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- 医学のあゆみ288巻13号 遺伝統計学の新潮流―新規創薬・個別化医療への挑戦
商品情報
内容
・遺伝統計学も古典的な遺伝-形質関連解析から脱皮し,分子細胞生物学,情報学,数理科学,疫学,臨床医学と自在に組み手を行う,さながら総合格闘技のような学問へと進化した.
・情報伝達技術の世界規模の普及は,サイエンスの変革も急速に加速した.ヒトゲノム研究をめぐる状況は特に著しい.本特集が新時代に立ち向かう若い研究者の一助になれば幸いである.
序文
はじめに
ヒトゲノムを構成する30億塩基対はヒトの設計図であり,その解読は生体が内包する生命現象の解釈と個人の個性の再構成をもたらすはずである.“はずである”というのは,いまだわれわれが到達していないからである.ヒトゲノム研究の歴史は膨大なヒトゲノム配列の解読と解釈を手探りで進める努力の系譜であった.一子相伝にもみえたその系譜のなかで,遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から解析対象とする遺伝統計学が連綿と果たしてきた貢献は大きい.
しかし,ふと気づけば,シークエンス技術の低コスト化が進み,数十万人規模の全ゲノム配列が世界中で共有されるに至った.小規模のゲノム情報を各自の努力で逐次解読・解析する積み立て型研究とは異なる,新たなゲーム理論が支配的になったと解釈できる.シングルセル解析に象徴される新しいオミクス技術が,大規模ヒトゲノム配列との統合を経て生命現象の解釈を可能にしつつある.ゲノム個別化医療・創薬の重要性は広く一般認識されるに至った.遺伝統計学も古典的な遺伝-形質関連解析から脱皮し,分子細胞生物学,情報学,数理科学,疫学,臨床医学と自在に組み手を行う,さながら総合格闘技のような学問へと進化した.1人の研究者が遺伝統計学全般を標榜することが不可能に見えつつあるのは,果たして錯覚なのであろうか?
情報伝達技術の世界規模の普及は,サイエンスの変革も急速に加速した.ヒトゲノム研究をめぐる状況は特に著しい.遺伝統計学はその渦の真中で,荒波に揉まれながらも新たな潮流を創出している.想像もしえなかった新たな知見にめぐり合える可能性と,少しでも気を抜いたら研究の第一線から退かざるを得ない厳しさが併存した挑戦しがいのある時代にすでに突入した.本特集が新時代に立ち向かう若い研究者の一助になれば幸いである.
岡田随象
東京大学大学院医学系研究科遺伝情報学,大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学,
理化学研究所生命医科学研究センターシステム遺伝学チーム
目次
はじめに………岡田随象
遺伝統計学の理論と実践
遺伝統計学の基礎理論………中西智子
Polygenic risk scoreとゲノム個別化医療………竹内史比古
ヒトオミクスデータと深層学習………高澤 建・浜本隆二
シングルセル時代のシステム生物学─シングルセルマルチオミクスによる遺伝子制御ネットワークの推定………島村徹平
ロングリードシークエンス技術と難病ゲノム解析………水口 剛・松本直通
ロングリードシークエンス技術と集団ゲノム解析………高山 順
アジアにおけるゲノム医学研究─GenomeAsia 100K Project………金 慧琳・徳永勝士
琉球諸島の人々における集団ゲノム解析………小金渕佳江
縄文人由来変異が解き明かす縄文人と渡来人の混血過程………大橋 順・渡部裕介
便中ヒトゲノム情報からの個人情報の再構築………友藤嘉彦
遺伝統計学と疾患オミクス研究
眼科疾患における大規模ゲノム解析………布施昇男
アルツハイマー病ゲノム解析の現状………菊地正隆・池内 健1104 整形外科疾患で最も注目される変形性関節症の大規模ゲノム解析………出口剛士・岡田随象
痛風・高尿酸血症の大規模ゲノム解析………豊田 優・他
原発性アルドステロン症の遺伝的背景と高血圧への寄与………内藤龍彦
希少難治性疾患・間質性膀胱炎の遺伝的背景………秋山佳之・他
中枢神経胚細胞腫の多層的オミクス解析………高見浩数
炎症性皮膚疾患における単層および多層的オミクス解析………松岡悠美
自己免疫疾患の多層的オミクス解析………太田峰人
ゲノム解析による発がんメカニズムの探索………前田紘奈・垣内伸之
がん種・人種横断的なゲノムワイド関連解析………佐藤 豪・岡田随象
遺伝統計学とシングルセル解析
シングルセルRNAシーケンス─宿主と病原体の複雑な相互作用を明らかにする………ムハマド アル カディ・奥崎大介
シングルセルレベルの空間トランスクリプトーム解析の新潮流………大塚佳輝・他
1細胞解像度の細胞アイデンティティの定量とシミュレーション………神元健児
循環器疾患におけるシングルセル解析研究の実際………野村征太郎
がん領域におけるシングルセル解析………上田優輝・冨樫庸介
リウマチ・膠原病疾患におけるシングルセル解析………西出真之
新型コロナウイルス感染症におけるシングルセル解析枝廣龍哉・他
自然免疫応答の遺伝的多様性を単一細胞分解能で理解する………熊坂夏彦
脂肪組織のシングルセル解析はインスリン抵抗性の概念をどうアップデートするか………小野木康弘
Human Cell Atlasプロジェクトの軌跡と今後の展望………安藤吉成
遺伝統計学とゲノム創薬
大規模オミクス解析時代のゲノム創薬………難波真一
人工知能を活用した創薬研究………川原田明徳・他
製薬業界におけるゲノム創薬の活用………吹田直政
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書籍情報
- ISBN:9784006028813
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年3月27日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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