ER流研修指導医マル秘心得47

  • ページ数 : 199頁
  • 書籍発行日 : 2006年4月
  • 電子版発売日 : 2013年1月1日
4,180
(税込)
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商品情報

内容

ERはcommon diseaseの症例が多く,研修医が学ぶべきことが満載。研修医がよくつまづく症例から、最前線のER医ならではの安全重視の指導のコツを学ぶ。
指導医だけでなく、医学生、研修医、ER専属看護師の全ての医療従事者におすすめの書です。

序文

~序にかえて~
「患者さんに心身ともに害を与えない医師」を育てるために

平成16年度から医師の卒後臨床研修は事実上必修化され,なかでも日常頻繁に遭遇するありふれた病気やけがに独力で対応できるようにする研修が強く求められるようになりました.救急外来(ER)はこのようなcommon diseaseの宝庫であることから,全国の数多くの研修病院では,救急外来での研修に力を入れておられると思いますが,現場の指導医の先生方はかなり苦労しておられるのではないでしょうか.

元来○○内科や××外科といった特定の領域の専門家として育ち,特別に救急医学の研修を受けた経験はないが,今回の研修必修化にともなって研修医に救急(特に一次救急や全科救急の初期対応)の指導をせざるを得なくなった"にわか救急指導医"は実は少なからずおられるのでないかと推察いたします.そして,いざ救急外来での研修指導を始めてみると,おそらく大小さまざまのトラブルに遭遇しておられるのではないでしょうか.

もともと救急外来診療は,マンパワーの少なさ,長い勤務時間,多くの患者(なかには重症の方も),患者さん側の大きな期待,予定を立てにくい部署であること,各科と上手に連携をとる必要があること,体系化された救急外来研修を受けた経験のある指導医が少ないこと,など全国共通に抱えるいくつかの要因によって,ただでさえトラブルの発生しやすい診療部門だと思います.そこへ今回の研修必修化で,「研修医の心身の安全を図りつつ」,「患者さんの安全を確保しながら」,「研修医に効果的に救急医療を身につけさせる」ことが要求されるようになったわけですから,現場がどれほど大変な状況に陥っているかは,救急医療に携わってきた者の1人として痛いほどわかります.指導医の心身の負担はいかばかりでありましょう.

本書はそんな境遇にある救急外来の指導医のために少しでもお役に立てればと考えて,筆者が今まで悩んできたことをまとめたものであり,いわば研修医と救急当直をする上級医のために書いた教師用トラの巻です.本書に記した事項はいずれも大それたことではなく,"ちょっとしたコツ"の類の羅列かもしれませんが,これらが身についていることによって大きな誤診や患者さんとのトラブルを少しでも少なくすることができると思います.私は卒後臨床研修必修化の本質は「患者さんに心的・身体的に害を与えない医師の養成」であると信じておりますので,研修医の教育の際には本書の内容のようなことを重視しています.本書が全国の救急外来で日夜奮闘する指導医の先生方にとって多少なりともヒントになれば幸いです.なお掲載した症例は筆者の今までの経験をヒントとした,すべて架空の症例です.

本書を執筆するにあたりご指導,ご助言を賜りました佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)救急医学瀧健治教授ならびに多大なご支援を賜りました大串和久先生をはじめとする同教室員の皆様,弘前大学医学部の諸先生方に心より感謝申し上げます.


平成18年3月

弘前大学医学部附属病院総合診療部教授
加藤 博之

目次

ERでの研修を始める前に ?あらかじめ研修医に教えておいた方がよいテーマ


第1部  救急外来の「危ない」研修医たち

1.「わかってない」研修医が危ない

【その1】「患者さんの気持ち」がわかっていない研修医

【その2】「救急外来という場」がわかっていない研修医

【その3】「コンサルタントというもの」がわかっていない研修医

【その4】「病歴・身体所見の本当の重要性」が実感できていない研修医

【指導医の休憩室】<研修医の苦手なコンサルタントを察知しよう>

2.他人の診断を鵜呑みにする研修医が危ない

【その1】「下壁梗塞」で紹介となった男性

【その2】「ギックリ腰」で動けない男性

【指導医の休憩室】<ACLS,PALS ,JATECで研修医に追いつけ,追い越せ>

3.少し慣れた頃の研修医が危ない

【その1】「ただの尿管結石」と思われた高齢女性

【その2】咳のひどい女の子

【その3】「目にゴミが入った」タクシー運転手

【その4】心肺蘇生はゲームではない

【指導医の休憩室】<研修医にACLS,PALS ,JATECを奨励する際の心掛け>


第2部 研修医がはまるERのピットフォール

1.研修医が知っているのに診断できない病気

【その1】急に「耳が遠くなった」老人

【その2】「急にボケた」老人

【その3】「胃が痛い」と言って受診した女性

【その4】「片麻痺+意識障害=脳血管障害」のはずが...

