監修の序

本書は，当科の柴垣有吾准教授が企画し，櫻田勉講師が中心となって作成した「血液浄化療法」に関するユニークな教科書である．
聖マリアンナ医科大学病院では，腎臓・高血圧内科と腎泌尿器外科が協力して「腎臓病センター」をつくり，腎疾患の初期から末期まで幅広く診療にあたっている．血液浄化施設もセンター内に併設され，血液透析とともに腹膜透析外来も行っている．腎臓・高血圧内科の医師は病棟と血液浄化施設および全病棟に対応するコンサルトチームをローテーションして，腎疾患を幅広くさまざまな角度から研修できるシステムをとっている．

このような診療活動をベースに若手医師のためにわかりやすい教科書をつくろうという意図で作成されたのが本書である．血液浄化療法の基本から臨床への応用までわかりやすく解説されている．また，診療の重要ポイントを研修医が上級医の指導を受けながら理解し，身につけていくという設定もユニークである．実際の患者の診療をシミュレーションしながら幅広い知識と考え方を学んでいける．教科書で勉強したことを実践の場でどのように応用していくかという考え方を身につけるには，最適な方法であろう．また，指導医レクチャーでは，診療のポイントの整理が指導医により行われている．随所に挿入されているコーヒーブレイクは気軽に読めるが重要な事柄の tipsがちりばめられている．また，知識の確認のための演習問題も用意されている．

本書を通読すれば，血液浄化療法の基礎から応用が無理なく身につくように工夫されている．当科の医師は，自らの研鑽に努めるとともに後進の指導にも熱心である．その日常の診療と教育の成果から本書が生まれた．全原稿をスタッフが目を通し細部にわたってチェックしているが，全体の統一性やバランスのよい記述などは，櫻田勉講師の強いリーダーシップのもと実現した．

本書をこれから血液浄化療法を学びたいすべての若手医師に推奨したい．また，すでに血液浄化療法に携わっている医師にも，知識の整理と後進の指導に大いに役立つことと思う．さらに，血液浄化療法にかかわるコメディカルの方々にも血液浄化療法の全体像を知り，知識を整理する教科書としても推奨する．本書が血液浄化療法に携わる医療者の自己研鑽の手助けとなり，よりよい医療が行われる一助となれば監修者としては望外の喜びである．最後に，本書の作成に尽力した櫻田勉講師，柴垣有吾准教授に敬意を表したい．

2013年５月

聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科
木村健二郎