化学物質の複合影響と健康リスク評価

  • ページ数 : 176頁
  • 書籍発行日 : 2024年2月
  • 電子版発売日 : 2024年3月19日
33,000
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商品情報

内容

環境保健における化学物質の複合曝露と健康リスク研究についてわが国を代表する執筆陣がまとめた本邦初の必携書!

●飲料水,大気,食品といった環境媒体からの環境汚染物質による曝露は,特定の媒体から特定の化学物質のみが選択的に摂取されることはほとんどなく,多くの場合,複数の化学物質を複数の媒体から摂取している.このような曝露形態を化学物質の複合曝露と呼び,その結果,複合影響が発生すると考えられる.
●複合影響の健康リスク評価の手法は欧米を中心に研究が開始され,特にこの10年間は化学物質による健康影響を最小化することが国際的に求められ,その評価の考え方や手法の進歩と社会実装は目を見張るものがあるが,我が国ではこれらの進歩を紹介する成書はいまだに刊行されていなかった.
●本書は,化学物質の複合影響と健康リスク評価の基礎となる考え方と手法,さらに,我が国における複合影響評価手法の研究とリスク管理への適用の実際について,専門家の考え方を取りまとめられた本邦初の日本語による成書である.

序文

環境保健研究の主な研究対象の一つは,水(飲料水),大気あるいは食品といった環境媒体からの,「環境汚染物質」の意図しない摂取が引き起こす健康影響である。だが,現実の化学物質曝露を考えると,特定の媒体から特定の化学物質のみが選択的に摂取されることはほとんどなく,多くの場合,複数の化学物質を複数の媒体から摂取している。このような曝露形態を化学物質の複合曝露と呼び,その結果,複合影響が発生すると考えられる。公害を経験した我が国においては,複数の化学物質の摂取による健康影響の恐れについて,1974 年に有吉佐和子氏がその著作「複合汚染」で文学者の想像力も交えて示し,センセーショナルにも取り上げられた。しかし,当時は複合影響を把握するために必要な科学的知見の蓄積は十分ではなかった。

混合物による複合影響の健康リスク評価の手法は,1980 年代後半から欧米を中心に研究が開始された。特にこの10 年間は,化学物質による健康影響を最小化することが国際的に求められる状況の中で,健康リスク評価の考え方や手法の進歩とその社会への実装は目を見張るものがある。しかしながら,我が国では,これらの進歩を紹介する成書はいまだに刊行されていない。本書では,化学物質の複合影響と健康リスク評価の基礎となる考え方と手法,さらに,我が国における複合影響評価手法の研究とリスク管理への適用の実際について,専門家の先生方の考え方を取りまとめていただいている。

本書の他にも,化学物質の複合影響については多くの先生方のご尽力により,「環境毒性学会誌」では「化学物質の複合影響と生態リスク評価」の特集号(2024 年 27 巻 S1 号 p. S1-S131)を,「環境化学」誌では化学物質の複合曝露における曝露量評価と環境動態モデルを中心とした特集号(2023 年 33 巻Special_Issue 号 p. s1-65)を取りまとめている。また,「臨床栄養」誌では特集「薬剤師とのパートナーシップ ―病院~地域における連携とくすりの知識update」の総説「薬物と食品の相互作用」(2023 年142 巻7 号p.1073-1080,須永克佳・菊池秀与)を刊行している。それらの総説を参照いただきたい。

最後に,本書が環境保健をはじめとした医学研究と健康リスク評価に関心をもつ方々に役立ち,我が国においてもこの領域の研究の発展と社会実装が進む一助になることを期待する。

本書を発刊するにあたり,原稿をご執筆いただいた先生方にお礼を申し上げるとともに,医歯薬出版の稲尾史朗氏はじめ関係各位に感謝申し上げる。


2024年2月

青木康展
青山博昭

目次

第1章 複合曝露によるリスク評価の考え方と方法論

第1節 混合物のリスク評価 総論(青木康展,青山博昭)

 1.混合物のリスクを評価する意義

 2.米国環境保護庁(U.S. EPA)による混合物のリスク評価のためのガイダンス

 3.WHO/IPCSによる段階的アプローチの提案

 4.ヨーロッパにおける複合曝露の評価手法の開発

 5.複合曝露のリスク評価における近年の動向

第2節 化学物質の複合曝露評価における段階的リスク評価アプローチ(WHO/IPCSフレームワーク)(広瀬明彦)