【その5】「吐血した」精神発達遅滞のある男性

【その6】おでこをぶつけた男性

【指導医の休憩室】<受診を告げる電話を受けたとき?最低限メモすべき情報>

2.研修医の知らない要注意疾患

【その1】若い女性の右上腹部痛

【その2】「のどが痛い」中学生

【その3】排便中突然腹痛を生じた高齢男性

【その4】crackleでないのにcrackleみたいなこの音は?

【その5】CTの「プチプチした黒い影」

【その6】転倒後「右目が見えない」と言う酔っ払い

【指導医の休憩室】<ER指導医と研修医の間の距離は?>

3.研修医が騙される画像診断

【その1】「ただの脳出血」のはずが...

【その2】病室で付き添い中,失神した女性

【その3】「すごく軽い脳出血なんですけど...」

【その4】転倒して肘を痛がっている男性

【指導医の休憩室】<警察提出用の交通事故の診断書の書き方>

4.研修医を戸惑わせるわけのわからない患者さん

【その1】「意識がおかしい,立てない」老人

【その2】わけのわからぬ両下肢の脱力

【その3】「全身がきつい,食事がとれない」という女子高校生

【指導医の休憩室】<ERでは「運が良かった,悪かった」で一喜一憂するな>


第3部 研修医を格段に進歩させるちょっとしたアドバイス

1.来院時,患者さんに持参してもらうとよい物

【その1】歯ブラシを咥えたまま転んだ幼児

【その2】「タバコを1本」食べてしまった赤ちゃん

【その3】マグネットを飲み込んだ幼児

【その4】 ふだん飲んでいる薬は何か

【指導医の休憩室】<点滴ルートを見ると研修医の頭の中がわかる>

2.「発熱」?警戒度ワンランク・アップの患者さんたち

NSAIDがマスクする発熱

3.あらかじめ受診を告げる電話があったら来院するまでの時間が勝負

受診を告げる電話は感謝して取れ

4.必ず基礎疾患の有無を確認せよ

風邪でも軽症とは限らない

【指導医の休憩室】<土日の当直を控えた金曜の夕方にすべきことは>

5.ADLの変化を見たら器質疾患があると考えよ

脳出血の既往と知的障害のある男性の訴えは

6.COPD(慢性閉塞性肺疾患)に特徴的な身体所見に精通せよ

T先生が一目で見抜いたワケは

7.生理に関する病歴を聞くときは最終生理だけでなく,その前の生理も聞け

右下腹部痛で受診した若い女性

【指導医の休憩室】<休日の24時間 ER当直は食料,飲料をどっさり買い込んで突入>


第4部 ER指導医の出番

1.各科境界領域の苦労

【その1】多発外傷の入院先は?

【その2】ハーフマラソン中に倒れた男性

【その3】頭痛のひどい女性

【その4】急に暴れ始めた精神発達遅滞の男性

2.こんな症例が研修医にはストレス?指導医が前面に出よう

【その1】花見の夜に来院した急性アルコール中毒の女性

【その2】腰痛を訴えるホームレスの男性

【その3】駐車場で発見された心肺停止の男性

【その4】「何かあったらいつでも来てね」と外来担当医から言われていたので,深夜に来院した親子

【指導医の休憩室】<検視の際に警察から得ておくべき情報>


第5部 ER指導医の心得?T先生に聞く?

ERの苦労の分析

北米型ER

ERのピットフォール

ERでサバイバル

ER待合室への目配り

X線写真撮影室やCT室への気配り

北米型ERを作るには

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書籍情報

  • ISBN:9784758106108
  • ページ数:199頁
  • 書籍発行日:2006年4月
  • 電子版発売日:2013年1月1日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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