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- 疾患を絞り込む・見抜く!身体所見からの臨床診断
商品情報
内容
身体所見から得られた知見を臨床診断へどうつなげるか。コモンディジーズを中心に、身体所見から診断への道筋を網羅!宮城征四郎医師をはじめ身体診察の教育に定評のある医師らが執筆。
診断を前提とした身体所見のとり方を身につけたい方、身体所見を有効に活かしたい方におススメです!
序文
はじめに
-身体所見の取り方-
身体所見の取り方は,世界のどこの国でもいわゆる「臨床医療」の基本である.しかし,医療面接と並んで臨床の基本であるべきこの身体所見の取り方が,特に日本の臨床医療では乏しく,そして貧しいというのが大方の実感である.
その原因の一つは日本の保険診療報酬点数の決め方にある.
医師や看護師がどんなに詳しく医療面接をし,身体所見を取ったとしても,日本の臨床医療ではそのほとんどが診療報酬点数として認められない上,大切な医療行為として挙げられることがない.このことは,日本の臨床医療にとってはなはだ不幸なことである.基礎を無視して臨床医学を学ぶことから始める臨床家が日本ではあまりにも多いと筆者は感ずるからである.
医学教育においても,臨床教育の要である医療機関で「身体所見の取り方」を教えられる指導者は,日本ではほとんど皆無と言って良い.
いや,むしろ医療面接法や身体所見の取り方を一生懸命に教える指導者は医療教育現場では 異端視され,排斥される現状である.DNAや遺伝子工学,血液検査成績の解釈法やPCRのこと を教えている方が各指導者にとってはより学問的であり,よりアカデミックであるように受け 取られかねない土壌が,日本の臨床教育にはまかり通っているのである.
私はかつてWHOのフェローとしてデンマークに留学した経験を持っているが,当時の留学仲 間で英国から来た同級生に 『お前は本当に日本で医者をしていたのか? お前の身体所見の取り方を見ているとまるで素人だ』 と言われたことがある.
以来,筆者は日本の臨床教育方法に疑問を持ち,大いに反省するとともに「医療面接と身体所見」が臨床医学の真の基礎であり,これを無視した臨床医学は成立しないという医療哲学を身につけて今日に至っている.沖縄県立中部病院31年間の勤務医時代も群星沖縄臨床研修セン ターに奉職して来た4年後の今日でも,筆者は常に「身体所見の取り方」の教育責任者となって来た.部分的には,自分の得意とする分野の身体所見を各医師が取れたとしても,病人全体の身体所見を取れる人は,日本の医療界では皆無に等しいからである.
各病院の教育回診の時でも, 筆者は身体所見については妥協を許さないし, physical examinationが貧弱な患者の主治医の臨床診断はどこか怪しいと思っている.
病床に行って診て見ると,多くは主治医の身体所見の見逃しが浮かび上がり,その所見こそが患者の正しい病態診断に結びついた例を筆者は何度も経験している.
医療面接と身体所見の取り方は,こと程,左様に臨床医学の基礎でありながら,日本の医学教育の中では不思議に軽視されているのである.
研修医相手に教育するときには,ある分野の専門家は自分の得意とする分野の身体所見の取り方の教育担当を,むしろ極力,避けてほしいと筆者は感じている.各医師の得意分野の教育では得てして,専門家医はマニアックとなり,研修医教育には向かない方向に走り勝ちである.
循環器学者は呼吸器の分野を,神経学者が腹部の身体所見を教えることが,研修医にとって マニアックでない,本当に理解しやすい身体所見についての教育が成立するのだと考えている.
医療面接と身体所見は臨床医学の基礎であり,どの分野でも世界のどこでも通用する共通のものである.正しく行うと病態の7~8割は診断がつくといわれる.
検査をするのは,この医療面接と身体所見で診断した病態の学問的な裏打ちを得るためである.検査成績の異常から病態の診断をするのは邪道である.
臨床行為には有形と無形があり,検査,処置,投薬などは前者に属し,医療面接,身体所見は後者に属する.日本の診療報酬点数の比率が前者に傾き,後者をほとんど顧みないのは先進国,経済大国日本の医療行為としては大きな落ち度である.
最近はDRGや医療行為の丸めが医療費抑制策として,日本にも導入が試みられてきた.有形の医療行為をある病態に実施すればする程,各病院の出費が増えるシステムである.ここで役立つのは,無形の医療行為,すなわち医療面接と身体所見に他ならない.
