スポーツ現場・臨床で使える！トレーニングやエクササイズのための器具と機器

スポーツは競技種目によってさまざまな身体能力が要求され，その強化や維持にトレーニングやエクササイズが必須である．さまざまな器具や機器が開発，利用されており，パフォーマンスの向上，外傷・障害予防やリハビリテーションなどに必須の存在となっている．また，健康スポーツの領域でも体力の増進，疾病の予防などにさまざまな運動器具や機器が用いられている．これらの運動器具や機器は多種多様であり，利用対象や目的・方法を正しく判断することが大切であるが，現状では，指導者の個人的な知識や経験に基づいて決定されることが多い．その結果，うまくいったケースと，そうでないケースの差が生まれる．うまくいったケースでは，パフォーマンスの向上，外傷予防や早期のスポーツ復帰などが達成される．そうでないケースでは，十分な効果が得られないだけでなく，かえってパフォーマンスの低下を招いたり，場合によっては外傷や障害を誘発する．したがって，トレーニングやエクササイズに携わるわれわれは，運動器具や機器の適応や有用性を十分に理解し，それを利用することのリスクも熟知する必要がある．

本特集では，「スポーツ現場・臨床で使える！トレーニングやエクササイズのための器具と機器」について，その効果，リスク，使用例を中心に解説する．特集は三部構成とした．第一部は，「トレーニング・エクササイズ器具・機器の目的と効果」として，鍛えるべき基礎身体能力，器具や機器を利用することの利点および危険性やデメリットを解説する．第二部では，「スポーツ現場，臨床で有用なトレーニング・エクササイズ器具」として，可動性，筋力，筋持久力，筋パワー，協調性，アジリティ，スピード，バランス，動作改善に役立つとされるさまざまな器具の理論背景，目的，対象，使い方，注意点を解説する．第三部では「ジムで有用なトレーニング・エクササイズ機器」として，筋力，筋持久力，筋パワー，心肺持久力，総合的なパフォーマンス向上に役立つ機器の理論背景，目的，対象，使い方，注意点を解説する．

本特集を通じて，器具と機器に関する知見や実例が，医師，理学療法士，トレーナー，ストレングスコーチなど多くの専門家に正しく伝わり，目の前の患者や選手の，より安全で，より効果的なトレーニングやエクササイズにつながれば幸いである．

特集編集：松本秀男（日本スポーツ医学財団理事長）
今井覚志（慶應義塾大学病院）