medicineへ向けて

2.アトピー性皮膚炎におけるブドウ球菌の役割

3.アトピー性皮膚炎の新規治療法(バイオ製剤とJAK阻害薬)

Ⅲ.アレルギー性鼻炎

1.アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の作用機序とバイオマーカーの研究

2.好酸球性副鼻腔炎

Ⅳ.結膜炎

1.アレルギー性結膜疾患の病態と新規治療法の可能性

2.アトピー性角結膜炎,春季カタルなどの重症眼アレルギー性疾患の臨床像

Ⅴ.食物アレルギー

1.食物アレルギーの新しい治療の方向

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書籍情報

  • ISBN:9784758103794
  • ページ数:215頁
  • 書籍発行日:2019年6月
  • 電子版発売日:2019年7月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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