研修医教育をする上で,何か気の利いた台詞も用意しないと教育にはならないと日本の指導者は考え勝ちであるが,研修医はそういう教育よりも基本に忠実な,どこの国にでも通用する,極ありふれた基礎を身につけることを望んでいる.
この本は,そういう趣旨によって生まれた「身体所見の取り方」教則本であり,臨床の基本を目指して医学生および研修医向けに編集された教則本である.
専門家が見れば「あれも抜けている,これも抜けている」と思うであろうが,医学生や研修医のレベルではそれで十分であろうと筆者は考えている.この本は決して専門家向けに書かれたものではなく,「臨床の基本」を大切にした教則本であることを強調したい.
なお全身のリンパ節を聖路加国際病院の横田恭子先生,HEENT,頸部については群星沖縄臨床研修センターの入江聰五郎先生,循環器に関する項目は中頭病院循環器センター長の安里浩亮先生,筋骨格系については聖路加国際病院の岸本暢将先生,皮膚については沖縄県立中部 病院皮膚科医長の鶴田雄一郎先生,神経については沖縄県立中部病院神経内科部長の城之園学先生に委ねた.
また,ところどころに挿入してある身体所見の写真は入江聰五郎先生にお願いした.編集およびその他の項目は宮城と徳田が担当した.
本書の上梓に当っては羊土社の保坂早苗さん,加藤美慈さんに多大なお世話になったことを感謝し,その労をねぎらいたい.
2009年12月
宮城 征四郎
目次
総論●診察をはじめる前に
1 身体診察の準備【徳田安春】
2 指導医による研修医との回診の進め方【宮城征四郎】
回診時の注意
3 臨床疫学に基づく診断推論【徳田安春】
各論●身体所見からの臨床診断
1 生命徴候の臨床的意義【宮城征四郎】
バイタルの病態生理学的解釈
研修医の症例報告に対する指導とProblemsの病態生理の検討
2 外観のフィジカル診断【徳田安春】
3 全身のリンパ節のフィジカル診断【横田恭子】
身体所見の重要性
リンパ節にかかわる身体所見
4 HEENT(頭部,眼,耳,鼻,口腔・咽頭)のフィジカル診断【入江聰五郎】
身体所見の重要性
頭痛の考え方
意識障害の考え方
眼球結膜の貧血所見の考え方
5 頸部のフィジカル診断【入江聰五郎】
身体所見の重要性
急性期患者の頸部診察
外傷時の頸部診察
6 循環器のフィジカル診断【安里浩亮】
身体所見の重要性
Ⅰ.循環器疾患にかかわる全身の身体所見
胸部と腹部(thorax and abdomen)
頸静脈波(jugular venous pulse)
動脈圧測定
動脈波(arterial pulse)
Ⅱ.心臓の身体所見
視診(inspection)
触診(palpation)
打診(percussion)
聴診(auscultation)
Ⅲ.心雑音を有する患者へのアプローチ
心膜摩擦音(pericardial rubs)
動的聴診(dynamic auscultation)
7 呼吸器のフィジカル診断【宮城征四郎】
身体所見の重要性
呼吸器疾患にかかわる全身の身体所見
呼吸器疾患の身体所見
8 腹部のフィジカル診断【徳田安春】
身体所見の重要性
腹部の身体所見
9 筋骨格系のフィジカル診断 〜リウマチ膠原病大原則【岸本暢将】
身体所見の重要性〜シャーロックホームズの勧め〜
リウマチ性疾患に関わる全身の身体所見
リウマチ性疾患に関わる関節所見
10 皮膚のフィジカル診断【鶴田雄一郎】
身体所見の重要性
皮膚の身体所見
各皮膚疾患の診断と治療
11 神経のフィジカル診断【城之園 学】
身体所見の重要性
神経疾患にかかわる全身の身体所見
神経の身体所見
A. 覚醒レベル,見当識
B. 脳神経
C. 運動機能
D. 感 覚
E. 歩行・姿勢
F. 高次脳機能
付録 身体所見からの臨床診断一覧
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書籍情報
- ISBN:9784758106795
- ページ数:246頁
- 書籍発行日:2009年12月
- 電子版発売日:2013年12月12日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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