特集
重要性を増すOnco-cardiologyスポーツ医学で華麗に加齢－人生100年時代に向けた運動器の役割－

この度，特集「スポーツ医学で華麗に加齢－人生100年時代に向けた運動器の役割－」を担当いたしました．コンセプトはサブタイトルにあるように，人生100年時代に向けた運動器の役割を解説することです．私が生まれた昭和38（1963）年は平均寿命が約70歳であったことを考えると，たった60年の間に人生100年と言われる時代が来ていることに驚きを隠せません．

さて，そもそも運動器の耐久性は，100年はないと思います．50歳を過ぎると，脊柱も関節も，加齢とともに骨粗鬆症や変形性関節症などの特有の疾患が生じます．華麗に100年生きるには，それら特有の疾患を克服しなければなりません．時には薬や手術も必要になることもあるでしょう．それに加え，運動器のメンテナンスに最も重要なことは，運動です．“Exercise is Medicine.”なのです．

華麗に加齢を具現化するためには，まず，運動器がいかに加齢を迎えるか，加齢とともにいかなる変化を遂げるかを知らねばなりません．そのために総論では，運動器の加齢変化と運動機能について解説していただいています．次に総論的「華麗に加齢なエクササイズ」として，ピラティスとヨガを取り上げました．いずれも若年者が行っているような印象がありますが，実は中高齢者にも効果的なエクササイズなのです．

各論として，姿勢や肩・膝・足関節における抗加齢にスポットライトを当てました．高齢者に代表される姿勢としては円背姿勢，いわゆる後弯姿勢があります．100m離れていても，円背があると高齢者であるとわかります．華麗に加齢の基本は「華麗な姿勢」なのです．まず初めに高齢者特有の後弯姿勢，円背姿勢のメカニズムについて解説し，その対策としての低侵襲内視鏡手術の最先端と体幹キネマティクス運動療法の効果について執筆を賜りました．自宅でも行えるエクササイズです．生涯続く華麗な姿勢を目指していただきたいのです．肩関節に関しては，加齢の影響と効果的な運動療法が紹介されており，100年間使える肩関節を目指し，日常に取り入れていただければと思います．膝関節では，まず加齢特有の変化，そして超音波を用いた最新保存療法を解説していただきました．日本人高齢者にとても多いO脚変形ですが，こちらも円背姿勢同様，代表的高齢者の運動器の表現形の一つです．骨切りにより，若々しい膝アライメントを再現させる取り組みも興味深いと思います．最後には足関節です．足部から始める健康づくり，そしてそれを可能とするための人工関節手術や固定手術もご紹介いただきました．足関節に痛みなく，人生100年を華麗に歩く秘訣がそこにあります．

今回，運動器の加齢を取り上げました．そしてその加齢を華麗に生きるための運動療法を中心とした保存療法，手術療法をトップランナーの方々に解説賜りました．人生100年，華麗に生き抜くための匠な技が満載の特集号です．ぜひ，手に取っていただければと思います．

田尻和子・石津智子