 1.はじめに

 2.フレームワーク評価の目的

 3.複合曝露評価における課題を明確化

 4.フレームワークの概要

 5.フームワークの適用事例

 6.おわりに

第3節 混合物全体アプローチと組成物アプローチ(青木康展)

 1.はじめに

 2.複数の化学物質による複合曝露評価の対象範囲の設定:評価グループの設定

 3.混合物全体アプローチと組成物アプローチ

 4.混合物全体アプローチによるリスク評価

 5.組成物アプローチによるリスク評価

第4節 毒性学的懸念の閾値(TTC:Threshold of Toxicological Concern)(小野 敦)

 1.はじめに

 2.TTCの発展

 3.規制におけるTTCの適用

 4.TTC適用において考慮すべき事項

 5.未同定物質や複合曝露へのTTC適用

 6.おわりに

第5節 AOPアプローチ(小島肇夫)

 1.AOP開発の背景

 2.AOPとは何か?

 3.AOP開発を促すOECDの取り組み

 4.AOPは役立つのか?

 5.OECDで承認されているAOP

第2章 複合曝露による毒性の評価手法

第1節 遺伝子発現を指標とした毒性評価・予測(菅野 純,相﨑健一,北嶋 聡)

 1.複合影響とは

 2.Mountain of Happiness

 3.内分泌かく乱化学物質を例とした動物実験による複合影響

 4.今後の展開

 5.おわりに

第2節 ヒト細胞を用いた化学物質の安全性評価(谷 英典)

 1.動物試験と細胞試験

 2.細胞試験におけるRNAの有用性

 3.サロゲート分子としてのRNA

 4.化学物質に感受性の高いヒト細胞の開発

 5.蛍光RNAプローブを用いた化学物質の安全性評価手法の開発

 6.ナノビーズを用いた新規DNA/RNA検出法の開発

 7.細胞試験と長鎖ノンコーディングRNA

第3節 化学物質の複合影響による細胞毒性発現:芳香族炭化水素受容体(AhR)活性化を指標として(関本征史)

 1.化学物質によるAhRの活性化

 2.ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬によるAhR活性化への増強作用

 3.ベンゾイミダゾール化合物によるAhR活性化の増強

 4.AhR活性化の複合影響を惹起する化合物の網羅的検索

 5.おわりに

第4節 エクスポソーム解析(熊谷嘉人)

 1.化学物質と健康

 2.エクスポソームとは何か?

 3.エクスポソームのモデル実験

第5節 化学物質のHuman Biomonitoring(姫野誠一郎)

 1.背景

 2.HBMとは何か

 3.諸外国におけるHBMの実例

 4.HBMの有用性と課題

 5.我が国におけるHBMの現状と課題

第3章 生活環境からの複合曝露のリスク評価・管理

第1節 食品中化学物質による複合影響の多方面からの実験的アプローチ(梅村隆志)

 1.作用機序を考慮した複合影響

 2.ライフスタイルに起因する発がん修飾因子による複合影響

 3.ライフステージによる有機リン剤の複合曝露に対する感受性

 4.ライフステージによる農薬複合曝露の免疫毒性影響(獲得免疫抑制およびアレルギーに及ぼす影響)

 5.in vitro dataからの複合影響予測

 6.化学的解析からのフェノール性化合物の複合影響予測

 7.おわりに

第2節 ダイオキシン類対策における毒性等価係数(TEF)および毒性等量(TEQ)を用いた環境基準(鈴木規之)

 1.毒性等量(Toxic Equivalent:TEQ)の考え方

 2.異性体混合物の複合影響としてのTEF-TEQの考え方

 3.塩素化ダイオキシン類以外またヒト以外の生物さらに環境試料に対するTEF

 4.我が国の環境行政におけるTEF-TEQの利用

 5.ダイオキシン類TEQの運用経験からの今後の複合影響評価への示唆

第3節 水道水中に含まれる化学物質の複合曝露のリスク評価と管理(浅見真理)

 1.水道水中の化学物質

 2.飲料水に含まれる化学物質の発生源の分類

 3.水源や飲料水に含まれる混合化学物質のヒトへの曝露

 4.フレームワークで使用される手法

 5.WHO飲料水水質ガイドラインにおける取り扱い

 6.日本における水質基準の設定

 7.水質基準等の考え方と分類方法

 8.水道における混合物の評価に向けて


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書籍情報

  • ISBN:9784263732205
  • ページ数:176頁
  • 書籍発行日:2024年2月
  • 電子版発売日:2024年3月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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