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- 実験医学別冊 発光イメージング実験ガイド 機能イメージングから細胞・組織・個体まで蛍光で観えないものを観る!
商品情報
内容
序文
序
――発光イメージングの新たな夜明け――
バイオイメージングの発展は,生命科学・医学研究の原動力となってきた.生細胞中で生体分子やイオンがリアルタイムで観えるインパクトは絶大であり,特に蛍光イメージングは多くの研究者に必須の技術となっている.蛍光イメージングは蛍光タンパク質や有機蛍光色素で観察したい細胞やタンパク質などを標識し,励起光を照射して生じる蛍光シグナルを観察する.しかしながら,この励起光の照射は思いのほか細胞に負荷を与え,細胞活動にさまざまな影響をもたらす.また,細胞にはもともと蛍光性を有する分子が存在し,それらが放つ自家蛍光がノイズとなり高感度な観察を妨げてしまう.このような蛍光イメージングに付随する課題を解決する方法として,近年「発光」を利用したイメージングが注目されはじめた.発光とは,ルシフェラーゼなどの発光酵素(本書ではより広義の意味で「発光タンパク質」と称する)が発光基質を酸化することで生じる化学発光である.したがって,励起光を照射する必要がなく,高感度な計測が可能となる.このような特性を有するため,発光は遺伝子発現をモニターするための高感度レポーターとしてもっぱら利用されてきた.しかし蛍光と比較すると発光のシグナルは弱く,イメージングへの利用は限定的で,組織や個体に対して高感度カメラを用いて行うin vivo 観察に限られてきた.ただし,高感度カメラを用いても,時間分解能は分オーダーであるため,速い生命現象を追跡することは困難であった.そのためか,発光では蛍光イメージングのような観察は不可能という先入観を多くの研究者が有している.ところが近年,発光シグナルの弱さを改善した高輝度発光タンパク質が開発され,動き回る動物個体のみならず顕微鏡を用いた1 細胞の観察も可能になりはじめた.したがって,現在では発光は,蛍光と並ぶイメージング法の選択肢として大きな可能性を秘めているといっても過言ではない.
シグナル強度の改善とともに発光の可能性が拡大した要因として,2005 年からはじまった「光遺伝学」の急速な普及がある.光遺伝学は神経活動の人為的制御を目的とした技術開発が発端となって広まった研究手法である.光照射によって活性が変化する光感受性タンパク質を細胞に発現させて,光刺激によって細胞機能やタンパク質機能を操作する.近年では,光刺激を行った後にリアルタイムに何が起きるかを蛍光イメージングで調べるという解析法が広がりつつある.ただし,ここでも問題となるのが蛍光標識した試料に対する励起光の影響である.チャネルロドプシンなど多くの光遺伝学ツールは500 nm 未満の波長の光で活性化するため,緑色蛍光タンパク質GFP などを励起した際に光遺伝学ツールの光応答が起きる.したがって,蛍光観察と同時に光遺伝学ツールを操作する際には,励起光の影響がない組合わせに限定される.また生体深部への光刺激は,組織の光透過性の問題から非常に困難となる
先にも述べたように,発光は励起光を必要としないため,光遺伝学との相性がよい.さらには高輝度発光タンパク質の利用により,生体深部で光遺伝学ツールを制御する光源としても注目されている.このような背景も手伝って,2017 年には米国のブラウン大学に「Bioluminescence Hub」が設立された.このHub では神経科学研究における発光の利便性に注目し,そのツール開発も含めた研究活動がさかんに行われている.このように,生物を対象としたイメージングの時代の潮流は,発光の特性が活かされる方向へと確実に進んでいるといえよう.
しかしながら,この発光イメージングの有用性に反して,現状では発光イメージングを行う研究者は(特にわが国では)ごくわずかしかいない.編者らはこの国内の状況を危惧するとともにその原因について深く検討した.その結論として1 つ目に,発光のイメージング応用が難しいという先入観が依然としてあること,2 つ目に,発光イメージングを行う研究者が少ないがゆえに,発光イメージングに関するプロトコールが圧倒的に不足していることがあげられる.
本書は,発光イメージングを広く普及させることを目的として,発光の基本知識からイメージングを行ううえでの準備・方法,さらには実際のイメージング例について紹介する.生物発光現象の研究者や,発光ツールの開発者,さらには発光イメージングを利用して生物学・医学研究を行うさまざまな分野の研究者に執筆を依頼した.これまでの生物発光そのものの研究においては,日本が誇る生物資源や日本人研究者が大きく貢献してきたという誇るべき歴史がある.したがって日本には,海外勢の一歩先ゆく発光イメージングを実現する研究土壌が醸成されており世界を先導する研究者が豊富である.本書を片手に発光イメージングをはじめる研究者,海外勢の一歩も二歩も先に行く研究者が増えることを大いに期待したい.
2019年8月
永井 健治, 小澤 岳昌
目次
序
レビュー編 発光イメージングの現状
1 発光イメージングの歴史
2 発光生物の発光メカニズム
3 生物発光の原理
4 発光タンパク質と発光基質の総覧
プロトコール編 導入と応用
Ⅰ.セットアップと基本実験
1 手持ちの顕微鏡を使った細胞発光イメージング
2 発光イメージング事はじめ〜発光顕微鏡LV200を用いて
3 In vivo発光イメージング
Ⅱ.機能を可視化するセンサープローブ
4 二分割ルシフェラーゼ再構成法による発光プローブ
5 機能性セレンテラジンを用いた発光検出
6 発光Ca2+プローブの種類と特性
7 発光ATPプローブ
8 アポトーシスの発光イメージング
Ⅲ.発光イメージングならではの応用実験
9 がん研究領域における生体発光イメージング
10 発光膜電位プローブを用いた脳活動計測
11 幹細胞研究領域における発光イメージング
12 マウス肝におけるアポトーシス・イメージングの実際
13 動物細胞におけるシングルセル発光イメージング
14 植物個体内の単一細胞発光モニタリング
15 自由行動するショウジョウバエからの神経活動計測
16 発光によるシアノバクテリアのコロニースクリーニング〜高精度な概日リズムデータを得るための秘訣
発展編 Coming Next Technologies
1 生体内深部可視化を可能とするホタル生物発光型長波長発光材料
2 動物にやさしいin vivo発光イメージング
3 特定の生体分子を検知するホタルルシフェリンプローブ
4 分割NanoLucを用いた相互作用検出系による低分子の免疫測定
5 蛍光/発光バイモーダルプローブ
6 生物発光光遺伝学〜BL-OG(Bioluminescence-Optogenetics)
7 自家発光性細胞株を用いた基質不要のルシフェラーゼアッセイシステム(490 BioTech 社)
8 発光性菌類で見つかった新しい発光反応システム
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書籍情報
- ISBN:9784758122405
- ページ数:223頁
- 書籍発行日:2019年9月
- 電子版発売日:2019年10月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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